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Q11.検診を受けようと思っていますが、バリウムと胃カメラ、どちらの方がよいですか?

これまで胃がん検診は、一次検査としては主にバリウム検査(胃透視検査)が行われ、異常があった場合に二次検査(精密検査)として胃カメラ(内視鏡検査)が行われてきました。  胃透視検査は、飲んだバリウムを胃の中に薄く広げて、胃の形や表面の凹凸をレントゲンで観察するものです。一方、内視鏡検査は先端についた小型CCD(ビデオカメラ)で、胃の中を直接ビデオ画像で観察するものです。言い換えれば、胃透視は白黒の影絵を見ているにすぎず、平坦な病変や色の違いは認識できませんが(図1)、内視鏡は色の変化やわずかな粘膜の隆起や凹み、模様のちがいを認識できます(図2)。


図1. 胃透視検査

図1. 胃透視検査

図2.内視鏡検査

図2.内視鏡検査


特に早期の胃がんでは、病変部がわずかな隆起や凹み、色のちがいとしてしか認識できないことが多いため、内視鏡の方がこうした病変の指摘には断然優れています。また、内視鏡では食道についても同様に観察できますが、胃透視では食道はさっとバリウムが流れてしまうため、小さな病変や平坦な病変の指摘は困難です。さらに、内視鏡では“がん”が疑われる病変があれば、その組織を一部採取(生検)して、病理診断(顕微鏡診断)によって本当に“がん”かどうかの確定診断をつけることができます。
 こうした高い診断能にもかかわらず、これまで検診において胃透視が内視鏡よりも優先されてきた理由は、胃透視の方が手軽にできて(バスによる巡回検診も可能)、費用が安く、検査時間が短く、検査を行う人手も多いため(胃透視は放射線技師が主に施行、内視鏡は医師のみ)、より多くの受診者を検査することができたからです。
 しかし、胃透視では少量ではあるものの放射線被爆があります。また、日本対がん協会が2010年に行った胃がん検診のデータによると、受診者243万1,647人のうち精密検査が必要と判定された方は20万7,877人(8.5%)で、このうち実際に精密検査(内視鏡)を受けた方は15万4,167人(77.4%)、“がん”が発見された方は2,683人(0.11%)という結果でした。これは見方を変えると15万人以上の方が2つの検査を受けるという二度手間をかけて、実際に“がん”が見つかったのは精密検査を受けた方の2%弱という効率の悪い結果と受け取れます。こんなことであれば、はじめから内視鏡をと多くの方が思われるのではないでしょうか?
 しかし、内視鏡にも欠点があります。多くの方が胃透視よりも内視鏡の方が苦しいと感じています。ただし、検査の際に鎮静剤(眠りぐすり)を注射して、眠っている間あるいはぼんやりした状態で検査を楽に受けることはできますし、口からの内視鏡よりも苦痛の少ない鼻から入れる内視鏡(経鼻内視鏡)も最近では多くの施設で行われています。
 さて、最後に費用についてです。2016年2月に厚生労働省が示した「がん予防重点教育及び検診実施のための指針」で、これまでの胃透視と同様に内視鏡を胃がん検診に推奨したことを受けて、胃透視だけでなく内視鏡も検診に取り入れている市町村や会社が最近増えています。費用についてはバリウムより少し高額に設定している場合が多いようですが、同額あるいはともに無料に設定しているところもありますので、内視鏡による胃がん検診を行っているかどうかも含めて、検査を受けられる市町村や会社に問い合わせをされるとよいと思います。


帝京大学医学部附属溝口病院  安田 一朗

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