一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 Japan Gastroenterological Endoscopy Society

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以前、大腸内視鏡を受けたら奥まで入らなかったのですが、何か工夫はありますか?

大腸内視鏡が入らない原因としては、腸が長い、憩室や癒着がある、腸の形が他の人と違う(たとえば腸回転異常症や腸間膜遺残症)などがあります。 これらの場合は、経験豊かな先生が行ってもうまく挿入できない場合があります。

そうした場合は、3D-CT検査やカプセル内視鏡検査がオススメです。
3D-CT検査は、CTスキャンを利用し、腸管を立体的に描く方法です。
内視鏡を使用しないため、バーチャル大腸内視鏡検査と言われることもあります。マルチスライスCT使用し、コンピュータを使って大腸の3次元画像を作成します。

写真1

写真1は、幾つかの病院で、内視鏡が入らず、この検査を希望されて私の病院を受診された方の大腸3D-CT画像です。腸管がものすごく長く複雑に蛇行していることがわかります。また、憩室もたくさんあり、そのため内視鏡が最後まで挿入できなかったことがわかりました。

この方法の利点は、内視鏡が挿入困難な患者さんに応用可能であること、検査が短時間で済むこと(10分程度)、痛み(苦痛)がないこと。内視鏡で見落とされがちな大腸ヒダ裏の病変の観察が可能なことなどが挙げられます。 欠点は、放射線被曝があること、5ミリ以下の平坦病変の検出が苦手なことなどがあげられます。

大腸カプセル内視鏡検査も有効な検査法のひとつです。
この方法は2014年に認可された新しい方法です。
写真2に示したような薬のカプセルの形をした、小型カメラを水と一緒に飲み込みます。

写真2(画像提供:ギブン・イメージング(当時))

カメラは、腸の蠕動に従って奥へと進み、大腸を撮影します。撮影された画像は、センサをとおして、ハードディスクに転送され、コンピュータで解析することができます。

この方法の利点は、何と言ってもカプセルを飲むだけであり、肛門から内視鏡を挿入するわけではないので、その際の苦痛が全くないことです。また、「恥ずかしい」、「怖い」といった精神的負担がないことも特長です。
欠点は、下剤の服用量が多く、また、煩雑なこと、治療ができないこと(観察のみ)などです。

バルーン式内視鏡などの特殊な内視鏡を使うことで奥まで内視鏡を挿入することができる場合があります。バルーン内視鏡は、もともとは小腸内視鏡用に開発された器具ですが、大腸の挿入にも有効であることが報告されています。

写真3(画像提供:富士フイルムメディカル株式会社)
写真4

写真4は、下血症状がある患者さんです。やはり幾つかの病院で、内視鏡が入らず、私の病院に紹介されてきました。まず3D−CTを撮影したところ、内臓逆位と腸回転異常があることがわかりました。通常内視鏡の挿入が難しそうでしたので、バルーン式内視鏡を用いて、大腸を観察しました。その時の内視鏡挿入の様子をX線透視した画像が、次の写真5です。

写真5

大腸の形なりに内視鏡が挿入されていることがわかります。

内視鏡が入らない、といって、諦めるべきではありません。
いろいろな方法がありますので、ぜひ消化器内視鏡医に相談してみてください。

 

小樽掖済会病院 消化器病センター
勝木伸一