一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 Japan Gastroenterological Endoscopy Society

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第3回 A型胃炎の診断基準確立に関する研究会

2021年5月16日 1:20 PM - 4:50 PM

代表世話人

鎌田 智有 (川崎医科大学 健康管理学)

当番世話人

千葉 勉 (関西電力病院)

春間 賢 (川崎医科大学 総合内科2)

会期

2021年5月16日 13:20~16:50

会場

広島グリーンアリーナ(広島県立総合体育館)武道場 第 2 柔道場(第11会場)

プログラム

司会:千葉 勉 (関西電力病院)

   春間 賢 (川崎医科大学 総合内科2)

基調講演

AIGの診断基準となるGastrin・PG値の提案について

寺尾秀一

加古川中央市民病院 消化器内科

特別講演

自己免疫性胃炎(A型胃炎)の組織診断:成果と課題

渡辺英伸

PCLジャパン 

パネルディスカッション

テーマ:A型胃炎の診断基準確立に向けた残された課題

(発表8分、質疑応答2分、総合討論60分)

1 自己免疫性胃炎診断の現況と問題点について

  春藤譲治1)、青木利佳2)、岡本耕一、岡久稔也3)

  1)春藤内科胃腸科、2)とくしま未来健康づくり機構、3)徳島大学消化器内科

2 HP現感染を合併したAIG症例の診断について

  丸山保彦

  藤枝市立総合病院

3 自己免疫性胃炎における血清マーカー、低亜鉛血症の頻度について

  古田隆久1) 山出美穂子2)、鈴木崇弘2)、樋口友洋2)、谷伸也2)、岩泉守哉3)、濱屋寧2)、大澤恵4)、杉本健1)

  浜松医科大学医学部附属病院 臨床研究センター1)、第一内科2)、臨床検査医学3)、光学医療診療部4)

4 B型胃炎からの移行例と考えられた自己免疫性胃炎症例の検討報告

  伊原隆史

  医療法人新生会 伊原内科医院

5 自己免疫性胃炎初期病変の内視鏡像と組織像-自験例の検討

  小寺 徹

  宇治徳洲会病院 健診センター

 6 自己免疫性胃炎初期像と考える2例の報告

  岸野真衣子 枝野未來 藤井悠子 三角宜嗣 篠崎香苗 野中康一

  東京女子医科大学 消化器内視鏡科

 

抄録

基調講演

AIGの診断基準となるGastrin・PG値の提案について

寺尾秀一

加古川中央市民病院 消化器内科

附置研診断基準案の「病理無」の「確診」「疑診」の診断基準には、GastrinとPGが必須項目として提示されているが、まだその基準値は示されておらず早急に検討する必要がある。そのため当付置研で新たに、多施設共同研究「自己免疫性胃炎の診断基準に関わる血清ガストリン及びペプシノゲンI, II,I/II 比の基準値を検討するための、萎縮性胃炎患者を対象とした比較観察研究(UMIN000040053)」を実施した。

2021年1月末までに登録が完了した有効症例数は722症例(表)であった。

AIG確診例466例

a: 病理合致+自己抗体陽性 212例 

b: 病理不明+自己抗体陽性 111例 

a: CARP既登録 病理合致+自己抗体陽性 109例

b: CARP既登録 病理不明+自己抗体陽性 34例

AIG疑診例 35例

c: 疑い例:病理合致+自己抗体陰性 20例 

d疑い:病理合致+自己抗体未検査 2例 

e疑い:病理非合致+自己抗体陽性 13例 

 

非AIG例 221例

a: 病理非AIG +PCA(-)かつIFA(-)HP胃炎(除菌後含む) 20例

b: 病理不明+PCA(-)かつIFA(-)HP胃炎(除菌後含む) 115例

c: 病理非AIG +PCA(-)HP胃炎(除菌後含む) 68例 

d: 病理非AIG +PCA(-)HP不明 18例

 

集計の遅れもあり現時点(2021/2/8)ではまだGastrin値、PG 値ともに案を提示できる段階に至っていない。関連諸氏と議論を重ねたうえで、研究会当日には当付置研として一定のコンセンサスを得られるよう提案を提出したいと考えている。

 

