一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 Japan Gastroenterological Endoscopy Society

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第1回 十二指腸腫瘍の診断および低侵襲治療に関する研究会

2017年5月13日 1:10 PM - 4:00 PM

代表世話人

矢作 直久(慶應義塾大学 腫瘍センター)

当番世話人

山本 博徳(自治医科大学 内科学講座消化器内科学部門)

会期

2017年(平成29年)5月13日(土)13時10分~

会場

第7会場 大阪国際会議場 10階 会議室1005~1007(第93回日本消化器内視鏡学会総会内)

プログラム

開会の辞(13:10)

山本 博徳(自治医科大学内科学講座消化器内科学部門)

セッション1 (13:13)

司会:八尾 隆史(順天堂大学大学院医学研究科人体病理病態学)
   山本 博徳(自治医科大学内科学講座消化器内科学部門)

1.十二指腸における胃型細胞の出現様式と遺伝子変異

滋賀医科大学臨床検査医学講座(附属病院病理診断科)
○九嶋 亮治

2.胃型十二指腸腫瘍の臨床病理学的特徴ならびに遺伝子変異と新たな分類方法の提唱

九州大学病院病理診断科1)、九州大学大学院医学研究院 形態機能病理学2)
○山元 英崇1),2)、樋田 理沙2)、平橋美奈子2)、小田 義直2)

3.表在型非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍の臨床病理学的特徴の検討

虎の門病院 消化器内科
○鳥羽 崇仁、布袋 屋修、落合 頼業、鈴木 悠吾、福間由美子、田中 匡実、野村 浩介、
 栗林 泰隆、山下 聡、古畑 司、菊地 大輔、松井 啓、三谷 年史、飯塚 敏郎

4.表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍における内視鏡的胃粘膜萎縮に関する検討

石川県立中央病院 消化器内科
○辻 重継、川崎 梓、土山 寿志

5.非乳頭部十二指腸SM浸潤癌の臨床病理学的検討

虎の門病院消化器内科1)、同病理診断科2)、同消化器外科3)
○鈴木 悠悟1)、落合 頼業1)、福馬有美子1)、田中 匤実1)、野村 浩介1)、栗林 泰隆1)、
 鳥羽 崇仁1)、山下 聡1)、古畑 司1)、菊池 大輔1)、松井 啓1)、三谷 年史1)、
 飯塚 敏郎1)、布袋屋 修1)、井下 尚子2)、橋本 雅司3)

6.十二指腸腫瘍における術前生検の正診率の検討

慶應義塾大学低侵襲センター1)、慶應義塾大学医学部消化器内科2)、
独立行政法人国立病院機構東京医療センター3)
○木下 聡1),2),3)、西澤 俊宏1),2)、落合 康利1)、飽本 哲平1)、後藤 修1)、藤本 愛1)、
 前畑 忠輝1)、中村理恵子1)、浦岡 俊夫1),3)、矢作 直久1)

7.非乳頭部十二指腸腫瘍の担癌率

慶應義塾大学医学部腫瘍センター 低侵襲療法研究開発部門1)、
国立病院機構東京医療センター 消化器科2)
○落合 康利1)、木口 賀之1)、光永 豊1)、飽本 哲兵1)、前畑 忠輝1)、藤本 愛1)、
 西澤 俊宏1)、後藤 修1)、浦岡 俊夫1),2)、矢作 直久1)

8.原発性早期十二指腸癌における臨床病理学的特徴

国立病院機構東京医療センター消化器科1)、
慶應義塾大学医学部腫瘍センター低侵襲療法研究開発部門2)、
神戸大学大学院医学研究科内科学講座消化器内科学分野3)、
国立がん研究センター中央病院内視鏡科4)
○浦岡 俊夫1),2)、鷹尾 俊達3)、斎藤 豊4)

総合討論

セッション2

司会:矢作 直久(慶應義塾大学医学部 腫瘍センター)
   比企 直樹(がん研有明病院 消化器センター)

9.10mm以下の非乳頭部十二指腸腺腫に対するCold Snare Polypectomy(DCSP)

静岡県立静岡がんセンター内視鏡科
○滝沢 耕平、角嶋 直美、田中 雅樹、川田 登、小野 裕之

10.表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍に対する浸水下EMRの有用性

大阪府立成人病センター 消化管内科
○山崎 泰史、上堂 文也

11.十二指腸腫瘍に対する内視鏡切除の治療成績

国立がん研究センター中央病院 内視鏡科
○野中 哲、小田 一郎、阿部清一郎、鈴木 晴久、吉永 繁高、斎藤 豊

12.十二指腸腫瘍に対する内視鏡治療の成績

佐久医療センター 内視鏡内科
○高橋亜紀子、小山 恒男、依光 展和

13.非乳頭部十二指腸腫瘍に対する内視鏡治療の変遷と現状
~Pocket-creation methodを用いたESD~

自治医科大学 内科学講座消化器内科学部門
○三浦 義正、井野 裕治、岩下ちひろ、岡田 昌浩、福田 久、高橋 治夫、坂本 博次、林 芳和、矢野 智則、砂田圭二郎、大澤 博之、山本 博徳

