一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 Japan Gastroenterological Endoscopy Society

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JGES倫理指針Q&A

※下記は,日本腹部救急医学会、日本消化器外科学会の倫理指針Q&Aを参考に作成しています.

Q1. オプトアウト(情報の公開と研究対象者の拒否権の保障)とはどんなものを指しますか?
A1.オプトアウトとは,その研究の概要を実施医療機関等の掲示板やホームページなどに公開して,研究対象者が自身の試料もしくは情報をその研究に利用されることを拒否する機会を保障することを指します.オプトアウト文書には下記の項目を記載することが求められています. ①試料・情報の利用目的及び利用方法(他の機関へ提供される場合はその方法を含む.)
② 利用し,又は提供する試料・情報の項目
③ 利用する者の範囲
④ 試料・情報の管理について責任を有する者の氏名又は名称
⑤ 研究対象者又はその代理人の求めに応じて,研究対象者が識別される試料・情報の利用又は他の研究機関への提供を停止すること
⑥ ⑤の研究対象者又はその代理人の求めを受け付ける方法
Q2. オプトアウトの開示はいつまで行う必要性がありますか?
A2.研究開始前に開示し,拒否の機会を保障する必要があります.研究終了時までご提示いただく必要があります.
Q3. 当院には倫理審査委員会がありません.学会発表はできませんか?
A3.以下の何れかに該当する研究は倫理審査委員会の審査を受けることなく発表は可能です.
①動物実験や一般に入手可能な細胞(iPS 細胞,組織幹細胞を含む)を用いた基礎的研究.
②9例以下をまとめた症例報告(但し,症例数に関係なく診療の有効性・安全性を評価するなど研究性のあるものは除く)である.
③法令に基づく研究である(臨床研究法,再生医療等安全性確保法は除く).
④既に学術的な価値が定まり,研究用として広く利用され,かつ,一般に入手可能な試料・情報を用いた研究である.
⑤既に匿名化されている試料・情報(特定の個人を識別できない状態に加工され,対応表がどこにも存在しないもの)を用いた研究である.但し,体細胞由来のゲノムデータ解析は除く.
⑥既に作成されている匿名加工情報※又は非識別加工情報(※認定事業者等によって一定のルールの下で加工された情報)を用いた研究である.
⑦論文や公開されているデータベース,ガイドラインのみを用いた研究である.
上記以外は,必ず倫理審査委員会の審査を受け施設の長の許可が必要です.委員会を常設していない施設からの研究発表については,他施設からの倫理審査を受け付けている委員会で審査を受けて下さい.多施設共同研究の場合は,所属する施設の施設長の許可があれば,代表施設の倫理審査委員会での一括審査が可能な場合もあります.その場合は,所属施設での個別審査は必ずしも必要ありません.
尚,日本消化器内視鏡学会では倫理審査委員会が設置されていない施設で,自施設のみで実施する観察研究については倫理審査を受け付けています.
参考:https://www.jges.net/medical/procedure/ethical-review-of-abstract-submission/trustee-of-the-ethics-review
Q4. 包括同意とはどんな同意を指しますか?
A4.診療の一環として取得された情報や検体(試料)余剰分を,将来実施される様々な研究に利用させていただくことを文書で同意いただくものを指します.但し,それらの試料を用いて実際に研究を行うに際しては,改めて倫理審査委員会の審査に基づく施設長の許可と研究対象者へのオプトアウトが必要です.
注)試料を用いてゲノム解析を行う場合は,同意を受ける際にゲノム解析を行う旨に関する事項の同意を受けていることが原則必要です.
Q5. 本消化器内視鏡学会では臨床研究の倫理審査は行ってもらえるのでしょうか?
A5.本学会では,倫理審査委員会が設置されていない施設で,自施設のみで実施する観察研究については倫理審査を受け付けています.
参考:https://www.jges.net/medical/procedure/ethical-review-of-abstract-submission/trustee-of-the-ethics-review
Q6. 各施設の規程等と日本消化器内視鏡学会の指針が同一でない場合,どちらの内容を優先したらよいでしょうか?
A6.本学会における発表に際しては,本学会の指針に従っていただく必要があります.但し,研究の遂行に関しては各施設の規程等に従って下さい.最終的な発表内容に関しては,発表者個人とその施設の長が負うものとなります.
Q7. 所属施設長とは部長の認可でよいですか?
A7.大学病院などであれば学長もしくは規定により権限を委任された,病院長,センター長,学科長,学類長などであり,その他の医療施設であれば所属する法人の長であるセンター長,施設長,組合長,病院長などに該当するため,規定により権限を委任されていない所属部署の部長の認可では無効となります.