特別講演

自己免疫性胃炎(A型胃炎)の組織診断:成果と課題

渡辺英伸

PCLジャパン

自己免疫性胃炎(AG)の従来の組織学的特徴を整理し、AGの組織診断基準を作成しましたので報告をします。また、AGの初期像の組織診断基準や組織学的鑑別診断にも言及し、最後に今後の病理学的課題にも触れることにします。

 ★組織学的特徴

  ①胃底腺細胞の動態(高度萎縮)(重要)。免疫染色は必須。

   ・壁細胞(最重要の所見):著減(少数残存する壁細胞は変性・萎縮性)・消失

   ・主細胞:著減・消失。初期では頸粘液細胞化生偽幽門腺化生。次いで、幽門腺化生

   ・頚粘液細胞:初期に主細胞の頸粘液細胞(偽幽門腺)化生を起こし、粘膜深部で

    増加。次いで 幽門腺化生となり、これが小腸型腸化生へ変化。

   ・化生幽門腺:増加~減少(小腸型腸化生へ移行。これはH. pylori感染例で高度)

   ・粘膜高の低下(腺管の短縮)と胃小窩の延長。

      胃小窩長/腺管長 ≧1.0(頚粘液細胞過形成部では<1.0)

  ②Enterochromaffin-like (ECL) 細胞過形成:(+)。腺管内>腺管外

   ・腺管内(intraglandular)過形成:(+)

   ・腺管外(extraglandular)過形成:(+)~(-)

  ③前庭部粘膜のガストリン細胞の過形成(幽門腺粘膜):(+)、腺管内>腺管外

  ④胃底腺粘膜の腺部での慢性炎症細胞浸潤:リンパ球(CD3・CD8陽性Tリンパ球)、

   好酸球、形質細胞、まれに陰窩膿瘍(H. pylori陰性でも。初期AGに多い)

 ★組織診断基準:上記項目のうち、①と②が陽性であればAGと診断。

 ★初期病変の組織診断基準

①正常胃底腺粘膜と体部胃炎が混在する場合。胃底腺部(特に、壁細胞・頸粘液細胞層)はほぼ正常に近い高さを保つが、慢性炎症細胞浸潤(CD3+リンパ球が多い)を伴い、残存する壁細胞は変性を示し、ECL細胞過形成あり。

②頸粘液細胞過形成を伴う場合。胃底腺粘膜の背は低くなっているが、胃底腺部に頸粘液細胞が過形成している。壁細胞はほとんど消失か陰性。ECL細胞過形成あり。

 ★組織学的鑑別診断:体上部大弯の生検標本で壁細胞や主細胞が消失し、(偽)幽門腺化生が高度の萎縮性体部胃炎。

 ★生検部位と個数:前庭部は小彎と大弯。体部は体上部大弯。胃角と体上部小彎。5個。他に腫瘍(様)病変

 

パネルディスカッション

PD-1

自己免疫性胃炎診断の現況と問題点について

春藤譲治1)、青木利佳2)、岡本耕一、岡久稔也3)

1)春藤内科胃腸科、2)とくしま未来健康づくり機構、3)徳島大学消化器内科

【目的】自己免疫性胃炎(以下AIG)はHp感染胃炎と同様に、胃癌発症の母地となる慢性萎縮性胃炎を来す重要な疾患であるが、いまだに診断基準が明確に確定されていない。今回は、AIG診断基準を作成するため内視鏡所見、組織所見、胃自己抗体等でAIGと確診された症例でのガストリン値、ペプシノゲン値を検討し両者の最適な基準値について検討した。

【対象と方法】対象は、2013年10月1日~2020年12月31日までの期間に1人の内視鏡医が連続して行った上部消化管検査6,710例(重複例を除く)のうち、内視鏡所見、組織所見、胃自己抗体陽性(PCAまたはIFAいずれかが陽性)を満たすAIG確診例51例を対象とした。生検部位は幽門前庭部大弯、胃体上部大弯、前壁の3か所施行した。高ガストリン血症の基準500 pg/ml以上、低ペプシノゲン血症の基準をPGⅠ値20以下かつPGⅠ/Ⅱ比1.5以下とした場合の妥当性について検討した。

