一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 Japan Gastroenterological Endoscopy Society

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寄稿:地方からニューヨークへ 米国がんセンタースタッフ就任までの道程(西村誠先生)

寄稿:メモリアルスローンケタリング癌センター消化器内科 西村誠

はじめに

 この4月末より、ニューヨークにありますメモリアルスローンケタリング癌センター(MSKCC)の消化器内科に上級医として入職しましたのでご報告致します。メモリアルスローンケタリング癌センターは1884年に設立された歴史のあるがんセンターで、全米で47あるNational Cancer Institute(NCI)の一つとして指定されています。マンハッタンのアッパーイーストに研究所とともに位置しており、通りを介してワイルコーネル大学医学部と隣接し、スタッフはワイルコーネルの肩書も得るなど密接な関係にあります。同じマンハッタンにはコロンビア大学やニューヨーク大学、マウントサイナイ病院など名門病院がひしめいており、当院は最古のがんセンターとして多くの患者を受け入れています。メインホスピタルの他にマンハッタン内に24個の建物を要しており、職員のためのシャトルバスが走り回っています。セントラルパークまでは徒歩15分程度の距離で、治安も極めて安全な場所に位置しています。

メモリアルスローンケタリング癌センター消化器内科

 当科はチーフのマーク・シャットナー医師を筆頭として12名の上級医と6名のフェロー、1名のアドバンスドフェローで構成されており、上級医はそれぞれが独立して外来と内視鏡を行ってます。アメリカの卒後教育では医学部卒後3年間のレジデンシーの後に3年間のフェローシップを行って消化器内科全般および内視鏡手技を習得しますが、さらに希望者は1年間のアドバンスドフェローとしてEMR、ERCP、EUS-FNA、ラジオ波アブレーションなどの治療内視鏡を習得します。一般にアメリカでは胃癌が少ないことはよく知られていますが、当院は家族性胃癌が非常に多く、またFAPやリンチ症候群の患者さんも多いのが特徴で、頻回のサーベイランスを行っているために表面型腫瘍や早期癌も多く見つかっています。その他がんセンターだけあって、他の腫瘍で治療中の患者さんの悪性胆道狭窄や胆管炎、消化管狭窄のコンサルトと治療内視鏡、またアメリカならではとしてバレット食道癌のラジオ波治療やPDTなどの治験、面白いところでは胆管癌に対するラジオ波治療の研究が行われています。

17名との面接試験

 当院ではこの数年かけてESDが出来る医師を探していましたが、2017年1月に田尻久雄理事長から、スローン ケッタリング癌センター(MSKCC)からESDのエキスパートをスタッフとして採用したいというリクエストがきているので、渡米する意思はありませんか?とお電話を頂き、私がインタビューを受けることになりました。まずはシャットナー医師からSkypeでの電話インタビューがあり、その後2017年5月4日と5日に消化器上級医と肝臓外科・胃外科・病理のチーフなど合計11名との面接。そこでは全員からOKが出たそうで、次に7月26日に再度渡米し胸部外科・大腸外科・そして院長など合計6名との面接。すべての面接と面接員からの結果が出そろったのちに君を採用する、との連絡を頂きました。が、そこからが1冊の本にかけるほどの長い長い免許手続きの始まりでした。

NY州医師免許発行に至るまで

 アメリカの医師免許は全米で共通のものは存在せず、通常はUSMLEを受けてから州での手続きになります。NY州はカリフォルニアと並び非常に競争率が高いとされていますが2007年から2009年までのカリフォルニア大学でのフェローの経験が重視され、今回はスローンケタリングからの招聘としてNY州医師免許が交付されることになりました。

 2回目の渡米とは言え、免許取得には相当の労力を要しました。手続きなどのやり取りで田尻理事長とは99通の、またスローンケタリングとは465通のメールのやり取りを要したことが手続きの大変さを物語っており、2017年1月から始まり実際にNY州医師免許そのものが交付されたのは2018年5月ですので1年4か月要したことになります。

 NY州医師免許申請のためには①テキサスにあるFSMB(連邦医師免許ボード)による書類審査を通過後に、②NY州による書類審査が必要で、今回さらに③スローンケタリングによる書類審査、の3段階で、それにビザ(特殊技能ビザ;O-1ビザ)の手続きも加わり、山のような書類との格闘でした。推薦状はO-1ビザの推薦状およびスローンケタリングへの推薦状がそれぞれ別の先生方から5-6名ずつ、在職証明は初期研修を含め全ての病院の所属長や院長名での英文証明書をNY州に直接、また同様に内科学会や内視鏡学会、出身大学である自治医大および厚生省などから専門医や卒業証明書、医師免許英文証明をNY州に直接、さらに臨床経験証明の英文レターを公証人役場で証明、および自分の記入した書類もアメリカ大使館で領事による証明、など本当に数十人の方々に英文証明書を頂きました。

 その後O-1ビザが降り、4月17日に渡米の運びとなりました。渡米後も州の保険医申請や麻薬手続き、院内の合計17個のe-learningなどが続き、NY州医師免許が交付されたのが5月21日、そして記念すべき1例目の内視鏡を6月6日に行うことが出来ました。今後はESD部門の立ち上げのみならずEUS-FNAやERCPなど幅広く治療内視鏡を行ってチームに貢献したいと思っています。また機会があれば実際の内視鏡診療の紹介をしたいと思っています。

おわりに

 今回、田尻理事長をはじめ数十人の方々および関係各位のご厚意により、メモリアルスローンケタリング癌センター創立以来初の日本人消化器内科医として入職することができました。この場を借りて心より御礼申し上げます。自治医大卒業後9年間は地方の診療所などで地域医療を行っていたエリートでない私でもNYまで来ることが出来ましたので、現在全国各地で研鑽を積まれている若手内視鏡医のすべての方々に私の経験が何かの役に立てれば幸いです。是非とも国際的視野を持った若手が台頭し、日本の高い内視鏡診断能力と技術力を世界に広めることが出来ることを祈念しております。

西村誠

Makoto Nishimura MD
Associate Attending Physician
Director, Luminal Resection Program
Gastroenterology, Hepatology and Nutrition Service
Memorial Sloan Kettering Cancer Center
1275 York Avenue, New York, NY 10065


メモリアルスローンケタリング癌センター


左より 筆者/マーク・シャットナー医師/田尻久雄理事長
メモリアルスローンケタリング癌センター内視鏡室にて