14.当院における非乳頭部十二指腸腫瘍に対するESDの現状と穿孔予防の術中工夫について

武田総合病院 消化器センター
○滝本 見吾、大石 嘉恭、玉置 大

15.十二指腸腫瘍に対する腹腔鏡補助下縮小手術

杏林大学外科
○阿部 展次、橋本 佳和、竹内 弘久、森 俊幸、杉山 政則

16.十二指腸腫瘍に対する腹腔鏡内視鏡合同手術(D-LECS)と開腹十二指腸局所切除術の比較

がん研有明病院 消化器センター外科1)、がん研有明病院消化器センター内科2)
○安福 至1)、布部 創也1)、比企 直樹1)、石沢 武彰1)、齋浦 明夫1)、山本 頼正2)、藤崎 順子2)、井田 智1)、熊谷 厚志1)、大橋 学1)、佐野 武1)、山口 俊晴1)

総合討論

閉会の辞

矢作 直久(慶應義塾大学医学部 腫瘍センター)

 

【一般演題1】
十二指腸における胃型細胞の出現様式と遺伝子変異
滋賀医科大学臨床検査医学講座(附属病院病理診断科)
○九嶋 亮治

はじめに
十二指腸は小腸型の粘膜に覆われるが、ファーター乳頭までが前腸由来で、このあたりまで胃の粘液腺に類似するBrunner腺が存在する。
Brunner腺と胃腺窩上皮化生
胃腺窩上皮化生は高酸状態の十二指腸粘膜を防御する目的で出現すると考えられている。胃腺窩上皮は粘膜固有層にはみ出したBrunner腺に近接していることが多く、深切りすると連続性が確認できる。Brunner腺は、十二指腸内腔に向かって胃腺窩上皮へ分化する性質を潜在的に有する。
Brunner腺過誤腫と過形成
Brunner腺は過誤腫性あるいは過形成性に増大することがある。その表面を被覆する小腸型の粘膜は、びらんを繰り返すことにより、上記のような理由で、胃腺窩上皮細胞に被覆されるようになる。
十二指腸における胃底腺細胞の出現について
異所性胃粘膜とまでは言えるほどものではないが、胃底腺細胞が十二指腸粘膜~Brunner腺内にごくわずかに観察されることがある。十二指腸球部を全割して調べたところ、異所性胃粘膜と言えないほどの、胃底腺型細胞の出現が予想以上に多いことがわかった。「十二指腸粘膜球部の粘膜は胃底腺細胞に分化する性質を潜在的に有する」といえる。
Brunner腺腺腫と幽門腺腺腫pyloric gland adenoma
Brunner腺由来の腺腫もまれに遭遇する。Brunner腺は表層方向へ胃腺窩上皮に分化する性質があるので、腺腫においても表層部が胃腺窩上皮型細胞に分化する。このパターンは胃の幽門腺腺腫と同様であり、組織学的にも区別できないので、Brunner腺腺腫とは言わずに幽門腺腺腫と呼ぶ。いずれの「幽門腺腺腫」も同じ遺伝子変異(GNASとKRAS)を持っていることがわかったので、同一視してよいだろう。
胃腺窩上皮化生と異所性胃粘膜の遺伝子変異
胃腺窩上皮化生で腫瘍とはいえないまでも乳頭状増殖が目立つものや、異所性胃粘膜にもGNASとKRASの変異がみられることがわかった。十二指腸原発で胃型形質を呈する浸潤癌でも同じ変異を有するので、これらは胃型腺癌の前癌状態といえるだろう。

 

【一般演題2】
胃型十二指腸腫瘍の臨床病理学的特徴ならびに遺伝子変異と新たな分類方法の提唱
九州大学病院病理診断科1)、九州大学大学院医学研究院 形態機能病理学2)
○山元 英崇1),2)、樋田 理沙2)、平橋美奈子2)、小田 義直2)

要旨
胃型形質を示す十二指腸腫瘍は稀であり、詳細な生物学的特徴や発生メカニズムは不明で、組織分類に関しても曖昧な点が多い。胃に発生する胃型腫瘍(幽門腺型腺腫や胃底腺型胃癌/胃底腺型胃腫瘍)では、GNAS , KRAS やAPC の遺伝子変異が報告されている。我々は16例の胃型十二指腸腫瘍(Vater乳頭部を除く)の臨床病理学的特徴、粘液形質や遺伝子変異を検討した。組織学的には腺腫7例(幽門腺型腺腫5例、胃腺窩上皮型腺腫2例)、悪性度不明腫瘍6例(neoplasm of uncertain malignant potential; NUMP)、浸潤性腺癌3例に分類された。NUMPは、淡い好酸性から好塩基性の細胞質と軽度の核腫大を示す上皮細胞から成り、癒合状もしくは分枝状腺管パターンで増殖し、しばしば粘膜下層への圧排性の進入を伴っていた。しかし、浸潤性腺癌とは異なり、明らかな核形不整、線維性間質反応、脈管侵襲、転移を欠いていた。すなわち、これらの特徴は、胃の胃底腺型胃腫瘍と類似していた。大半の胃型十二指腸腫瘍はMUC6を発現し、様々な程度にHGM, MUC5AC, pepsinogen-IおよびH+K+ATPaseに陽性を示した。遺伝子解析では、GNAS変異を6/16例(38%), APC変異を4/15例(27%)に認め、腺腫、NUMP、浸潤性腺癌のいずれにも存在していた。以上より、臨床病理学的・組織学的・分子生物学的特徴において、胃型十二指腸は、各々の胃のcounterpartと類似していることが示唆された。我々は、明らかな浸潤性腺癌と腺腫の中間的なカテゴリーとして、”NUMP”という概念を提唱したい。この新たな分類方法は、胃型十二指腸腫瘍の診断と治療に、新しい視点を与えられる可能性がある。

