消化器内視鏡洗浄・消毒に関する
マルチソサイエティガイドライン


 日本消化器内視鏡学会消毒委員会では、内視鏡医療をめぐる感染管理の重要性を踏まえ、感染管理の専門家である日本感染環境学会、および共に内視鏡医療に従事する日本消化器内視鏡技師会と合同で、『消化器内視鏡の洗浄・消毒マルチソサイエティ・ガイドライン』を作成しました。本ガイドラインでは現在の消化器内視鏡医療が行われる状況を考慮しつつ、総合的に適切と思われる指針を示しましたが、今後も日本内外の新しい知見や求められる安全水準などを検討し、ガイドラインは改訂されてゆくべきものであると考えております。
 会員の皆様におかれましては、ガイドラインをご参照頂き、より安全な内視鏡医療の提供にお役立てていただければと存じます。

日本消化器内視鏡学会消毒委員会




Science Citation Index Expanded
収載のお知らせ
Digestive Endoscopyに2009年からImpact Factor


平成20年4月
日本消化器内視鏡学会英文誌編集委員会

 このたび、本学会英文誌 Digestive Endoscopy がThomson Scientific社のScience Citation Index Expandedに、2007年1号に遡って収載されました。最初のImpact Factorは、2007年および2008年の2年間に出版された論文が2009年1年間に何回引用されたかに基づき算出されます(2009 Impact Factorと呼ばれます)。2009 Impact Factor は、その算出に6ヶ月ほど要し、2010年6月頃に発表される予定です。
 会員の皆様には、Digestive Endoscopy にふるってご投稿、ご引用くださるようご協力をお願い申し上げます。



日本消化器内視鏡学会
消毒委員会報告


平成19年9月
日本消化器内視鏡学会消毒委員会

 2005年2月に厚生労働省労働基準局長からグルタルアルデヒドによる人体障害防止についての通達があり、また、2005年12月には世界消化器病会議(WGO)および国際消化器内視鏡学会(OMED)が共同で作成した” Practice Guideline Endoscope Disinfection” (http://www.omed.org/downloads/pdf/guidelines/wgo_omed_endoscope_disinfection.pdf) においても、内視鏡機器の適切な消毒方法と医療従事者に対する消毒薬の安全な使用について注意を強く喚起しております。さらに本年6月には米国国立労働衛生研究所(NIOSH)からのグルタルアルデヒドを使用する内視鏡の安全管理に対するガイドライン(http://www.dow.com/biocides/glut/niosh_guidelines.htm)も公表されています。これらを受け、日本消化器内視鏡学会消毒委員会は内視鏡機器の洗浄・消毒の安全性に対しての注意事項をまとめましたので報告します。

