2019年6月2日(日)13:30~16:00
第10会場(グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール 1階 『瑞光』)
小野 裕之(静岡県立静岡がんセンター内視鏡科)
荒木 寛司(岐阜大学 光学医療診療部(消化器内科))
森田 圭紀(神戸大学医学部附属国際がん医療・研究センター
消化器内科)
山口 直之(長崎大学 光学医療診療部(消化器内科))
静岡県立静岡がんセンター内視鏡科 小野裕之
司会:独立行政法人国立病院機構京都医療センター消化器内科 滝本見吾
消化器内視鏡治療におけるPGAシート被覆法の有用性と課題
森田 圭紀(神戸大学医学部附属国際がん医療・研究センター 消化器内科)
司会 (1)長崎大学光学医療診療部 山口直之
(2)大阪国際がんセンター 消化管内科 竹内洋司
1.膵周囲膿瘍ドレーンの胃穿破により生じた廔孔に対し、OTSCに加えてPGAシートを併用するも閉鎖に難渋した1例
河原 史明1) 南 晶洋1) 千堂 宏義2) 松浦 敬憲1) 谷 聡1) 具 英成2)
甲南会 甲南病院 1)消化器内科 2)外科
2.早期胃癌ESD後にポリグリコール酸シート貼付後、後出血を繰り返した症例
山崎健路1)、吉田泰之、入谷壮一、寺倉大志、永野淳二、安藤暢洋
荒木寛司2)、清水雅仁
1)岐阜県総合医療センター 消化器内科 2)岐阜大学医学部付属病院 消化器内科
3.十二指腸ESD後の潰瘍底にPGAシートによる被覆法を行ったが遅発性穿孔に至った一例
澤田敦史1)、小林亮介1)、池田良輔1)、西尾匡史1) 、福地剛英1)、佐藤知子1)、平澤欣吾1)、前田愼2)
1)横浜市立大学附属市民総合医療センター 2)内視鏡部横浜市立大学 消化器内科
4.胸部大動脈解離に対する大動脈ステントグラフト内挿術後、食道大動脈瘻を形成し、PGA被覆法を施行するも奏効しなかった一例
滝本見吾 水本吉則 勝島慎二
独立行政法人国立病院機構京都医療センター 消化器内科
司会 (1)虎の門病院 消化器内科 飯塚敏郎
(2)香川大学 消化器・神経内科 森宏仁
1.「クリオシール」システムによる自己フィブリン糊を用いたESD後潰瘍に対するPGA被覆法
久保田全哉、荒尾真道、水谷拓、小澤範高、井深貴士、荒木寛司、清水雅仁
岐阜大学医学部附属病院 消化器内科
2.PGA (Polyglycolic acid) シートによる被覆充填が有用であった2症例
大阪赤十字病院 消化器内科
網野 遥、鼻岡 昇、中西 梨紗、瀧本 郁久、多木 未央、福原 学、木村 佳人
瀬戸山 健、坂本 梓、邉見 慎一郎、山階 武、澤井 勇悟、米門 秀行、
淺田 全範、津村 剛彦、喜多 竜一、圓尾 隆典、木村 達、丸澤 宏之
3.当院で胃ESD後にPGAシートを貼付した16症例の検討
阪口博哉、鷹尾俊達、森田圭紀、児玉裕三
神戸大学医学部附属病院 消化器内科
4.ESD術中穿孔/術後穿通に対するPGAフェルト+フィブリン糊被覆法(Single felt法)の有用性と限界
東郷政明1),山口直之1)2),荻原久美1),橋口慶一1)2),竹島史直1),宿輪三郎1),中尾一彦1)
1)長崎大学病院 消化器内科 2)長崎大学病院 光学医療診療部
5.消化管穿孔及び瘻孔症例に対するポリグリコール酸(PGA)シートとフィブリン接着剤の有効性 – 多施設遡及的研究
大阪国際がんセンター 消化管内科 松浦倫子 竹内洋司
東京大学医学部附属病院 消化器内科 辻陽介
静岡県立静岡がんセンター 内視鏡科 小野裕之 滝沢耕平
独立行政法人国立病院機構京都医療センター 消化器内科 滝本見吾
神戸大学医学部附属国際がん医療・研究センター 消化器内科 森田圭紀
大阪市立大学大学院 医学研究科 消化器内科学 永見康明
横浜市大市民総合医療センター 内視鏡部 平澤欣吾
岐阜大学 光学医療診療部 荒木寛司
長崎大学 光学医療診療部 (消化器内科) 山口直之
福井県立病院 消化器内科 青柳裕之