【成績】AIG確診例の平均年齢は67.4歳(40-80)、男女比は16対35で女性に多かった。随伴病変としては、胃癌4例(7.8%)、NET4例(7.8%)、腺腫2例(3.9%)を認めた。PCA陽性率は96.0%(49/51)であった。PCAは20倍以上47例、10倍2例、10倍以下2例、10倍以下はIFA陽性であった。また、PCAは再検査により10以下から40、20、10倍に増加した例を1例ずつ認めた。IFA陽性率は48%(23/48)であった。IFAは初回検査で不確定を5例認めた。5例中3例は再検査が施行出来2例は陽性であった。PGⅠの中央値は、5.5ng/ml(3.4-9.8)で94%の症例がPGⅠ20以下であった。PGⅠ/Ⅱ比の中央値は、0.8(0.5-1.2)で90.2%の症例がPGⅠ/Ⅱ比1.5以下であった。血清ガストリンの中央値は、2,093pg/ml(1,289-4,155)、最低値は、125pg/mlであり、この1例以外は500 pg/ml以上(98.0%)であった。

【結論】AIG診断基準としてガストリン値500 pg/ml以上、PGⅠ値20以下かつPGⅠ/Ⅱ比1.5以下は妥当である可能性が高い。

PD-2

HP現感染を合併したAIG症例の診断について

丸山保彦

藤枝市立総合病院

HP感染既往や現感染のAIGは少なからず存在する。HP感染の影響が大きいと内視鏡所見ばかりでなく血液、組織所見も修飾されてしまう。HP現感染AIG症例の診断にPCA、PG、GがHP既感染や未感染症例と同様に適応できるのかは不明である。

(対象)AIGの定義は内視鏡所見、PCA20倍以上もしくはIFA陽性、組織学的所見のすべてをみたす症例とした。AIG90例のうちHPAb<3を未感染(A群65例)とし、HPAb陰性高値で未除菌と、泥沼除菌(除菌前にHP感染が確定できない症例をふくむ)の16例を既感染群B群とした。HP現感染で除菌を行った症例9例(HPAb≧10で除菌後有意な低下:7例、便中抗原:1例、便中抗原とHPAb:1例)をC群とした。(検討項目)1)C群の除菌前後のPCA,G,PGの変化、2)A、B群とC群(除菌前、4M後、4年後)のPCA,G,PGの比較、3)C群のうち除菌前後で多点生検を行った2症例の病理学的変化(結果)1)除菌後G上昇、PG1,2低下が見られるが短期では有意な変化は無く3年後にPGの有意な低下を認めた。2)除菌前C群はA群、B群よりPG1,2が高くGが有意に低かった。除菌後短期ではPG1の差は残り4年後に差はなくなったが、GはまだA群より有意に低値だった。3)組織学的にHP現感染AIGでは胃腺深部の炎症細胞浸潤の優位的分布が不明瞭で、胃底腺が軽度に萎縮にとどまりAIGの診断が困難であった。除菌後には比較的短期間で胃腺部有意の炎症が認識しやすくなるが萎縮は急激ではなく徐々に進んでいた。(結語)HPの感染を伴ったAIGはGが低く、PGでの判定や病理学的な評価は除菌後ある程度時間をおいた時点で行うのがよいと考えられた。これらはHP感染AIGの萎縮が軽度であることや病態そのものが非感染例と異なることを反映しているのかもしれない。

PD-3

自己免疫性胃炎における血清マーカー、低亜鉛血症の頻度について

古田隆久1) 山出美穂子2)、鈴木崇弘2)、樋口友洋2)、谷伸也2)、岩泉守哉3)、濱屋寧2)、大澤恵4)、杉本健1)

浜松医科大学医学部附属病院 臨床研究センター1)、第一内科2)、臨床検査医学3)、光学医療診療部4)

自己免疫性胃炎(AIG)は抗胃壁細胞抗体や抗内因子抗体などの自己免疫機序により、胃体部を中心とした胃底腺領域にびまん性の慢性炎症を引き起こして高度な萎縮性変化を引き起こす。AIGの多くは無症状であり、悪性貧血等の合併症を呈したり、上部消化管内視鏡検査をうけなければ見過ごされてしまう可能性が高い。血液検査としては、高度の胃体部の萎縮を反映して血清Pepsinogen IやPG I/II比が低下し、胃酸分泌低下を反映して高ガストリン血症を呈することは知られており、これらは診断の契機となりやすいが、一般臨床の場で測定される頻度は低い。胃酸分泌の低下はビタミンB12をはじめとするビタミン類やミネラル等の栄養素の吸収を低下させることが知られている。そこで、自己免疫性胃炎患者での血清ガストリン値やペプシノゲンIに加えて、栄養素を検討し、診断の契機になり得るかを検討した。

