2017年1月19日
平成27年の年頭にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
本誌面をお借りして、本学会の現状と取り組んでいる課題について、述べさせていただきます。
学会のあり方について、「プログラム検討委員会」で協議の結果、学術集会としての質の向上を図るべく継続的な主題を取り扱っていくこととしました。すなわち、平成27年春の学術集会から、①上部消化管におけるadvanced diagnostic endoscopy(ADE)、②下部消化管におけるADE、③胆膵におけるInterventional EUSをコアセッションとして2年間継続して論議を深め、ある一定のゴールを目指すようにいたします。また、国際化の一環として、主題のスライドは英語表記とすることとしました。教育プログラムの充実と改善を図ることは、本学会として重要な役割です。本学会が公認するライブデモンストレーションの開催指針を決め、すでに平成26年から共催、後援する内視鏡ライブイベントが行われています。これまでと同様に教育セミナー、ハンズオンセミナーも定期的に行われ、ビデオライブラリーなど教育用資材も整備しつつあります。
日本専門医機構の動向について、本学会としては、サブスペシャリティ領域への移行を要望しておりますが、まだ進展がみられません。会員の皆様には、新たな情報が入り次第、できる限り早い時期にホームページなどを通じてお知らせいたします。
実践的医療を安全かつ円滑に実施する上で重要で、かつ社会的にもkeyとなるガイドラインに関して、「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」は、和文誌に続いて、英文誌(Dig Endosc 2014;26:1)に掲載されました。その後の影響と実態調査のために、「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡に関した偶発症の全国調査」を行い、現在データを解析中です。「胃癌に対するESD/EMRガイドライン」「大腸ESD/EMRガイドライン」は、すでに平成26年度の和文誌に掲載され、英文誌へも掲載予定です。「EST診療ガイドライン」「小腸内視鏡検査診療ガイドライン」「上部消化管出血内視鏡的止血術診療ガイドライン」は論文作成の準備に入っています。
国際化事業の一環として、平成26年10月に7回目を迎える欧州消化器内視鏡学会(ESGE)との合同シンポジウムがウィーンで開催され、また本学会初となる米国消化器内視鏡学会(ASGE)との合同シンポジウムが平成26年5月にシカゴで行われ、大いなる好評を得て、平成27年度以降も継続事業として進めてまいります。平成25年度からは短期海外留学制度を設け、第1陣が帰国していますが、まもなく第2陣を送り出します。今後、国際的に活躍する次世代のリーダーの育成に学会として、積極的かつ継続的な支援と助成をしていく予定です。アジア諸国との連携については、本学会総会の中でAsian-JGES国際シンポジウムとして再構築しました。さらに日本政府の全面的な後援も受け、ベトナムやインドネシアの消化器内視鏡学会と連携した内視鏡指導事業もスタートして軌道に乗ってきています。今後は、アジア・中近東諸国・ロシアなどの国々への支援協力活動を積極的に展開していく所存です。
本学会の和文誌・英文誌の発行事業も順調に行われ、official journalのDigestive Endoscopy のimpact factor(IF)は昨年1.989となり、投稿数も初めてIFが付いた5年前から倍以上に増えており、数年内にIF3以上の達成は確実と期待をしております。
日本は内視鏡診断と治療の技術で世界最高水準にあり、その医療機関が蓄積しているデータを集めてデータベース化するJapan Endoscopy Database(JED)Projectが本年よりテスト集積開始予定です。日本全国の内視鏡関連手技・治療情報を登録し、集計・分析することで医療の質の向上に役立て、患者に最善の医療を提供することを目指す事業です。この様な内視鏡関連手技の全国規模の情報集積は、世界で初めての試みであり、患者側だけでなく、医療を提供する側にも大きな利益をもたらすものと思います。
今年も本学会の果たすべき重要な役割を十分に認識した上で、その発展に努力する所存ですが、会員の皆様の一層のご支援、ご協力をお願いいたします。
理事長 田尻 久雄