秋田大学 消化器内科 松橋保
虎の門病院 消化器内科 飯塚敏郎
JA長野厚生連 南長野医療センター 篠ノ井総合病院 消化器内科 三枝久能
岐阜県総合医療センター 消化器内科 山崎健路
国立病院機構四国がんセンター 内視鏡科 消化器内科 堀伸一郎
国立病院機構岡山病院 消化器内科 万波智彦
大阪赤十字病院 消化器内科 鼻岡昇
香川大学 消化器・神経内科 森宏仁
司会:横浜市大市民総合医療センター 内視鏡部 平澤欣吾
PGA被覆法による抗凝固療法・DAPT療法中の患者に対する胃ESD後出血予防効果の検証
東京大学医学部附属病院消化器内科
○辻 陽介
岐阜大学 光学医療診療部 荒木寛司
1. 膵周囲膿瘍ドレーンの胃穿破により生じた廔孔に対し、OTSC に加えて PGA シートを併用するも閉鎖に難渋した 1 例
【症例】70 代、男性
【主訴】腹部膨満感、嘔吐
【現病歴】20XX 年 8 月中旬より腹部膨満感と食思不振を自覚し、8 月下旬からは食後に嘔吐するようになった。1 週間ほど水分のみ摂取していたが改善しないため 9 月 X 日に当院を受診した。
【既往歴】40 代:胃潰瘍に対し開腹幽門側胃切除術・Bil- Ⅰ法再建
【経過】腹部所見、CT より消化管穿孔に伴う腹腔内膿瘍を疑い同日緊急手術となった。術中、上行結腸憩室および十二指腸潰瘍の穿孔と広範囲に腹腔内膿瘍を認め、右半結腸・大網合併切除ならびに十二指腸潰瘍穿孔部の縫合閉鎖・大網被覆を行い、回腸人工肛門造設術を施行した。
術後 5 日目、膵周囲膿瘍に対し CT ガイド下にドレーンを追加、徐々に経口摂取を開始したところドレーンより排液が増加し、造影で胃への穿破が疑われた。同ドレーンを抜去し膵尾部近傍の膿瘍に対し再度ドレーンを留置したが胃瘻孔は閉鎖せず、内視鏡では残胃体上部大弯の微小な瘻孔より膿汁の流入を認めた。クリップと留置スネアでは縫縮困難であり、術後 59 日目にOTSC による瘻孔閉鎖を行った。いったん排液は減少するも完全な閉鎖は得られず PGA シートを用いることとした。
術後76日目、3×5mmのシート小片を瘻孔に複数充填したのちフィブリン糊を塗布し被覆を試みたが絶飲食にも関わらず 4 日後には脱落しており、処置を 2 回反復したが同様であった。
術後 104 日でドレーンを留置したまま退院し最終的に術後 147日目の造影で瘻孔の閉鎖が確認された。
【考察】本症例においては、胃壁の慢性炎症や低栄養、術後胃などの因子が瘻孔閉鎖の妨げになったと推測される。手技の工夫によりこのような症例でもPGAシート+フィブリン糊が有用となりうるか、検討が必要である。
2. 早期胃癌 ESD 後にポリグリコール酸シート貼付後、後出血を繰り返した症例
70 代男性。慢性腎不全にて維持透析中。
胃前庭部小弯の早期胃癌に対して ESD を施行。病変径 20 x 15mm の粘膜内高分化型腺癌で治癒切除と診断。出血予防のため止血鉗子を用いて露出血管の焼灼を行ったが、動脈性出血を惹起し止血に難渋したためクリップ止血を行った。ESD 後潰瘍面に胆汁逆流が多く認められた。透析中の高齢者であり、後出血のリスク、潰瘍の治癒遷延の可能性が高いことが予想されたため、ポリグリコール酸(PGA)シート(ネオベール ®)貼付を行った。潰瘍面全体に分割して貼付後、フィブリン糊(ベリプラスト ®)を注入した。術翌日の内視鏡検査では、潰瘍の幽門側半分ほどの領域で PGA シートが離脱し潰瘍面が露出していたが、出血は認めなかった。
術後 2 日目から経口摂取を開始したが、術後 4日目に少量の吐血を認め、内視鏡検査を施行。PGA シートが離脱した潰瘍面に出血を伴う露出血管を認め、クリップ止血を行った。潰瘍面の口側半分程の領域の PGA シートは残存し、ESD 当日にクリップ止血を行った部位からの出血は認めなかった。
術後 6 日目の内視鏡検査では出血所見なく、経口摂取を開始した。