対象:浜松医科大学附属病院にてAIG(APCA and/or AIFA陽性+胃体部萎縮)と診断された症例の血液検査を後ろ向きに調査し、同病院の基準値と比較し異常値の頻度を検討した。複数回の測定があった場合には最低値を用い、すでに治療介入のある症例の値は用いなかった。

結果:血清鉄(男性:40-180µg/ml、女性:40-200 µg/ml)を測定した84例で正常下限未満を示したのは5例(6.0%)であった。フェリチン(男性:13-277 pg/ml、女性:5-152 pg/ml)は60例中14例(23.3%)で下限値未満を示した。ビタミンB12(180-914 pg/ml)は、81例中41例(50.6%)で下限値未満を示した。亜鉛(80-130 µg/ml)は、70例中56例(80.0%)で下限値未満を示した。血清ガストリン (30-140 pg/ml)は99例中96例(97.0%)で正常上限以上であった。血清PG Iは105例中99例(94.3%)で30 ng/ml未満を呈し、PG I/II比は105例中102例 (97.1%)で3.0以下、97 例 (92.4%)で2.0以下を呈した。

考案・結語:血清ガストリン値やペプシノゲンIやI/II比は、高度萎縮と胃酸分泌低下という自己免疫性胃炎の特徴をよく反映しており、適切な基準値を設定することでAIGの拾い上げに有用であると考えられた。一方で、自己免疫性胃炎における鉄欠乏の頻度は高くなく、ビタミンB12低値も半数程度であった。しかし、低亜鉛血症は80%の症例に認められ、低亜鉛血症を呈する場合の鑑別疾患としてAIGを考慮すべきであると考えられた。

PD-4

B型胃炎からの移行例と考えられた自己免疫性胃炎症例の検討報告

伊原隆史

医療法人新生会 伊原内科医院 

本邦では特に高齢者で、H.pylori (以下Hp)感染歴を有している場合が多く、自己免疫性胃炎(以下AIG症例)でも、過去のHp感染歴や自然除菌の経過の可能性を考慮し診断すべき症例も存在する。今回提示の症例は胃自己抗体陽性、高ガストリン血症、内分泌細胞過形成像などの病理組織学的所見からAIGと診断したが、逆萎縮像とは言い難く、B型胃炎の経過を示していた。これらの症例はHp感染胃炎を主体として経過し、AIGの経過はその進行よりも遅発していたと考えられる。症例①~⑤は過去の内視鏡像で木村・竹本分類の萎縮境界を明瞭に認め、その進行を認めた。①:C3→O3→O4(観察期間17年)、現在のHp感染診断は血清抗体陰性高値、便中抗原と鏡検法陰性。②:C3→O2(同11年)、Hp現感染。③:C3→O2→O4(同15年)、Hp現感染。④:O3→O4(同11年)、Hp感染診断は全て陰性。症例⑤はO4であり、組織学的には壁細胞を含む胃底腺残存部分を認めるB型胃炎像であったが、粘膜深層側のリンパ球浸潤像が目立ち、次年度は壁細胞の減少を認めた。Hp感染は過去が陽性、現在が陰性の自然除菌例。症例②、④、⑥は十二指腸潰瘍や胃潰瘍瘢痕像を認めた。症例⑦、⑧は前庭部を含む汎萎縮例で、症例⑦のHp感染診断は血清CagA抗体のみが陽性で、他検査法は全て陰性であった。症例⑨は除菌後2年であるが、現段階では逆萎縮像には至っていない。さらなる症例の集積解析が必要であるが、純粋なAIGとしての病型以外に、Hp感染に続発するAIG(二次性AIG)の病型の可能性も考慮すべきであると考えられた。逆萎縮像に乏しい非定型的なAIG症例群を診断基準に含めた場合、B型胃炎からの移行中途段階と考えられる症例との線引きが課題であると考えられた。