Q8. 9例以下をまとめた介入を伴わない症例報告は倫理審査委員会の審査が必要ですか?
A8.10例以上をまとめた症例集積研究は倫理審査委員会の審査が必要です.(症例報告の症例数に関しては各施設や学会によって扱いが異なる場合があります.)
また,「医学系指針」にも個別の症例を報告すること(いわゆる症例報告)は指針の対象にならないことが記載されていますが,9例以下であっても治療例と非治療例の比較を行ったり,有効性・安全性の評価を行ったり研究性のあるものは少数例でも倫理審査委員会の審査が必要となります.
Q9. 過去に採取した生検検体を用いて研究を実施することを検討しているが,当院では全ての内視鏡検査を行う際に,生検検体の利用を含めて検査結果を研究に用いることがある旨を記載した同意説明文書にサインをいただいているので,新たな手続きなく生検検体を研究に用いることに問題はないと理解しているが間違いないか?
A9.診療の一環として取得された情報や検体(試料)余剰分を,研究者や研究課題を特定せずに,将来実施される様々な研究に利用することについて文書で同意いただくものを包括同意と言います.包括同意は具体的な研究内容を明示していないため,特定の研究に試料・情報を用いることに対して同意を得たことにはなりません.個別の研究に試料・情報を用いる場合は改めてオプトアウトを行う必要があります.(QA4参照)
Q10. 症例報告の際に発表スライドに内視鏡時の動画を含めたいのですが,その場合,対象患者の文書同意が必要ですか?
A10.症例報告は倫理指針の適用外ですが,「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス(平成29年4月14日,個人情報保護委員会,厚生労働省)」を遵守し,個人情報の保護に配慮する必要があります.個人を特定することができないような配慮(名前やIDの削除,顔や個人の特徴が映らないようにするなど)がなされている場合は,文書同意は必須ではありません.
ただ,プライバシー等の観点からも可能であれば,文書にて同意を得ているとより良いと考えます.
Q11. 採血は侵襲に当たりますか?
A11.診療で採血した検体の余剰分を用いる場合は,「侵襲なし」としてよい. 診療として行う採血の際に,研究目的で上乗せして採血量を増やす場合や,研究目的のみで採血をする場合であっても,一般健康診断で行われる程度の採血であれば,「軽微な侵襲」と判断してよい. 但し,明らかに研究対象者の身体に影響があると考えられる採血量の増加を伴うものや,一般健康診断で行われる採血量を超えるものに関しては,「侵襲あり」と判断されます.
Q12. 大腸癌再発症例における現在未承認薬の抗 PDL-1(programmed cell death ligand-1)抗体薬を使用した症例をまとめて報告したいのですが倫理審査会の承認は必要ですか?
A12.薬剤の適応外使用や未承認薬を使用する場合には以下のとおりです.
1)研究目的ではなく,自由診療や高難度医療等,施設の規定に則り施設長の許可を得て行った症例を,後ろ向きにまとめる場合は「観察研究」としての倫理審査委員会の承認を得て下さい.但し,症例報告として発表する場合は倫理審査委員会の審査は不要です.
2)研究としてこの治療を実施する場合は,「特定臨床研究」に該当し「臨床研究法」の対象となります.法に基づいた手続きを経てから実施して下さい.
Q13. 関連施設10数箇所からデータを提供いただき,それを取りまとめて報告することを考えていますが,その場合,報告者の所属する施設での倫理審査委員会の承認書があれば,他の施設での審査は不要と考えて良いですか?
A13.研究の実施体制により対応が異なります.
1)関連施設を共同研究機関とする場合(論文では共著者になり得ます)
 各施設に研究責任者を置き,個々の施設での倫理審査が必要です.倫理審査は,代表施設の倫理審査委員会での一括審査が可能な場合もあります.
2)関連施設を試料・情報の提供のみを行う機関(研究協力機関)とする場合(論文では謝辞に記載となります)
関連施設の倫理審査は不要で,提供元の施設の長が把握していれば情報を取得することは可能です(研究に関しての通知または公開が必要な場合もあります).但し,研究実施機関の研究責任者は,提供元の施設が適正に試料・情報を提供するために必要な体制及び規程の整備が行われていることを確認する必要があります.
※匿名化が困難な情報が含まれる場合は倫理審査が必要となります.
Q14. 以下の研究計画の侵襲・介入の有無について教えて下さい.
1)過去に大腸癌の患者に適応外の抗癌剤を用いて治療した群と標準治療群とを比較した結果を取りまとめて報告する.
2)あるサプリメントの癌抑制効果を検証するために,サプリメント服用群と非服用群に無作為に群分けして群間比較を行う.
3)人間ドックの上部消化管内視鏡検査受診者のうち,研究参加に同意を得られた方のみを対象に,研究目的に1箇所生検を行い,特殊染色を行う.
A14.