 

【一般演題3】
表在型非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍の臨床病理学的特徴の検討
虎の門病院 消化器内科
○鳥羽 崇仁、布袋 屋修、落合 頼業、鈴木 悠吾、福間由美子、田中 匡実、野村 浩介、
 栗林 泰隆、山下 聡、古畑 司、菊地 大輔、松井 啓、三谷 年史、飯塚 敏郎

【緒言】表在型非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(SNADET)は比較的まれな疾患であるが、近年、内視鏡技術の進歩によりSNADETが発見される機会が増加している。しかしながら、SNADETの病態については未だ明らかにされておらず、その診断、治療についても確立されていないのが現状である。【目的】SNADETの臨床病理学的特徴を明らかにする。【方法】2005年1月から2015年12月までの間に当院にて内視鏡的に切除されたSNADET138病変を用いて、SNADETの臨床病理学的特徴につきretrospectiveに解析した。組織学的異型度はVienna Classification(VCL)に準じ、VCL category 3 (low grade neoplasia)とVCL category 4/5 (high gradeneoplasia / invasive neoplasia)の2群に分類して検討した。【結果】病変138例は、男性92例、女性46例、平均年齢60.7(31-89)歳、平均腫瘍径16.9(2-79)mm、病変占拠部位はVater口側62例、Vater肛門側76例、肉眼型は隆起性病変96例、陥凹性病変42例であった。組織学的異型度は、VCL category 3 71例、VCL category 4/5 67例に分類された。VCL category 4/5の病変は、VCL category 3の病変と比較して有意に年齢が高く(p<0.001)、腫瘍径が大きかった(p=0.001)。免疫組織化学染色では、VCL category 4/5は、VCLcategory 3に比べ、MUC5AC (p=0.002)、MUC6 (p<0.001)、p53(p=0.005)発現が有意に多く、CD10 (p=0.002)、CDX2 (p=0.029)発現が有意に少なかった。多変量解析ではVCL category 4/5の独立したリスク因子として、高齢(p<0.001)、MUC6 expression (p=0.003)、p53 expression (p=0.005)が抽出された。また、VCLcategory 4.2(noninvasive carcinoma)以上病変の検討では高齢(p=0.010)、MUC5AC expression (p=0.011)が独立したリスク因子であった。【結語】胃型形質はSNADETの悪性度の良い指標になると考えられた。

 

【一般演題4】
表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍における内視鏡的胃粘膜萎縮に関する検討
石川県立中央病院 消化器内科
○辻 重継、川崎 梓、土山 寿志

【目的】十二指腸腫瘍の成因は未だ明らかではなく, 近年, 萎縮のない胃粘膜との関連が報告されている. 表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍と内視鏡的胃粘膜萎縮との関連について検討する.
【方法】2008年12月から2017年1月までに, 内視鏡的切除が施行され病理組織学的検索がなされた連続した十二指腸腺腫および早期癌92症例のうち, 家族性大腸腺腫症3例, 切除胃3例, A型胃炎1例を除いた85例を対象とした. その臨床的特徴に加え,内視鏡的胃粘膜萎縮について解析し, 木村・竹本分類を用い,closed type(C-1, C-2, C-3)とopen type(O-1, O-2, O-3)に分類し, C-1においては胃全域に萎縮性炎症像がみられないものは萎縮なしとした. H.pylori(HP )感染に関して検索が行われた症例に関しては, その感染の有無を調査した.
【成績】性別は男:女=63:22, 平均年齢は62±10歳, 平均腫瘍径11±7 mm, 病変部位は球部:下行部:水平部=17:67:1, 肉眼型はⅠ:Ⅱa:Ⅱc(+Ⅱa)=14:46:25であり, 術後病理診断の内訳は, 低異型度腺腫41例, 粘膜内癌/高異型度腺腫44例であった. 内視鏡的胃粘膜萎縮に関しては, closed type:open type=64:21であり, それぞれの内訳は, closed type(萎縮なし:C-1:C-2:C-3)=48:2:4:10, open type(O-1:O-2:O-3)=12:8:1であった. HP 感染に関して検索が行われた症例は42例であり, HP 陽性6例,HP 陰性31例, HP 除菌後5例であった. closed typeでHP の検索が行われた31例中, 24例はHP 陰性でHP 未感染と考えられた.
【結論】十二指腸腫瘍では胃粘膜萎縮が少ない症例が大半を占め, その多くは萎縮のない症例でHP 未感染が示唆された. HP 除菌との相関については今後の課題である.

