日本消化器内視鏡学会

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内視鏡でAIは使われますか?

 結論から申し上げますと、近年内視鏡検査において、人工知能(AI)が使用されるようになってきております。以下に具体的に解説いたします。

内視鏡のAIとは何ですか?

 近年、医療分野でもAIの活用が急速に進んでおり、内視鏡検査においてもAI技術が導入されるようになってきました。内視鏡検査で使用されるAIとは、胃カメラや大腸カメラの映像をリアルタイムで解析し、医師の診断をサポートするコンピューターソフトウェアです。このAIシステムには主に2つの重要な機能があります。

 1つ目は「病変検出支援」機能で、がんやポリープなどの異常な部分を見つけて医師に知らせる機能です。内視鏡の映像を瞬時に解析し、正常とは異なる色合いや形状の部分を検出すると、画面上でその箇所を囲んで表示したり、音で知らせたりします。(図1)

図1

 

 2つ目は「病変の鑑別診断支援」機能で、見つかった病変が腫瘍性のポリープなのか、非腫瘍性ポリープなのかを判断する手助けをする機能です。病変の表面の模様や血管の走行パターンなどを詳細に分析し、その特徴から病変の性質を予測します。(図2)

図2

 

 現在、胃と大腸の内視鏡検査において、国が安全性と有効性を厳格に審査して認可したAIシステムが医療現場で実際に使用されています。

AIの有効性について

 内視鏡AIシステムの有効性については、国内外で多くの研究が行われており、その効果が科学的に証明されています。特に大腸内視鏡検査では、AIを使用することで病変の見落としが減り、発見率が向上することが確認されています。これは、人間の目では見つけにくい小さなポリープや、正常な粘膜に紛れて見つけにくい平坦な病変なども、AIが確実に検出できるためです。また、病変の鑑別診断(腫瘍か非腫瘍か判断する)についても、経験豊富な内視鏡医と同程度の正確さで診断できるという研究結果が報告されています。このような効果が認められているため、全国の医療機関でAI支援システムの導入が進んでいます。AIは医師の「第二の目」として機能し、人間の能力を補完することで、より確実で安全な内視鏡検査の実現に大きく貢献していくことが期待されています。

保険適用について

 2024年度の診療報酬改定により、大腸内視鏡検査においてAIの病変検出支援プログラムを使用しポリープ切除を行った場合、「病変検出支援プログラム加算」として60点(600円=3割負担で180円の追加費用)が保険で算定されるようになりました。患者さんの立場から見ますと負担増加になりますが、より信頼度・精度の高い内視鏡を受けることができます。診療報酬は、国がAIの有用性を公式に認めた結果であり、患者さんにより安心して最新のAI技術を活用した高精度な検査を受けることができるような土壌が整ってきています。

検査を受ける際の注意点

 ただし、すべての医療機関でAI支援システムが導入されているわけではありません。導入には専用の機器やソフトウェアが必要で、医療機関によって導入状況が異なります。内視鏡検査を受ける際にAIが使用されるかどうかは、事前に担当医や医療機関にお確認いただくことをお勧めします。また、AIが使用されない場合でも、経験豊富な医師による従来の検査で十分に精度の高い診断が可能ですので、ご安心ください。

 AIは医師の診断を支援する優れたツールですが、最終的な判断は必ず医師が行います。AIと医師の専門知識と経験を組み合わせることで、より質の高い内視鏡検査を受けることができ、早期発見・早期治療につながることが期待されています。

 

昭和医科大学横浜市北部病院 消化器センター
三澤 将史
(2025年8月19日掲載)

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