1)について
 すでに医療として実施された臨床データをとりまとめる研究ですので,研究対象者への侵襲はなく,研究対象者の治療方針に影響を与えるものではないので,群間比較はおこないますが介入研究とはなりません.(侵襲なし・介入なし)

2)について
 患者の行動を制限する(無作為にどちらかの群に割付られること)ので,介入にあたります.侵襲についてはサプリメントとして扱う場合は侵襲なしと思われますが,薬効があるものと考える場合は侵襲に当たることも考えられます.(侵襲なし/あり,介入あり)
 何れにしても,癌抑制効果という有効性評価を行う介入研究ですので「臨床研究法」の対象となります.研究のリスクのみでなく研究結果が医療現場に与える影響の大きさによって該当する規制が異なります.

3)について  医学系指針上「通常の診療を超える医療行為であって研究目的で実施するもの」は介入とすると記載されていますが,「通常の診療を超える医療行為」とは未承認・適応外の医薬品または医療機器の使用,その他の新規の医療技術による医療行為を指します.そのため,生検は通常の診療を超える医療行為には当たらないとみなされますので一般的には介入なしと考えられます.
追加の生検については,対象者への侵襲があると考えます.(侵襲あり,介入なし)

Q15. 患者の試写体(顔写真)などを発表で使用したいのですが,事後で同意を得る必要がありますか?
A15.症例報告は倫理指針の適用外ですが,「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス(平成29年4月14日,個人情報保護委員会,厚生労働省)を遵守し,個人情報の保護に配慮する必要があります.本ガイダンスでは,「特定の症例や事例を学会で発表したり,学会誌で報告したりする場合等は,氏名,生年月日,住所,個人識別符号等を消去することで匿名化されると考えられるが,症例や事例により十分な匿名化が困難な場合は,本人の同意を得なければならない」と記載されています.
Q16. 続報のような発表に関しては,再度倫理審査を受ける必要性がありますか?
A16.研究計画書に記載された内容の範囲であれば再審査の必要はありません.
Q17. 患者の癌組織を利用して,新たに発見された癌関連遺伝子群の発現を検証した発表を行いたいのですが,倫理審査委員会の審査は必要ですか?
A17.倫理審査委員会あるいはそれに準じた諮問委員会の審査に基づく施設長の許可が必要です.また同意取得(インフォームド・コンセント:IC)またはオプトアウトも必要です.
Q18. 公開されているデータベース,ガイドラインなどをまとめた研究発表,あるいは法令に基づく研究発表は倫理審査委員会での審査を受ける必要がありますか?
A18.公開されているデータベース,ガイドラインには個人情報は含まれませんので審査を受ける必要はありません(但し,引用したデータベース・ガイドラインは明記する必要があります).但し,公開されているデータベースであっても個人情報に再連結するようなことを行う研究に関しては倫理審査委員会の審査が必要になります. 臨床研究法,再生医療等安全性確保法を除いた法令に基づく研究発表は倫理審査委員会の審査は不要です.
Q19. 既存のヒトの検体を使用した研究発表に関しては,同意書はすべての患者に必要ですか?
A19.匿名化されている検体(特定の個人を識別することができないものであり,対応表が作成されていないもの,あるいは存在しないもの)場合の使用はインフォームド・コンセント:ICは不要です.
上記以外の場合であって,当該研究の目的と相当の関連性がある別研究等で既に同意を取得済みのものであれば,通知・公開のみで同意は不要です.それ以外の研究は,原則ICが必要ですが,オプトアウトでICに変えることが可能です.
上記何れの場合でも,新たに個人識別符号に該当するゲノムデータを取得する場合は,原則文書同意が必要となります.
Q20. 培養細胞を用いた基礎的研究は倫理審査委員会の審査が必要ですか?
A20.一般に入手可能な細胞等を培養する研究は倫理審査委員会の審査は不要です.患者さんから得られた試料を用いて培養し研究する場合は,倫理審査委員会の審査が必要です.その場合,文書による同意が必要です.
Q21. ヒト ES 細胞,ヒト iPS 細胞,ヒト組織幹細胞を利用した臨床研究は倫理審査以外に何が必要ですか?
A21.「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成 25 年法律第 85 号)」を遵守する必要があります.