PD-5

自己免疫性胃炎初期病変の内視鏡像と組織像-自験例の検討

小寺 徹

宇治徳洲会病院 健診センター

【背景】自己免疫性胃炎(AIG)は胃体部萎縮が進行する過程で様々な内視鏡像を呈すると考えられるが、初期病変の内視鏡像の報告は未だ少ない。一方、病理組織像は既に報告されている(Stolte et al. 1992, Torbenson et al. 2002)。

【方法】当院でAIGと診断した症例のうち、内視鏡的な高度萎縮を胃体部小彎、大彎に均等に認める症例をAIG典型例とし、非典型例を初期AIGとした。初期AIG 7例を対象として、内視鏡像、病理組織像、抗胃壁細胞抗体(PCA)、H. pylori(Hp)感染状態を検討した。

【結果】1)平均年齢、男女比は61.3歳(45~71歳)、5:2であった。2)PCA抗体価は80倍1例、160倍1例、320倍4例、640倍1例であった。3)4例は未感染(除菌歴なし、Hp抗体価<3.0)、3例は除菌歴あり(既感染1例、不確定2例)であった。4)内視鏡像は、胃体部小彎に高度萎縮を伴う5例で大彎の軽度~中等度萎縮を背景に多発するpseudopolypを認めた。既感染例では除菌前の内視鏡像は通常のHp感染胃炎と同様であったが、除菌後にpseudopolypが顕在化した。pseudopolypを伴わない2例では大彎、小彎ともに非~軽度萎縮であり、そのうちの1例でRAC様の発赤と胃小区腫大を認めた。5)病理組織像は、胃体部大彎に粘膜深層優位のリンパ球浸潤、胃底腺破壊、偽幽門腺化生、ECL細胞過形成を認め、pseudopolypには残存胃底腺周囲へのリンパ球浸潤、壁細胞偽過形成を認めた。

【結語】胃体部大彎に多発するpseudopolypは初期AIGの内視鏡像の一つと考えられるが、今後多数例での検討が必要である。病理組織像は過去の報告の通りである。

PD-6

自己免疫性胃炎初期像と考える2例の報告

岸野真衣子 枝野未來 藤井悠子 三角宜嗣 篠崎香苗 野中康一

東京女子医科大学 消化器内視鏡科

症例① 51歳女性、日本人。健診の内視鏡検査で胃体部の発赤を指摘され精査目的で当科に紹介となった。当科で施行した内視鏡検査では、前庭部に萎縮は認めず、体部には広範囲に細かく比較的均一な胃小区が、発赤調に捉えられた。体部大弯の生検病理組織検査では、局所的に粘膜深部のリンパ球浸潤を認めた。免疫染色ではリンパ球浸潤を認めた部位においてのみ壁細胞障害があった。血液検査で抗壁細胞抗体320倍、ガストリン値820pg/ml、PG1 72.7 mg/ml、橋本病の併存などから、本症例の内視鏡所見はAIGの初期像を示すものと考えた。

症例② 73歳男性、英国人。十二指腸下行部の腺腫に対して年に一度の内視鏡検査を数年来施行していた。2年前の定期検査時、胃体部全体に発赤調にやや腫脹した胃小区を認めた。体部大弯からの生検組織を施行したところ、局所的に粘膜深部にリンパ球浸潤を認めた。症例①の所見と類似していたことから、採血検査を行ったところ、抗壁細胞抗体320倍、ガストリン値510pg/ml、PG1 86.1 mg/ml、抗TPO抗体陽性、抗Hp−IgG抗体3未満であり、長年気づかなかったが、本例もAIG初期症例と考えた。

症例①、②とも、ビタミンB12や鉄の欠乏は認めず、AIGによる機能障害は認めていない。

無酸、高度萎縮性胃炎を伴わないAIG初期像が市民権を得るためには、まずは、いわゆるA型胃炎とは別のカテゴリーとして症例を蓄積し、特徴的な所見を明らかにしていく必要があると考える。

 

詳細

日付:
2021年5月16日
時間:
1:20 PM - 4:50 PM
イベントカテゴリー:

会場

広島総合体育館
中区基町4番1号
広島市, 広島県 730-0011 日本
+ Google マップ
Phone
082-228-1111
会場 のウェブサイトを表示する
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