1. グルタルアルデヒド(GA)使用上の注意
 グルタルアルデヒドは揮発性であり、その蒸気および飛沫で呼吸器障害、アレルギー、角膜の混濁などの人体毒性が報告されています。それを防止する為に消毒室の環境および個人の取り扱いについては十分な注意が必要です。
(1) グルタルアルデヒドによる労働者の健康障害防止のため、消毒薬の添付文書に記載された使用上の注意を遵守すること。
(2) 作業環境管理及び作業管理
 グルタルアルデヒドを使用して、消毒作業が行われる屋内作業場では、空気中のグルタルアルデヒド濃度を測定し、濃度が0.05ppm*を超える場合には、有効な保護具を使用させることにより曝露防止を図るとともに、0.05ppmを超えないようにするため、以下の措置を講じ、効果を確認するため再度評価を行うこと。
1) 同等以上の効果があり、副作用の少ない他の殺菌消毒剤への変更
2) 密閉型の自動洗浄機の導入
3) 全体換気装置(換気扇を含む)の設置または窓の開放による全体換気
(一時間当たり作業を行う部屋の空気を10回以上換気可能な装置---米国消化器内視鏡技師会ガイドライン---)
4) 局所換気装置(フードを含む)またはプッシュプル型換気装置の設置
内視鏡フードの参考例
内視鏡フードの参考例
5) グルタルアルデヒドへの曝露を低減させる作業方法への変更
6) 消毒薬による壁面や床への飛沫・流出がないよう取扱いに注意する。また汚染されても容易に除去できる設計上の配慮が望まれる。
(3) グルタルアルデヒドに直接接触するおそれの高い作業に従事させるときは、濃度が0.05ppmを超えない場合であっても有効な保護具を使用させ、蓋つきの浸漬容器を用いるとともに、熱湯でのすすぎや洗浄機内での加温時など揮発性の高まる環境での曝露を避ける。
(4) 健康管理および労働衛生教育
 グルタルアルデヒドを取り扱う業務に従事させる場合には、皮膚疾患、呼吸器疾患、アレルギー症状等について問診を行うとともに、必要に応じて検査を行い、結果に基づいて作業方法等に十分配慮する。皮膚・呼吸器等への異常が認められた場合には、産業医の意見に基づき、必要な措置を講じること。グルタルアルデヒドを取り扱う業務に従事する者については、グルタルアルデヒドの性質、曝露による症状・障害、取り扱い上の注意・応急措置、保護具の使用法を教育すること。
(5) グルタルアルデヒドの廃棄に際しては、廃棄経路からの蒸気曝露を含め、環境汚染に十分な注意が必要である。
注:グルタルアルデヒドの蒸気濃度は一定せず、攪拌等により一時的にかなりの高濃度となる。実際にグルタルアルデヒドの濃度を連続して測定することは困難であり、諸ガイドラインが示す安全な換気基準に従うことがその値をクリアする目安となりうる。

2. フタラール (OPA)使用上の注意
 0.55%フタラール製剤(商品名:ディスオーパ消毒液0.55%、ジョンソン&ジョンソン株式会社)は、本邦で2001年11月の発売以来、揮発性が低く、消毒に要する浸漬時間が短いなどの特徴を有した内視鏡機器の消毒薬として使用されています。
 しかし、近年は残留したフタラールとの関連が否定できないアナフラキシーショック等の重篤な急性毒性も多く報告され、緊急安全情報が出されています。また慢性毒性については解明されていない点も多く、”Practice Guideline Endoscope Disinfection”においても、被検者および医療従事者に対する人体毒性ついて厳重な注意が求められています。単に蒸気濃度が低いことを理由に、特性の理解が不十分のまま、換気や個人防御への対策なく、グルタルアルデヒドの代替品として選択することは危険であり、改めて取り扱いについての厳重な注意を喚起します。
公表された安全情報の概要
(1) 超音波白内障手術器具:水泡性角膜炎7例、角膜浮腫6例、角膜混濁2例
(2) 軟性膀胱鏡:アナフィラキシーショック4例
(3) 経食道心エコープローブ:食道の粘膜損傷1例
その他既知の有害事象
(1) 皮膚・粘膜などに接触した場合、黒色に変色させることがある。
 
対策

 有害事象には消化器内視鏡とは直接関係のない事例も含まれるが、その重大性および消化器内視鏡と共通する背景も存在することを重視し、消毒委員会としては以下の対策を推奨します。

(1) 構造が複雑で、十分なすすぎの行えない器具には使用しない。ゴム製品など薬剤の吸着性のある器具についても同様な理由で使用しない。
(2) 消毒した後のすすぎを十分に行う。
(3) フタラール液の取り扱い時には、粘膜・皮膚への飛沫を防ぐため、ゴーグル、ガウン、手袋、マスクの使用が重要である。
(4) グルタルアルデヒド同様、適切な換気を行う。(匂いが少ない点、蒸気濃度が不明であることも十分に留意し、グルタルアルデヒド同程度以上の換気を推奨する)。
(5) 消毒薬の飛沫による壁面や床が汚染されないよう注意するとともに、また汚染されても除去しやすい構造とすることが望ましい。
(6) フタラールの廃棄に際しては、慢性毒性など不明な点が多いことを考慮し、環境汚染について十分注意を払わなければならない。

以上


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