Q22. 「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」の対象となる研究とはどのようなものを指しますか?
A22.提供者の個体を形成する細胞に共通して存在し,その子孫に受け継がれ得るヒトゲノム・遺伝子の構造又はそれに由来する機能などを,試料・情報を用いて明らかにしようとする研究を指します.即ち,生殖細胞系列遺伝子変異やその多型性 (germline mutation or polymorphism) を解析する研究を指します.
Q23. 倫理委員会を通さず発表した場合には,どんなペナルティが科せられますか?
A23.本学会としては,学会員が常に倫理指針に則って真摯に行動されていることを前提にしています.倫理違反は,基本的に研究者及び施設の長が責任を負うことになります.違反の事実が判明した場合,学会倫理委員会の審議対象になることがあります.
※なお,「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(文科省・厚労省)」では,以下の場合は重大な指針不適合となり,施設の長は厚生労働大臣(大学の場合は文部科学大臣にも)への報告が義務付けられています.
①倫理審査委員会の審査又は研究機関の長の許可を受けずに,研究を実施した場合
②必要なインフォームド・コンセントの手続を行わずに研究を実施した場合
③研究内容の信頼性を損なう研究結果のねつ造や改ざんが発覚した場合
Q24. 発表する際に,自分の研究が倫理指針上どのカテゴリーの研究に属するか,あるいは倫理審査を受けたかどうかを提示する必要はありますか? 利益相反(COI)のようなスライドを作成して提示する必要はありますか?
A24.現時点では Medical ethics をご提示頂く予定は有りません.但し,御自身の発表内容が倫理指針のどのカテゴリーに属するのかを充分理解した上で本学会における発表に臨まれる事は“ヒトを対象とした医学系研究”を行う者として当然の基本姿勢であり,本学会会員に求められる基本ルールであることをご理解下さい.
Q25. 一つの研究として公表する予定で計画した研究を,いくつかの小研究に分割して学会発表や論文投稿することはできますか?
A25.一つの研究として発表可能な成果を,複数の小さな研究に分割して公表することは「サラミ出版」や「サラミ法」と称されます.この方法は業績の水増しととらえられるのみならず,研究全体の意義が把握しにくくなり他の科学者の無用な手間暇を掛けさせるといった点から,不適切な発表方法として 日本学術振興会発行の「科学の健全な発展のために」に明記されています.
(参考資料)
独立行政法人 日本学術振興会「科学の健全な発展のために」編集委員会編「科学の健全な発展のために~誠実な科学者の心得~」 2015 丸善出版株式会社
Q26. 有効性や安全性の評価を目的とせず,医師又は患者から,いわゆる「医療機器の使用感」について意見を聴く調査は,臨床研究法の対象となる臨床研究に該当しますか.
A26.該当しません.
Q27. 適応外使用であっても,「保険診療における医薬品の取扱いについて(通称:55年通知)」(昭和55年9月3日付け保発第51号厚生省保険局通知)が適用され,保険診療として取り扱われることがある医療であっても,そうした用法等で用いる医薬品等の安全性及び有効性を評価する臨床研究は,「特定臨床研究」に該当しますか.
A27.「特定臨床研究」該当し,臨床研究法遵守義務となります.
Q28. 学会に倫理審査(迅速審査)を申請するにあたって,臨床研究教育(倫理を含む)に関する受講証が必要なのですが,所属施設では実施されていません.どこで受講することが出来ますか.
A28.本学会への申請にあたっては,学会で開催されるセミナーまたは以下のe-ラーニングのいずれかの受講をお願いいたします.
ただし,セミナープログラムに研究倫理に関するセッションが含まれていない場合は認められません.
また,本学会以外主催のセミナー等における受講証の場合は,当該セミナー等のプログラムの写しを求める場合があります.
なお、受講にあたって費用が発生する場合がございますが,本学会からの費用補助はございませんこと,ご了承いただきますようお願い申し上げます。
①ICRweb「臨床研究の基礎知識講座(旧 臨床研究入門初級編)」
②日本学術振興会「研究倫理eラーニングeL CoRE」
③APRIN eラーニングプログラム「eAPRIN」(旧 CITI Japan)

2019年5月改定