一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 Japan Gastroenterological Endoscopy Society

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検診で便潜血陽性が指摘され、大腸内視鏡を勧められましたが、知り合いから聞かされるのは怖い話ばかりなのですが…。

大腸内視鏡検査について怖い話をお聞きになったとの事ですが、どのようなお話をお聞きになったのか推測してみます。

(1)前処置が怖い

大腸内視鏡検査を受けるには、大腸の中を空にしなくてはいけません。そのために下剤の服用が必要ですが、現在は当日2リットルの水にとかして2時間ですべてを飲む方法が主流です。下剤を大量に服用するのは大変で、検査自体より下剤を飲むのがつらいとおっしゃる方もいらっしゃいます。そのため、味を改良して量を減らすなどの試みもされています。

(2)検査が怖い

大腸内視鏡検査中には、空気によって腸管が膨らむこと、および内視鏡で直接腸が引き伸ばされること、により痛みが生ずると考えられています。空気の代わりに腸から吸収される二酸化炭素を用いたり、腸をなるべく引き伸ばさないようにする方法で内視鏡を挿入することにより痛みの軽減が図られています。また痛みに対して鎮静薬や鎮痛薬を用いることもしばしば行われています。

(3)合併症が怖い

大腸内視鏡による偶発症は、腸管穿孔、出血、鎮静薬や鎮痛薬関連、下剤関連などがあり、死亡例も報告されています。日本消化器内視鏡学会では定期的に全国調査を行っています。

このように書いてみますと、大腸内視鏡は怖い事ばかりの検査のようですが、現在のところ、病変を発見し、詳しく観察し、組織を採取し、場合により治療まで行える唯一の検査であります。日本においては今後ますます大腸がんが増えていくと予想されていますので、担当医の先生とよくご相談され、検査により得られる利益と不利益をよくご理解された上で検査をお受けになることをお勧めいたします。

 

横浜市立大学医学部医学教育学 稲森正彦