一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 Japan Gastroenterological Endoscopy Society

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大腸にポリープがあると言われました。取らなくてもいいのでしょうか?

 大腸ポリープには将来、大腸がんになる可能性のあるポリープと、大腸がんにはならないポリープとがあります。がんにならないポリープはそこにあるだけです。出血などの症状を引き起こす場合には切除することもありますが、多くの場合、そのままにしても患者さんの健康を損なうことはないため、治療の必要はありません。

 

 大腸がんになる可能性のあるポリープとしては、腺腫とSSL (sessile serrated lesion)とがあります。腺腫は大腸内視鏡検査中に最も多く発見されるポリープで腫瘍です。腫瘍細胞は“勝手に”、そして“過剰に”増えます。結果的に腺腫は自分で”大きく”なり、細胞自体が”悪く”なって、大腸がんになる、と考えられています。手術や抗がん剤などの治療を必要とするような大腸がんの大半は、この腺腫から発生すると考えられています。ポリープ状の腺腫が症状を引き起こすことはありません。症状が無くとも行った大腸内視鏡検査において、この腺腫を発見し、それらを切除することによって、将来の大腸がんの発生や大腸がんによる死亡を大幅に減らすことができると報告されています。したがって、大腸内視鏡検査において腺腫を切除することは、患者さんのメリットになると考えられます。

 

 もうひとつ、近年、大腸がんの原因として注目されているポリープにSSLがあります。専門家の意見は一致していませんが、SSLも腺腫と同じように、自分で勝手に大きくなって、大腸がんになると考えられています。実際には大腸がんになるリスクが腺腫と同じ程度かどうかわかっていませんが、切除することにより大腸がんを予防できる可能性があります。

 

 では、いつ切除すればいいのでしょうか?腺腫やSSLはゆっくりと大きくなり、大腸がんになると考えられています。数mmの腺腫やSSLが数ヶ月で大腸がんになることは考えにくいですから、いますぐに切除する必要がないのも事実です。また、全ての腺腫やSSLが、患者さんの人生の中で健康を損ねるような大腸がんになるとは限りません。しかし、患者さんの人生の中で大腸がんになる病変か、そうでないかを見極めることは、現在の医療技術ではできません。また、切除すると、患者さんの身体に傷を付けることになるため、出血や痛みといった悪いことを起こしてしまう可能性があります。切除に伴う悪いことが起こるリスクは、病変の性状や患者さんの背景によって異なります。小さな腺腫やSSLを切除することが患者さんのメリットになるかどうかは、患者さんの背景、大きさや個数などをふまえた総合的な判断が必要となります。また、腺腫やSSLと、それ以外のポリープを完全に見分けることは難しいという問題もあります。

 

 まずは、大腸がんになる可能性のあるポリープが疑われるのか、その場合、いつ切除すればよいのか、今後の検査の計画などを担当医に相談されると良いと思います。

 

静岡県立静岡がんセンター
今井 健一郎
(2017年11月7日掲載、2021年4月27日更新)