 

【一般演題5】
非乳頭部十二指腸SM浸潤癌の臨床病理学的検討
虎の門病院消化器内科1)、同 病理診断科2)、同 消化器外科3)
○鈴木 悠悟1)、落合 頼業1)、福馬有美子1)、田中 匤実1)、野村 浩介1)、栗林 泰隆1)、
 鳥羽 崇仁1)、山下 聡1)、古畑 司1)、菊池 大輔1)、松井 啓1)、三谷 年史1)、
 飯塚 敏郎1)、布袋屋 修1)、井下 尚子2)、橋本 雅司3)

【背景と目的】
近年、早期の非乳頭部十二指腸腫瘍が発見される機会が増加している。しかし、非乳頭部十二指腸SM浸潤癌についての知見はほぼ皆無である。今回、当院で経験した非乳頭部十二指腸SM浸潤癌の臨床病理学的特徴を検討した。
【対象と方法】
2001年1月~2017年1月までに切除後病理にて深達度SMと診断された外科的切除例3例と内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)例2例について、患者背景、内視鏡的所見、病理組織学的所見の検討を行った。
【結果】
平均年齢76.4歳、男女比5/0。術前生検では4例がadenocarcinoma、1例がatypical epitheliumであった。病変部位は上十二指腸角が3例、下行脚が2例で肉眼型は2例が0-Ⅱa型、3例が0-Ⅱa+0-Ⅱc型といずれも隆起型を呈していた。拡大観察を施行したのは3例で、いずれの症例も一部で微小血管構造、微細模様の不整があり、癌の混在を疑わせる所見が認められた。術後病理組織学的所見では、平均腫瘍長径は22.8mm(10-42mm)、4例が分化型優位、1例が低分化型優位でendocrine differentiationを呈していた。深達度は平均1466μm(90-2500μm)。脈管侵襲は4例に認められた。ESD症例のうち1例は追加外科的切除が施行され、外科的切除を施行した4例のうち1例にリンパ節転移(13b)が認められた。現時点までいずれの症例も術後化学療法を施行せず無再発生存中である。
【結語】
非乳頭部十二指腸SM浸潤癌は、頻度が稀であり、術前診断の確立には今後の症例の蓄積が必要である。

 

【一般演題6】
十二指腸腫瘍における術前生検の正診率の検討
慶應義塾大学低侵襲センター1)、慶應義塾大学医学部消化器内科2)、
独立行政法人国立病院機構東京医療センター3)
○木下 聡1),2),3)、西澤 俊宏1),2)、落合 康利1)、飽本 哲平1)、後藤 修1)、藤本 愛1)、
 前畑 忠輝1)、中村理恵子1)、浦岡 俊夫1),3)、矢作 直久1)

【背景】非乳頭部十二指腸腫瘍は消化管内における癌の中で0.5%と少ない。しかし、ここ数年の症例数は増加傾向であり、一般的に外科的治療が主として行われていた。近年、内視鏡技術、器具の発展とともに治療困難な非乳頭部十二指腸腫瘍に対して施設によっては内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)や粘膜切除術(EMR)が行われるようになってきた。ただ、そこで行われる術前診断の生検の正診率は低く、さらに生検を行ったことで生検部に繊維をきたし、その後の内視鏡治療を困難にしている。
【目的】当院における非乳頭部十二指腸腫瘍に対する治療症例において、術前生検と治療後の病理結果を検討することで生検の正診率、また術前生検の必要性を検討した。
【対象と方法】2014年1月~2016年2月の期間に十二指腸内視鏡治療を行った120症例の中で、術前に生検がなされていた95症例を対象として術前生検の有用性を検討した。
【結果】術前生検で腺癌と診断された21症例のうち、治療後12症例(57.1%)が腺腫と診断された。また術前生検で腺腫と診断された74症例のうち、治療後15症例(20.3%)が腺癌と診断された。感度は37.5%(9/24)、特異度は83.1%(59/71)、正診率は71.6%(68/95)、偽陽性率は42.9%(9/21)、偽陰性率は79.7%(59/74)だった。またEMRを予定していた61症例のうち15症例が術前生検による瘢痕のためnon-liftingを呈しESDに術式を変更して治療を行った。
【結論】十二指腸腫瘍における生検の正診率は高くなかった。生検による瘢痕でnon-lifting signを呈し内視鏡治療が困難になる症例もあり、内視鏡治療を考慮する十二指腸腫瘍に対しての安易な生検は慎まれるべきである(Gastrointest Endosc. in press)。

 

【一般演題7】
非乳頭部十二指腸腫瘍の担癌率
慶應義塾大学医学部腫瘍センター 低侵襲療法研究開発部門1)、
国立病院機構東京医療センター 消化器科2)
○落合 康利1)、木口 賀之1)、光永 豊1)、飽本 哲兵1)、前畑 忠輝1)、藤本 愛1)、
 西澤 俊宏1)、後藤 修1)、浦岡 俊夫1),2)、矢作 直久1)

