一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 Japan Gastroenterological Endoscopy Society

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内視鏡で治せる胃がんはどのようなものですか?

 早期胃がんのうち、内視鏡切除の対象となるものは、①一括切除(病変を周りの粘膜と一緒にひとかたまりに切除)が可能で、②リンパ節に転移している危険性がないものです。

 本邦では、2000年頃に早期胃がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic Submucosal Dissection: ESD)という切除方法が開発され、広く普及してきました(図1)。現在では切除技術は安定化し、病変の存在する部位、大きさ、病変部の潰瘍の合併の有無にかかわらず、ほとんどの病変に対して安全に一括切除を行うことが可能となりました。

 

図1 早期胃がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術

 

 リンパ節転移の危険性は、早期胃がんの細胞の型、深さ、大きさ、病変部の潰瘍の合併の有無などによって規定されます。リンパ節転移の危険性がない条件を満たす病変であれば、内視鏡切除の対象となります。具体的には以下の条件を満たす病変が内視鏡切除の対象です。

 

内視鏡所見による内視鏡切除の対象

細胞の型 深さ 潰瘍合併 大きさ
分化型 粘膜内 なし 制限なし
分化型 粘膜内 あり ≤ 3 cm
未分化型 粘膜内 なし ≤ 2 cm

 上記の条件を満たさない早期胃がんはリンパ節転移の危険性があり、内視鏡による胃内の病変の切除のみでは、リンパ節や他の臓器から再発する可能性があります。そのため、原則として胃の周囲のリンパ節を胃とともに外科的に切除する必要があります。

 また、内視鏡切除を行った後はリンパ節転移の危険性について切除標本の顕微鏡検査で評価致します。

 

経過観察が推奨されている組織所見

細胞の型 深さ 潰瘍合併 大きさ 切除断端 脈管侵襲
分化型 粘膜内 なし 制限なし 陰性 陰性
分化型 粘膜内 あり ≤ 3 cm
分化型 粘膜下層
≤500 µm

なし

または

あり

≤ 3 cm
未分化型 粘膜内 なし ≤ 2 cm

出典:胃癌に対するESD/EMRガイドライン(第2版)

 

 切除標本の組織検査で上記の条件を満たさない早期胃がんはリンパ節転移の危険性があり、やはり内視鏡による胃内の病変の切除のみでは、リンパ節や他の臓器から再発する可能性があります。そのため胃内の病変はすでに内視鏡で切除されていますが、原則として胃の周囲のリンパ節を摘出するために、胃を外科的に追加切除する必要があります。

 病変が内視鏡切除の対象であるかどうかは、たくさんの治療件数を経験している施設で相談されるのがよいかもしれません。

 

国立がん研究センター中央病院 内視鏡科
阿部 清一郎
(2016年11月16日掲載、2024年3月25日更新)