術後 13 日目、特に症状は認めなかったが内視鏡検査を行ったところ、術後 4 日目に留置したクリップは脱落し、同部位から湧出性出血を認めたため、クリップ止血を追加した。潰瘍面口側の残存する PGA シートには凝血塊が付着していたため、出血所見の確認のため PGA シートを除去したが、極少量の出血を認めるのみで自然止血した。経口摂取は継続し術後 19 日目に退院となった。
PGA シートが離脱し後出血を繰り返した、慢性腎不全による維持透析中の早期胃癌 ESD 症例を経験した。
3 .十二指腸 ESD 後の潰瘍底に PGA シートによる被覆法を行ったが遅発性穿孔に至った一例
【序論】
PGA シートとフィブリン糊を併用した被覆法が内視鏡治療後の遅発性穿孔や後出血の予防策として有用な報告もあるが、当院で十二指腸 ESD 後の潰瘍底に PGA シートを貼付したにも関わらず遅発性穿孔に至った一例を経験したため報告する。
【症例】
67 歳女性。健診 EGD で十二指腸球部に 4mm 大の隆起性病変認め、NET の診断で当院紹介受診となった。EUS で隆起直下の第 4 層は保たれているため、ESD の方針となった。術中穿孔なく一括切除され、潰瘍底に PGA シートを貼付後にフィブリン糊で接着した。
POD1 に腹痛を認めたが、腹部 CT で明らかな穿孔は認めなかった。同日 EGD 施行し潰瘍底に PGA シートは残存していたが、EGD 直後の腹部 CT で肝表面に free airと腹水を認め、遅発性穿孔と診断した。外科と協議し、絶飲食、胃管留置、抗菌薬投与の保存的加療で経過観察の方針となった。
POD13 より食事開始し、POD15 に再度 EGD 施行したが潰瘍底は PGA シートで被覆されており POD16 に退院した。
【考察】
当院において十二指腸球部病変の ESD 後の潰瘍底に対しては、クリップ縫縮で離解することが多い為、PGA シートを用いた被覆法が行われている。2015 年 3 月から 2018 年 5 月の球部病変に対する ESD は 13 例(NET 8 例、腺癌 5 例)のうち、潰瘍底に PGA シートを被覆した症例は 9 例で、術後合併症は本症例の遅発性穿孔のみであった。NET は筋層直上での剥離が必要となるため、筋層に対する熱損傷が大きくかつ潰瘍底の粘膜下層が薄くなることから腺腫・腺癌と比し、より一層遅発性穿孔に対する予防策を講じる必要がある。NET の ESD 後潰瘍底に対してPGA シートのみでは不十分か否かを判断することは、現段階では困難でありより多くの症例の集積が必要と考える。
4. 胸部大動脈解離に対する大動脈ステントグラフト内挿術後、食道大動脈瘻を形成し、PGA 被覆法を複数回施行するも奏効しなかった一例
【はじめに】
PGA シートとフィブリン糊を併用した被覆法や充填被覆法が消化管の穿孔や瘻孔に対して有用であるとの報告がある一方、同方法が限界である症例も経験する。今回、胸部大動脈解離に対して大動脈ステントグラフト内挿術後に食道大動脈瘻を形成し、PGA による被覆法を複数回施行するも改善しなかった症例を経験したので報告する。
【症例】
61 歳男性。突然の激しい胸背部痛で近医受診し、胸部大動脈解離(Stanford B 型)と診断、緊急でステントグラフト内挿術(thoracic endovascular aortic repair: TEVAR)を施行した。そ
の後経過は良好であったが、POD13、胸痛精査の上部消化管内視鏡検査にて胸部食道に 10mm 大の瘻孔及び同部に白色の人工血管とステントワイヤーが観察された。食道大動脈瘻と判断したが、手術は困難と判断し、当院へ転院となった。
POD16 に上部消化管内視鏡検査を行ったところ食道大動脈瘻は人工血管とステントの一部、そして人工血管と食道粘膜の間に間隙が観察された。同部に通常の食道粘膜や肉芽は存在しなかった。PGA シートとフィブリン糊で被覆法を施行した。
