一覧はこちら

Q1.(上部・下部)造影検査と内視鏡検査の違いは何ですか?

01造影検査と内視鏡検査の違い(総論)

内視鏡検査と造影検査は、いずれも消化管の内腔側(粘膜面)から情報を得る方法です。表1に、胃の疾患を代表例として、消化管検査から見た病変を”粘膜側”と”粘膜より下層”に分類しました。表1の“粘膜側の所見”に示すように、潰瘍や癌などは粘膜側の病気なので、両検査とも異常所見を直接捉えることができ、検診および診療において高い診断的価値を発揮します。一方、“粘膜下の所見”は、粘膜側から直接観察できないため、得られる情報に限界があります。“粘膜下の所見”を補うために、先端に超音波を装備した、超音波内視鏡検査(EUS)を使用することがあります。EUSの詳細については他項に譲ります。


消化管の代表的な検査法である内視鏡検査と造影検査の主な違いを、表2にまとめました。造影検査は、消化管内に入れた造影剤を(胃透視なら経口的に、注腸造影なら経肛門的に)注入し、体を通過するレントゲン量の濃淡を反映したレントゲン写真(白~黒のモノトーン)から、粘膜側の凹凸と胃の形状を読影し診断します。図1-Aに、深くて大きな胃潰瘍の造影写真を示します。一方、図1-Bが同じ症例の上部内視鏡写真です。内視鏡検査はスコープを挿入し、光学的に形態変化(凹凸)や色調変化(カラー)を高い再現性を持って観察できます。造影検査は、一旦、造影剤や発砲剤を入れると食道、胃、さらに十二指腸と奥に流れていくため、刻々と変化し、再現性が低くなります。さらに、内視鏡検査は生検組織診断が可能なだけでなく、治療にも応用できることを加味すると、消化管造影検査は比較の対象にならなくなります。しかしながら、消化管造影検査は消化管全体の形態・大きさ・位置を把握するのに有利であり、内視鏡検査の短所を補うことができます。


消化管の検査は、検査部位により大きく、上部と下部の二つに分けられます。上部消化管検査における検査対象部位は食道・胃・十二指腸であり、下部消化管検査の検査対象部位は大腸です。全長が約6mにも及ぶ小腸は、検査の難易度が高く、被検者の負担も大きかったため、一般的な検査ではありませんでした。しかしながら、近年、カプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡の開発と進歩により、小腸検査が積極的に行われるようになってきました。カプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡の詳細については他項に譲ります。上部(食道・胃・十二指腸)および下部(大腸)消化管では、造影検査と内視鏡検査においてそれぞれの長所・短所が異なる点を持ちますので、それぞれの詳細については次項(②、③)をご参照ください。


 表1 消化管検査から見た胃病変

表1 消化管検査から見た胃病変


 表2 消化管造影と内視鏡検査の特徴と相違点

表2 消化管造影と内視鏡検査の特徴と相違点
 
図1-A 図1-B
図1-A 図1-B

02上部消化管の造影検査と内視鏡検査の違い

上部消化管造影検査(胃透視検査)とは、おもに胃・十二指腸を観察するレントゲン検査です。検査はまず、造影剤と適宜、発泡剤を飲み、造影剤を体の回転により胃・十二指腸粘膜表面に付着させて、レントゲン写真を撮影します。前項①の図1-Aが、典型的な深く大きな胃潰瘍の造影写真です。


内視鏡検査は、前項①の表2に示すように造影検査と比べ、かなり有利な条件を備えています。しかしながら、造影検査と内視鏡検査の違いとして、前者が液体(造影剤)を使用するのに対して、後者は個体(スコープ)を口から喉を通す必要があるため、内視鏡検査に対する不安感や抵抗感が生じます。この問題を軽減するために、細経スコープによる経鼻内視鏡が、近年開発されました。詳細については他項に譲ります。


内視鏡検査のもう一つの問題点が偶発症です。1988年から1992年までの日本消化器内視鏡学会の統計によると、上部内視鏡検査の際起こりうる偶発症は約0.0023%(検査総数6,102,864件に対し141件)と報告されています。つまり、頻度は少なく、安全性の高い検査と言えますが、10万件に2人の割合で偶発症が起こることになります。その内容の多くは出血、穿孔、ショックなどですが、死亡に至った例が13例報告されています。頻度としては0,0002%であり、検査50万件に1件というさらに低い確率です。一方、造影検査による偶発症に関する正確な疫学調査は把握されていませんが、大半はバリウムの誤嚥(気管内吸引)や検査台からの転落などで、重篤なケースは極めてまれと考えられます。


