便潜血検査で「1回だけ陽性」と言われました。内視鏡検査は受けたほうがいいのでしょうか?
1)便潜血検査とは?
まず、現在検診で行われている便潜血検査は、便の中に含まれる微量な血液(ヒトヘモグロビン)を検出する検査で、主に大腸がんや大腸ポリープなどによる出血を見つけるために使われています。この方法は日本を含む多くの国で大腸がんのスクリーニング検査として広く実施されています。
2)大腸がん検診としての便潜血検査の意義
大腸がんは早期に発見すれば高い確率で治癒が可能な病気ですが、初期には自覚症状がほとんどありません。そのため定期的な検診による早期発見が非常に重要です。便潜血検査は、体への負担が少なく、簡単に受けられる検査でありながら、がんやポリープの早期発見に有効な方法とされています。
■ 1回だけ陽性でも、内視鏡検査が必要な理由
日本で行われている便潜血検査は、2日間にわたって便を採取する「2日法」が主流です。このうち「1回でも陽性」と判定された場合、精密検査として大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けることが強く推奨されます。「1回だけ陽性なら問題ないのでは?」と思っていませんか?
カナダで行われた大規模な研究(Moosaviら, 2016)では、2回法の便潜血検査のうち1回だけ陽性だった人でも、内視鏡検査で以下のような異常が見つかることが分かりました。
- 大腸がん:約1%
- 高リスクポリープ(10mm以上の腺腫):約20%
- 何らかの腫瘍性病変:約48%
「1回だけ陽性だったから大丈夫」、「もう1回は陰性だったから心配ない」と思いがちですが、実際には1回だけの陽性でも、がんや前がん病変が見つかることがあります。
例えば、私たちの関連施設で行った大腸内視鏡検査結果について、便潜血が1回だけ陽性だった方のうち、0.8%に早期大腸がん、2.2%に高リスクポリープが見つかりました(図)。
「0.8%」や「2.2%」という数字は一見すると低く感じるかもしれませんが、これは100人に1人に早期大腸がん、50人に1人にがん化リスクの高いポリープ(高リスクポリープ)があることを示しています。これらは症状がない段階で発見され、内視鏡で切除できた病変です。放置すれば進行する可能性があるため、1回でも陽性が出たら、軽く考えずに必ず内視鏡検査を受けてください。


図)便潜血1回陽性で発見された大腸腫瘍の頻度とサイズ(mm)
便潜血検査で「1回だけ陽性」と判定された方に対して行った大腸内視鏡検査の結果を示しています。図中の数字は、発見されたポリープのサイズを表しており、10mm以上の大きさのポリープ(高リスクポリープ)も見つかることがわかります。
■ 放置せず、必ず内視鏡検査を
便潜血検査で陽性になっても、
- 「1回だけ陽性で、1回は陰性だったから大丈夫」
- 「翌年の結果を見てから判断しよう」
と放置されることが少なくありません。しかし、早期発見・早期治療のためには、便潜血が1回でも陽性になったら、必ず内視鏡検査を受けることが大切です。
なお、便潜血陽性で内視鏡検査を受けた後は、
「昨年大腸内視鏡検査を受けました。今年も受ける必要がありますか?」を参考にしてください。
富山大学附属病院 光学医療診療部
藤浪 斗
(2025年10月22日掲載)