しかし POD18 の観察時に PGA は完全に離脱しており、その際は辺縁を凝固してから PGA シート及びフィブリン糊で被覆した。POD21 の観察でも PGA は完全に離脱、その後数回の治療を試みたが、すべて離脱していた。炎症反応が定値かつ胸痛無く高熱も無かったこと、CT 上縦隔炎が無かったことより、POD32 より食事を開始、高熱が無く縦隔炎が無いことを確認し一時退院となった。
【考察】
大動脈解離や大動脈瘤破裂に対する処置としてス TEVAR が多くの施設で行われており、緊急の一時治療、特に下行大動脈瘤や解離に対しては非常に良い治療成績である。偶発症として血管外漏出の残存、人工血管による側枝の閉塞などが多く報告されているが、腸管関連合併症、特に大動脈消化管瘻の報告も約 2 - 6%と報告されている。その治療としては外科的介入が第一選択ではあるが、実際追加手術を行っても予後は不良であるとの報告もある。
また食道の消化管ステントも考慮されるがさらなる食道の圧迫壊死の可能性も高い。今回、複数回の被覆法を試みたが、完全なる食道瘻孔部の閉鎖は不可能であった。理由は、ステントグラフト上に上皮細胞が存在しないため、再生の足場がないためと考えられ、本法による治療では限界であると考えられた。
しかし今回、PGA 被覆により感染制御は行えた可能性はある。今後内視鏡医が遭遇する可能性も高い疾患のため今回報告する。
5 「クリオシール」システムによる自己フィブリン糊を用いた ESD 後潰瘍に対する PGA 被覆法
消化管内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)後の出血予防、遅発穿孔予防、狭窄予防、また消化管穿孔や難治性瘻孔の閉鎖を目的として、ポリグリコール酸(PGA)シートの被覆、充填が行われているが、その際には組織接着剤としてフィブリン糊の使用が必須である。
当院では、血液成分分離システム「クリオシール」(旭化成クラレメディカル)の導入により、患者自己血貯血実施後に遠心分離して得られた血漿から自己クリオプレシピテートと自己トロンビンを滅菌閉鎖回路内で自動生成することが可能となり、脳神経外科、整形外科、婦人科、消化器外科など手術時に使用されている。市販のフィブリノゲン製剤(ベリプラスト ®、ボルヒール ®)の使用、また従来の用手法により作成した自己クリオプレシピテートのみの使用と比較して感染症のリスクを解消でき得る方法である。
当科では 2013 年 3 月から 2019 年 2 月までにのべ 151 症例に対して PGA シートを使用している。2013 年 7 月から 2015 年 3 月までの期間に、従来の用手法による自己クリオプレシピテートを 7 症例に使用した。内訳は食道 ESD 後狭窄予防 1 例、胃 ESD 後抗血栓剤使用 4 例、胃ESD 後遅発穿孔予防 1 例、十二指腸 ESD 後遅発穿孔予防 1 例であった。
2015 年 4 月よりクリオシールシステムによる自己クリオプレシピテートおよび自己トロンビンの生成を開始し、これまでに 5 症例に使用した。いずれも胃 ESD 後の症例で、遅発穿孔予防が 2 例、抗血栓剤使用が 3 例であった。被覆の手技実施においてはこれまでと比較して問題なく実施可能であった。引き続き症例を蓄積予定であり、その使用成績について検討し報告をする。
6. PGA(Polyglycolic acid)シートによる被覆充填が有用であった 2 症例
症例 1
食道亜全摘後頚部吻合部狭窄に対する RIC+ ステロイド局注後に生じた胃管気管支瘻症例
68 歳男性
【経過】頭頚部癌治療後の経過観察中に食道癌を指摘され、2018 年 3 月上旬に胸腔鏡下食道亜全摘、後縦隔経路胃管再建術を施行された。術後 6 日目に縫合不全を発症したが保存的に軽快し、治癒した。その後 2018 年 5 月中旬頃から食事の通過障害を認め、内視鏡的に吻合部狭窄と診断した。内視鏡的バルーン拡張術を合計 4 回施行したが再度狭窄するため 2018 年 8 月に RIC(Radial Incision and Cutting)法による瘢痕切除を行い、引き続いてステロイドを局注した。