本邦は、世界的に見て、胃癌の発症率・死亡率の極めて高いことが知られています。発見時の胃癌の病期(進行の程度)がその後の生命予後と密接に関連していることから、早期発見・早期治療が強く求められてきました。1次予防が癌の発症を抑えることを目的としているのに対し、2次予防とは、検診により、できるだけ早期の段階で病気を見つけ出すことを目的としています。日本の検診は、胃癌の2次予防として造影検査が盛んに行われ、内視鏡検査はおもに精密検査として位置づけられ発展してきました。結果として、両検査の診断能・治療技術は世界でも最高水準に高められ、早期胃癌の5年生存率は95%以上に達しています。平成21年度消化器がん検診全国集計によると、造影検査による胃癌の発見率は0.088%で、6,093,665人中5,359人に胃癌を発見することができました。精密検査で行う内視鏡検査では、検診の胃透視で指摘された所見とは異なる部位に発見される胃癌が相当数含まれています。胃透視は、胃癌発症リスクの高い症例を拾い上げていると予想されます。さらに、近年、胃癌発症リスクの高い症例の拾い上げを胃癌検診に生かすため、血清ペプシノーゲン検査とHピロリ菌抗体検査を組み合わせた、ABC検診法が取り入れられつつあります。ABC検診法の詳細は他項に譲りますが、ABC検診の導入は、胃癌発症リスクを知ることで、消化管検査による胃癌の見つけ出しが効率化できるものと期待されます。


03下部消化管の造影検査と内視鏡検査の違い

下部消化管造影検査(注腸造影)とはおもに大腸を観察するレントゲン検査です。検査はまず肛門に細い管を挿入し、造影剤(バリウム)と空気を注入します。注入したバリウムは、できるだけ大腸粘膜表面全体に付着させることができるよう、体を回転させ、その後、レントゲン写真を撮影します。図2に一般的な注腸造影写真を示します。上部消化管造影と同様、注腸造影のおもな役割は、病変を発見することや、腸の形態を把握することです。


典型的な進行性大腸癌の造影写真(図3-A)と内視鏡写真(図3-B)を示します。肛門から内視鏡スコープを挿入する下部内視鏡検査は、造影検査より情報量が多く、生検診断や治療手段にもなり得ることは、上部消化管検査と同様です。


注腸造影検査の問題点は、図4に示すように、大腸癌の頻度が最も多いS状結腸では屈曲が強いためレントゲン撮影上、重なりやすく、見逃しやすいことにあります。加えて、生殖細胞への直接的な放射線被爆が、上部消化管よりも下部消化管造影では多いことへの配慮が必要であり、当然、妊娠例では禁忌です。


一方、下部内視鏡検査の問題点は、個人差はあるものの、腸管が長過ぎる場合や腹部手術などにより腸管が癒着している場合、検査の苦痛や危険が増し、全大腸を観察できないことがあります。さらに、大腸は、図5に示すようなハウストラという特徴的なヒダが、病変の存在を隠すことがあるため、小さな病変を見逃しやすい傾向にあります。さらに、大腸内視鏡検査および治療に伴う偶発症の発生頻度は、1998年から2002年の5年間の全国集計上、0.069%で、検査約1,500件に1件の割合になります。まれなことではありますが、統計上は、上部内視鏡検査に比べ偶発症の発生頻度は高いと言えます。


必要に応じて内視鏡検査と造影検査の両者を行うことで欠点を補うことができます。近年では、注腸造影検査の代用として、CT検査を応用した、大腸3D-CT検査(CTコロノグラフィ)を行うことがあります。さらに、多くの場合、自費になりますが、PET検査により、大腸ポリープや癌のスクリーングを行うこともあります。詳細については各医療機関にてご相談下さい。


図2
図2
 
図3-A 図3-B
図3-A 図3-B
 
図4
図4
 
図5
図5
 
日本医科大学消化器肝臓内科 三宅 一昌

ページトップへ一覧はこちら