 従来十二指腸腫瘍は比較的悪性度が低く治療の必要性が低いといわれてきた。また、稀な疾患であるためその担癌率も明らかではなかった。そこで今回、当部門において2010年7月から2016年9月までに内視鏡治療を行った非乳頭部表在性十二指腸腫瘍227症例245病変における担癌率を評価した。
 患者背景は、平均年齢62.3歳(29~84)、性別(男/女)92/36であった。腫瘍背景は部位:球部18/SDA14/下行部83/LDA8/水平部5、周在性<1/2周:111、1/2周<:14、肉眼型:隆起型97/陥凹型31であった。治療方法の内訳はEMR46病変、ESD74病変、全周切開EMR5病変、EMRL1病変、鉗子切除3病変であった。治療結果は、平均腫瘍径19.1mm(2~85)、腺腫182/ 癌63 であった。腫瘍径別担癌率は≦ 10mm:8%、11~20mm : 33%、21~30mm : 38%、31~40mm : 50%、41~50mm:46%、51~60mm:70%、61mm≦:80%であった。腫瘍径の増大に伴い担癌率が上昇することが示唆された。十二指腸腫瘍には治療介入が必要であり大型病変であるほど確実な治療が必要と思われた。

 

【一般演題8】
原発性早期十二指腸癌における臨床病理学的特徴
国立病院機構東京医療センター消化器科1)、
慶應義塾大学医学部腫瘍センター低侵襲療法研究開発部門2)、
神戸大学大学院医学研究科内科学講座消化器内科学分野3)、
国立がん研究センター中央病院内視鏡科4)
○浦岡 俊夫1),2)、鷹尾 俊達3)、斎藤 豊4)

 十二指腸上皮性腫瘍の臨床病理学的特徴は、十分明らかでない。原発性早期十二指腸癌においてもその頻度や粘膜下層浸潤癌率およびリンパ節転移率など適切な治療指針を提示するためのデータは十分でない。この現状を踏まえて、がん研究開発費「消化管悪性腫瘍に対する標準治療のための多施設共同研究“消化管がん内視鏡的治療法の標準化に関する研究”班」において、「原発性早期十二指腸癌の内視鏡的治療の適応および根治基準の確立に関する多施設共同遡及的研究」を実施した。
 下記の研究参加施設において内視鏡的摘除もしくは外科手術が施行された(十二指腸乳頭部腫瘍を除く)原発性早期十二指腸癌269病変の臨床病理学的特徴の遡及的検討を行った。粘膜内癌235病変と粘膜下層浸潤癌34病変の解析を提示し、本附置研究会において、原発性早期十二指腸癌に対する内視鏡的摘除の根治基準や適切な治療指針につながるような議論ができれば幸いである。
 (本研究参加施設:国立がん研究センター中央病院、佐久総合病院、静岡がんセンター、がん研有明病院、大阪成人病センター、東京大学、NTT東日本関東病院、慶應義塾大学、国立がん研究センター東病院、東京医科大学、四国がんセンター、山形県立中央病院、栃木県立がんセンター、群馬中央総合病院、大阪厚生年金病院)

 

【一般演題9】
10mm以下の非乳頭部十二指腸腺腫に対するCold Snare Polypectomy(DCSP)
静岡県立静岡がんセンター内視鏡科
○滝沢 耕平、角嶋 直美、田中 雅樹、川田 登、小野 裕之

非乳頭部十二指腸腫瘍に対するESDは、術中術後の偶発症発生率が他の消化管臓器に比べて著しく高いことから未だ普及には至っていない。そのため、小さな腺腫は無治療で経過観察されることが多かったが、サイズが大きくなってからの切除は、その難易度や偶発症発生率のさらなる上昇が懸念され、むしろ小さなうちに切除すべきではと我々は考えている。近年大腸の小腺腫に対してはcold snare polypectomy (CSP)が急速に普及している。大腸CSPは手技が簡便で処置時間も短く、偶発症発生率も通電法より低いと報告されてる。そこで我々は2015年より10mm以下の十二指腸腺腫に対してCSPを導入している。局注を行わずにスネアで病変周囲の非腫瘍粘膜を一部含む形で絞扼し、通電せずに一気に切除を行う。切除直後はわずかにoozingが認められることがあるが、止血処置を要することはほとんど経験していない。これまでは膵液胆汁からの曝露を防ぐために切除後の潰瘍底をクリップ縫縮していたが、現在は縫縮せずに経過観察可能かどうかについても検討中である。CSPのメリットとしては、1)筋層への通電によるダメージが無い、2)粘膜下層浅層で切除されるため術後潰瘍底に粘膜下層を比較的多く残すことができる、3)スネアによる絞扼切除のため潰瘍底が小さく縫縮しやすい、などが挙げられ、最も懸念される偶発症である遅発性穿孔の発生率低下が期待されている。2015年11月より「非十二指腸乳頭部腫瘍に対するCSPの安全性に関する第II相試験」を実施中で、明らかな癌を除いた10mm以下の非乳頭部十二指腸腺腫を対象とし、登録後にCSPを行い、3か月後に内視鏡検査で遺残の確認を行っている。Primary endpointは遅発性偶発症発生割合で、予定19例の登録を終了し、現在経過観察中である。

 

【一般演題10】
表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍に対する浸水下EMRの有用性
大阪府立成人病センター 消化管内科
○山崎 泰史、上堂 文也