9 月上旬に飲水時に咽せるようになったため当院を受診。CT 検査で縫合不全の再燃と診断した。内視鏡的にも頚部吻合部に瘻孔を認めたため、9 月 19 日に PGA シートによる被覆充填を行った。9 月 26 日に瘻孔閉鎖を確認し、飲水を開始したが再度、咽せるようになったため絶食で保存的に経過観察した。10 月 10 日に 2 回目の被覆充填を行った後は軽快し、11 月 1 日に退院となった。
症例 2
食道憩室上に発生した胸部食道癌に対する ESD 症例
80 歳男性
【経過】2018 年 10 月に食道癌 Mt, 0-IIc, cT1aN0, 3/4 周性に対し、食道粘膜下層剥離術を施行した。粘膜下層を剥離中、病変中央付近に径 15mm ほどの筋層欠損を認め、憩室の存在を疑った。筋層欠損部の剥離は慎重に行い最終的に病変を切除した。術後の遅発性穿孔予防目的で筋層欠損部に PGA シートを充填し、フィブリン糊で固定した。また、術後狭窄予防目的でステロイドも局注した。
治療 7 日後の内視鏡検査では PGA シートは筋層欠損部に残存しており、その後の上部消化管内視鏡検査でも狭窄なく、瘢痕治癒を確認できた。
7 .当院で胃 ESD 後に PGA シートを貼付した 16 症 例の検討
【目的】近年胃 ESD 後の合併症予防法として注目される PGA シート・フィブリン糊貼付法は、輸送・貼付に時間がかかる ことや早期に脱落することが問題とされているが、その現状 について考察する。
【方法】当院では鉗子で把持したシートを 鉗子孔を介して、もしくはシートを把持してスコープごと胃 内に輸送し、潰瘍底に 1 枚ずつ貼付している。2013 年 11 月か ら 2019 年 1 月に PGA シートを貼付した胃 ESD16 症例を対象 に貼付時間、残存状態、その有効性について後ろ向きに検討 した。
【結果】全胃 6 例、術後胃 10 例(幽門部胃切除 B-I 再建 2 例、B-II 再建 5 例、胃管 3 例)であった。抗血栓薬内服例は 3 例であった。切除切片長径中央値 53.5mm(25-100)で、ESD 後 潰瘍の状態は、術中穿孔 2 例 / 筋層損傷 9 例 / 損傷なし 5 例 であった。貼付部位は U4 例 /M8 例 /L4 例(吻合部例は M3 例) で、被覆率は 2/3 以上 10 例、1/3 以上 2/3 未満 6 例、貼付時 間中央値 29 分 33 秒(10 分 55 秒 -83 分 14 秒)であった。貼付 翌日以降に確認したシート残存状態は、ほぼ残存 9 例、一部 残存 4 例、完全脱落 2 例、未確認 1 例であった。完全脱落し た 2 例中 1 例は、貼付時に逆流した胆汁にシートが曝露され、 もう 1 例は湧出性の後出血が生じた症例であった。シート貼 付にも関わらず後出血した例は、シート被覆率 1/3 以上 2/3 未満で粘液や胆汁曝露もなかったが、抗血栓薬 3 剤内服の透 析例であった。穿孔した 2 例のうち 1 例はシート貼付により 手術を回避しえたが、もう 1 例は処置当日に緊急手術となった。 筋層損傷例 1 例で遅発性穿孔が生じたが、翌日にシートを貼 付し手術を回避しえた。
【考察】シート貼付時間が長く、貼付 時間の短縮化が必要と考えられた。シート貼付時間や潰瘍被 覆率は、合併症発生率と相関しなかった。シート完全脱落例 は胆汁暴露や術後出血が一因である可能性が示唆された。
【結 語】シート貼付に時間を要し、胆汁逆流例や湧出性後出血例 でシートが完全脱落していることが明らかとなった。
8 ESD 術中穿孔 / 術後穿通に対する PGA フェルト + フィブリン糊被覆法(Single felt 法)の有用性 と限界
【目的】 ESD 穿孔 / 穿通例に対し PGA フェルト + フィブリン糊被覆 法(Single felt 法)(P/F-S 法)を施行し , その有用性と限界を VTR 提示も含め報告する .