【背景】
2013年まで当院では表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(SNADET) に対してEMR・ESDを行っていたが、遅発穿孔率がEMR:2%(2/102)、ESD:17%(2/12)と非常に高いことが問題であった。2014年以降は、治療前に2cm以下と考えられる症例に対しては浸水下EMR(UEMR)を導入しており良好な成績が得られているため、報告する。
【対象及び方法】
2014年6月-2016年12月までに当院で治療をした2 cm以下の散発性SNADET患者は71名であった。このうち、UEMRを施行した連続する患者66名68症例に関して、腫瘍径・部位、一括切除割合、一括完全切除割合、遺残割合、有害事象発生割合を評価した(EMR・Polypectomy 1名、Cold snare polepectomy 4名は除外した)。一括完全切除とは、病理学的に切除断端陰性で一括切除できた場合と定義した。全例UEMRの3ヵ月後に内視鏡検査を行い、生検で遺残の有無を評価した。UEMR後の潰瘍底は可能な限りクリップ縫縮を行った。
【結果】
平均(±SD)年齢60±11歳、男:女=44:22、平均(±SD)腫瘍径10±4 mm、腫瘍部位(球部:下行脚乳頭より口側:下行脚乳頭より肛門側及び水平脚=6:25:37)、腺腫:粘膜内癌=58:10であった。一括切除割合84%(57/68)、一括完全切除割合は65%(44/68)であった。分割切除となった11例のうち8例は腫瘍径が15 mm以上であった。遺残割合は1%(1/68)で、追加内視鏡治療で消失した。後出血3%(2/68)、術中・遅発穿孔は0%であった。クリップ縫縮は93%(63/68)で施行しており、1例のみ縫縮した症例でも後出血を認めた。
【結論】UEMRは2 cm以下のSNADETに対して安全かつ有効な治療法と考えられた。

 

【一般演題11】
十二指腸腫瘍に対する内視鏡切除の治療成績
国立がん研究センター中央病院 内視鏡科
○野中 哲、小田 一郎、阿部清一郎、鈴木 晴久、吉永 繁高、斎藤 豊

【目的】
我々は十二指腸ESDを積極的には施行しない立場をとっており、非乳頭部十二指腸腫瘍に対する内視鏡切除の成績について検討した。
【方法】
2000年1月から2016年6月の期間に、十二指腸腺腫または癌として内視鏡切除が施行された153症例164病変158 sessions(平均年齢64.1、男性107、女性46)を対象とした。検討項目は、内視鏡診断、治療法、病理診断、偶発症とし、1年以上の観察期間がある113例について長期成績を検討した。
【結果】
病変局在は球部/下行部/水平部/術後吻合部30/118/13/3、腫瘍径中央値(範囲)は12mm(3-50)、治療法はEMR/ESD 154/10であり、切除結果は一括切除/分割切除/治療中止107/56/1であった。穿孔はEMRで1例(過凝固にて穿孔、保存的治療にて軽快)、ESDで2例(1例は術中穿孔にて治療中止→待機的手術、1例は遅発性穿孔にて緊急手術)に発生した。
切除後潰瘍に対する予防的縫縮・被覆は89%(146/164)で行われ、全体の後出血割合は7.6%(12/158)だが、縫縮・被覆あり/なしでの後出血は7%(10/140)/11%(2/18)であった。最終病理結果は腺腫/癌66/98、深達度(癌のみ)はM/SM 93/4であった。
EMRを施行したM癌の1例とSM癌の1例で局所再発を認め(1.2%,2/164)、前者は再EMRが、後者は外科手術が施行された。長期成績では原病死はなく、4例の他病死を認めた(観察期間中央値33ヶ月[範囲12-181])。
【考察】
局所再発割合は低く、長期成績でも原病死を認めていないことから、現時点では非乳頭部の十二指腸腺腫・癌に対する分割切除も含めたEMRは許容される。

 

【一般演題12】
十二指腸腫瘍に対する内視鏡治療の成績
佐久医療センター 内視鏡内科
○高橋亜紀子、小山 恒男、依光 展和

【目的】
十二指腸腫瘍の内視鏡治療の成績を検討し、その問題点を挙げること。
【対象と方法】
2007年1月から2016年12月までに内視鏡治療を行った十二指腸腫瘍166例(男性118・女性48)178病変を対象とし、Under water polypectomy (UWP), EMR, ESD, ESD+腹腔鏡の4群に分けて検討した。
・UWP群18病変(0-I/0-IIa/0-IIb/0-IIc:4/7/0/7、bulbs/2nd portion/ 3rd portion:
3/9/6)。
・EMR群25病変(それぞれ6/11/1/7、5/17/3)。
・ESD群130病変(それぞれ3/56/0/71、7/107/16)。
・ESD+腹腔鏡群5病変(それぞれ0/4/0/1、0/4/1)。
検討項目:腫瘍長径、切除長径、R0率、RXの理由、偶発症。
【結果】
1、腫瘍長径
UWP, EMR, ESD, ESD+腹腔鏡それぞれ、中央値9(3-25)mm、9(3-70)mm、9(2-34)mm、29(9-45)mm。ESD+腹腔鏡とUWP, EMR, ESD群間に優位差あり。
2、切除長径
UWP, EMR, ESD, ESD+腹腔鏡それぞれ、中央値12(7-25)mm、14(5-70)mm、15(8-44)mm、38(34-58)mm。ESD+腹腔鏡とUWP, EMR, ESD群間に優位差あり。
3、R0率
UWP, EMR, ESD, ESD+腹腔鏡それぞれ、78%(14/18)、68%(17/25)、85%(111/130)、100%とESDで高かったが、UWPとEMR、ESDとESD+腹腔鏡の2群で検討すると優位差はぎりぎりなかった(p=0.06)。
4、RXの理由は、最初または最終切片まで腫瘍が存在しLM陰性が証明できないLMXが挙げられた。マーキング外に十分な安全域を確保できないことが、その原因と考えられた。
5、偶発症
遅発性穿孔と後出血予防として、潰瘍底のクリップ縫縮・腹腔鏡下縫縮・ネオベールを使用した予防群168病変と、非予防群10病変を比較した。遅発性穿孔は予防群0%、非予防群10%(1/10)で優位差あり(p=0.05)。後出血は予防群1.8%(3/168)、非予防群20%(2/10)で優位差あり(p=0.02)。
【結語】
1、切除面積に制限があり、LMXが多い点がUWPやEMRの問題である。
2.R0率に優位差がないのは、UWPやEMRで明らかにR1になる場合は、途中で手技をESDに変更していることが原因と思われた。
3、遅発性穿孔と後出血予防には潰瘍底の縫縮が有用であった。

 

【一般演題13】
非乳頭部十二指腸腫瘍に対する内視鏡治療の変遷と現状
~Pocket-creation methodを用いたESD~
自治医科大学 内科学講座消化器内科学部門
○三浦 義正、井野 裕治、岩下ちひろ、岡田 昌浩、福田 久、高橋 治夫、坂本 博次、林 芳和、矢野 智則、砂田圭二郎、大澤 博之、山本 博徳

【背景】十二指腸ESDが安易に施行された結果、様々な偶発症が起こり、その危険性だけがクローズアップされ現在に至る印象を受ける。重要なことは、症例の選択と偶発症対策であり、特にPocket-creation method (PCM)は、その安定性(術中穿孔予防)と意図的に粘膜下層組織を筋層上に残す剥離(遅発穿孔予防)が可能なため有効な治療法と考えている。
【目的】手技別での治療成績の検討【対象と方法】2006年から2016年に施行した非乳頭部十二指腸腫瘍110病変に対する内視鏡治療を、非ESD群(EMRやunder water polypectomy等) 61病変とESD群49病変で、さらにESD群をPCM 群(PCM-ESD)32 病変とConventional method 群(CM-ESD)17病変とで比較検討した。
【結果】非ESD 群vs ESD 群で、癌/ 腺腫19/42 vs 34/15(P=0.0001)、腫瘍長径(mm) 10 vs 25 (P=0.000)、穿孔率(%) 0vs 16.3 (P=0.001)、R0切除率(%) 42.6 vs 79.6 (P=0.0001) 、局所再発を非ESD群に2例(3.3%)認めた。一方、PCM-ESDvs CM-ESDで、切除長径(mm) 37 vs 25 (P=0.003)、剥離速度(mm2/min) 9.9 vs 6.5 (P=0.047)、穿孔率(%) 9.4 vs 29.4(P=0.178)、R0切除率(%) 84.4 vs 70.6 (P=0.254) 、CM-ESDでは1例(5.9%)に遅発穿孔を認めた。
【結語】非ESD法は安全で簡便であり十分活用されるべき治療手技で、当科でも症例数は増えているが、一方でESDでの一括切除が望ましい症例も、ある一定の確率で存在すると考える。安易な分割切除は局所再発の増加を危惧する。課題はあるがPCMを用いたESDは現実可能に行える治療手技である。

 

【一般演題14】
当院における非乳頭部十二指腸腫瘍に対するESDの現状と穿孔予防の術中工夫について
武田総合病院 消化器センター
○滝本 見吾、大石 嘉恭、玉置 大

【目的】非乳頭部十二指腸腫瘍に対するESDは術中穿孔が他の消化管ESDよりも多いため,我々は様々な工夫を行ってきた.今回当院のESD術中の様々な工夫が穿孔率を低下させるかを検討した.
【対象と方法】2010年以降に当院でESDを施行した169例のうち,術中の工夫を開始した2014年2月以降の症例86例を対象とした.術中の工夫としては①処置具をFlushナイフからHookナイフへ変更し,②通常の先端アタッチメントからshort ST hoodへ変更し,③糸付きクリップを併用した.前記3個のすべての工夫を併用した2015年7月以降のA群(42例)と,併用していないB群(44例)とにつき治療成績,術中穿孔についてretrospectiveに比較検討した.
【結果】A群(平均腫瘍径25(7-40)mm,球部:下行部=9:33,IIa:IIc=30:12),B群(平均腫瘍径17(7-26)mm,球部:下行部=12:32、IIa:IIc=27:17)であった.一括切除率はA群:B群=90%:91%,術中穿孔率はA群:B群=7%:9%,平均治療時間はA群:B群=136分:150分であった.
【結語】今回の検討では,工夫群では腫瘍径が大きい傾向があったこともあるが,様々な工夫を行ったにも関わらず穿孔率の減少は認められなかった.術前の生検診断を無くす,視野を安定させるバルーン付きオーバーチューブを併用,ハサミ鉗子を使用などさらなる術前,術中の工夫が必要であると考える.またLECSやPDなどの外科手術との棲み分けや,EMRとの棲み分けも重要であると考えている.