【対象 / 方法】 対象は 2015 年 1 月から 2018 年 7 月に当院にて ESD を施行し た 987 例のうち , 術中穿孔 / 術後穿通例に P/F-S 法を施行した 5 例とし , その術後経過を検討した . * P/F-S 法 :PGA フェルト(3~5cm)にクリップ縫着を併用し , フィブリン糊にて被覆する方法
【結果】 症例は , 食道 2 例 , 胃 3 例 , うち 4 例(食道 2 例 , 胃 2 例)は術中 穿孔例で ,1 例(胃)が術後穿通例であった . P/F-S 法の創閉鎖成功率は 80.0%(4/5)で , 比較的高い創閉鎖 成功率で , 手術を回避できた . しかし , 食道例 1 例で穿孔閉鎖 が得られず , 緊急外科手術を要した . 不成功例:80 歳 / 男性 , 胸部食道の食道表在癌に対し ESD を 施行した . 以前の ESD 後潰瘍瘢痕の近傍の病変であり , 粘膜下 層内に高度の線維化を認め , 剥離に難渋し約 15mm の広範囲穿 孔を来した . P/F-S 法にて , 穿孔部を覆い周りをクリップにて 固定したが , 穿孔部が広範囲で , 狭い食道内において PGA フェ ルトが穿孔部に密着せずテント状に浮いた状態となった . やは り , 創閉鎖が不十分であり , 翌日に縦郭内に著明な液体貯留も 認めたため , 保存的加療は不可能と判断し , 緊急で外科的縦郭 ドレナージ術を施行した . その後も長期に穿孔部が閉鎖せず , 数か月にわたる絶食を要した .
【結語】 ESD 術中穿孔 / 術後穿通に対し P/F-S 法を施行した 5 例を経 験した . 本法により従来のクリップ縫縮では対応困難な巨大穿 孔 , 複数ヶ所穿孔や術後穿通例に対して保存的に対応可能で , 緊急手術を回避できる可能性が示唆された . ただし , 良好な効 果を得るためには穿孔部を確実に被覆 , 閉鎖する必要がある .
9. 消化管穿孔及び瘻孔症例に対するポリグリコール 酸(PGA)シートとフィブリン接着剤の有効性 – 多施設遡及的研究 PGA Study Group
<背景> ポリグリコール酸(PGA: Polyglycolic acid)シートは穿孔, 瘻孔閉鎖に対して有用である可能性があるが,多施設での治 療成績は報告されていない.
<目的と方法> 消化管穿孔 , 及び瘻孔に対する PGA シートとフィブリンによ る内視鏡的閉鎖術の有用性を明らかにするために,2013 年 4 月から 2018 年 3 月に実施した同法の治療成績を遡及的に検討 した.
<結果> ①内視鏡治療術中穿孔:66 例[食道:胃:十二指腸:大腸 6:22:12:26, 穿孔径中央値 5mm(範囲 1-30)]に対して穿孔確認 直後に PGA シートを中央値 1 回(範囲 1-3)被覆した . 49 症例 (74%)でクリップを併用し,60 例(91%)で閉鎖が可能であっ た . 閉鎖例において , 閉鎖術開始後食事開始までは中央値 6 日 (範囲 2-23)であった . ②内視鏡治療後遅発穿孔:25 例[食道:胃:十二指腸:大腸 5:11:7:2, 穿孔径中央値 5mm(範囲 1-30)]に対し,穿孔確認直 後に PGA シートを中央値 1 回(範囲 1-4)被覆し,全症例で閉 鎖が可能であった . 閉鎖術開始後食事開始までは中央値 10 日 (範囲 1-124)であった . ③瘻孔:45 例[交通臓器:胸腔 5, 縦隔 4, 気管支 10, 腹腔 6, そ の他 20)瘻孔径中央値 5mm(範囲 1-20)]に対して ,PGA シー トを中央値 2 回(範囲 1-10)使用し ,25 例(56%)で瘻孔閉鎖が可 能であった . 閉鎖術開始後食事開始までの期間は中央値 16(範 囲 1-222)日であった .
<結語> PGA シートは内視鏡治療の術中および遅発性穿孔に対し有 用であり,瘻孔の閉鎖に対しても一定の効果が期待できる
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