 

【一般演題15】
十二指腸腫瘍に対する腹腔鏡補助下縮小手術
杏林大学外科
○阿部 展次、橋本 佳和、竹内 弘久、森 俊幸、杉山 政則

(目的)十二指腸腫瘍に対する腹腔鏡手術の報告は少ない.我々が導入している複数の腹腔鏡補助下縮小手術の実際の手技と成績を供覧したい.
(対象)2007年から治療が行われた十二指腸腫瘍39例のうち,開腹手術と内視鏡治療を除いた腹腔鏡補助下縮小手術施行例15例(2011/3~,平均年齢60歳,男性7例,女性8例)を対象とした.疾患は,腺腫/M癌/GIST/NET/その他が各々7/ 1/3/3/1例.局在内訳は,第I/II/III部が各々4/10/1例.平均腫瘍径は23mm.手術内訳は,腹腔鏡補助下の経十二指腸的粘膜下層剥離術/全層部分切除術/内視鏡的全層部分切除術/膵温存分節切除術/幽門側胃切除術が各々8/2/2/2/1例.(手術法)第I部後壁やII-III部の腫瘍:腹腔鏡下に結腸take-downや膵頭十二指腸授動,膵―十二指腸attachment切離などを行ったのち,上腹部小開腹創(5-8cm)から十二指腸を創外へ展開し,直視下に各種手技(経十二指腸的粘膜下層剥離や全層切除,十二指腸切離,縫合,吻合など)を行う.腫瘍局在や病態によっては乳頭切除(±乳頭形成)も併施(2例).第I部前壁NETは腹腔鏡観察下/補助下に内視鏡的全層切除を行い,全層欠損部は腹腔鏡下に縫合閉鎖する.
(結果)平均手術時間は187分,平均出血量は50mL,腫瘍は全例断端陰性で切除された.術後合併症は,術後切離面からの出血+急性膵炎(後に膵周囲液体貯留から吻合部穿破)が1例(乳頭進展腺腫,経十二指腸的粘膜下層剥離術+乳頭切除),胃排泄遅延を2例(経十二指腸的粘膜下層剥離例および膵温存分節切除例)に認めたが,いずれも内科的治療で対応可能であった.平均術後在院期間は14日.観察期間内で再発なし.(結論)内視鏡的切除適応外と診断された十二指腸腫瘍(リンパ節転移陰性あるいは低率)では,供覧するいずれかの腹腔鏡補助下縮小手術で対応可能であり,PDが必要な局面はほとんどない.その一方で,これらの縮小手術においても膵炎や排泄遅延が起こる可能性もあり,それらを予防する細部の工夫などについてさらなる検討を要することが示唆された.

 

【一般演題16】
十二指腸腫瘍に対する腹腔鏡内視鏡合同手術(D-LECS)と開腹十二指腸局所切除術の比較
がん研有明病院 消化器センター外科1)、がん研有明病院消化器センター内科2)
○安福 至1)、布部 創也1)、比企 直樹1)、石沢 武彰1)、齋浦 明夫1)、山本 頼正2)、藤崎 順子2)、井田 智1)、熊谷 厚志1)、大橋 学1)、佐野 武1)、山口 俊晴1)

【背景】十二指腸腫瘍に対し開腹十二指腸局所切除が行われてきたが、近年では腹腔鏡内視鏡合同手術(D-LECS)が報告されている。しかしこの両者を比較した報告はない。
【目的】当院で行ったD-LECSと開腹十二指腸局所切除術の短期成績を比較する。
【方法】当院で2000年から2015年までに施行した開腹十二指腸局所切除16例とD-LECS22例について臨床病理学的因子,手術所見,術後合併症を後ろ向きに検討した.
【結果】診断はD-LECS群では腺種:癌:カルチノイド:その他=7:7:5:3,開腹群では腺種:癌:カルチノイド:その他=0:9:5:2。手術時間は開腹群で有意に短く(134分vs 222分、P=0.006)、出血量はD-LECS群で有意に少量であった(5ml vs 25ml、P=0.008)。Clavien-Dindo 分類2 以上の術後合併症はD-LECS 群で5 例(22.7%)、開腹群で5例(31.3%)認め、合併症発生率に有意差はなかった(P=0.556)。術後入院期間はD-LECS群で有意に短かった(8日vs 15.5日、P<0.001)。
【考察】D-LECS群は開腹群より手術時間は長いものの術後入院期間は短期間であった。術後合併症はD-LECSでも多く今後の課題と考えられた。

 

問合せ先

〒329-0498
栃木県下野市薬師寺3311-1
自治医科大学大学 内科学講座消化器内科学部門
担当者:三浦 義正 TEL:0285-58-7348 FAX:0285-44-8297
E-mail:y-miura@jichi.ac.jp

詳細

日付:
2017年5月13日
時間:
1:10 PM - 4:00 PM
イベントカテゴリー:

会場

大阪国際会議場
北区中之島5丁目3-51
大阪市, 大阪府 530-0005 Japan
+ Google マップ
Phone
06-4803-5585

主催者

日本消化器内視鏡学会
第107回日本消化器内視鏡学会総会

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