一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 Japan Gastroenterological Endoscopy Society

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新型コロナウイルス感染症に関する消化器内視鏡診療についての Q&A

(特にクリニックや比較的規模の小さな病院での内視鏡検査を想定した場合)

 

日本消化器内視鏡学会、2021年6月15日(改訂第7版)

今回のアップデートの概要
1.ワクチン接種と内視鏡診療の関係について を加えました。

Q&A集の作成にあたって

 新型コロナウイルスが大きな問題となっている現況での消化器内視鏡診療にあたっては、第一線専門施設では本学会の提言を含めて種々のガイドラインや各施設内の指針に準じて万全の体制で臨まれていると存じます。感染拡大を防ぎ、かつ医療従事者を守ることは極めて重要です。一方、一般のクリニックや比較的規模の小さな病院では対策に苦慮されているとのお話を多く耳にします。このような状況に鑑み、日本消化器内視鏡学会では、そのような先生方への情報提供として「新型コロナウイルス感染症に関する消化器内視鏡診療についてのQ&A」を作成してきました。

 現在でも新規感染者数は増減を繰り返しており、予断の許さない状況が続いております。現況においては感染リスクを常に念頭におきつつ、通常の内視鏡診療を遂行していかねばなりません。また、ワクチン接種がようやく始まりましたが、ワクチン接種と内視鏡診療の時期についての懸念も聞かれます。こうした状況に鑑み、このたびQ&Aを再度アップデートすることといたしました。なお、この内容は一般のクリニックや小規模病院のみならず、幅広いご施設で参考としていただけるものと考えております。

 なお、このQ&Aは本学会が示したひとつの目安であり、それぞれの施設の対応を制限するものではありません。この指針を参考にしていただき、各地域の感染状況や方針、各施設の状況に応じて具体的に適切な対応策を決めていただくことが重要です。

 

2021年6月15日

一般社団法人日本消化器内視鏡学会

理事長 井上 晴洋

医療安全委員会 委員長 入澤 篤志

副委員長 古田 隆久

委員 稲葉 知己、河原 祥朗、松田 浩二、潟沼 朗生
大塚 隆生、菅野 敦、水上 一弘、青木 利佳

目次

I.  はじめに

II. 新型コロナウイルス感染症に関する消化器内視鏡診療についての Q&A

 1.検査前の予約に関して

  CQ1. 新規の内視鏡検査の予約に際して留意すべき点

  CQ2. すでに検査予約済みの内視鏡検査の実施に関しての対応

  CQ3. 延期してよい内視鏡検査の内容・種類

  CQ4. 延期できない内視鏡検査の内容・種類

 2.受付、待合室での対応

  CQ5. 内視鏡検査室に入らないスタッフ(受付等)の防護策

  CQ6. 患者待合での注意事項

  CQ7. 待合室の環境管理での注意事項

 3.検査前の問診と内視鏡検査施行の判断

  CQ8. 内視鏡検査で来院した患者に伝えるべきこと

  CQ9. 患者が来院した際に、新型コロナ感染症に対して事前に問診すべき項目

  CQ10. 予約患者に対して、事前にCQ9の質問を事前に行うことは推奨できるか

  CQ11. 新型コロナウイルス感染が否定できない場合の対応

  CQ12. 新型コロナウイルス感染の可能性が低いと判断された時の対応

 4.検査同意の取得

  CQ13. 問診にて感染リスクが低いと判断された患者の検査当日の同意取得

  CQ14. 感染が疑わしいと考えられた患者への検査当日の同意取得

 5.前処置での注意点

  CQ15. 内視鏡検査前の前処置に関して注意点

  CQ16. 感染リスクの低い患者での前処置での防護策

  CQ17. 感染リスクが疑われている症例での前処置方法

 6.内視鏡検査施行時の注意点

  CQ18. 内視鏡検査実施するスタッフとしての基本的な考え方

  CQ19. 内視鏡検査はなぜ感染リスクを高めるのか

  CQ20. 内視鏡検査スタッフの具体的な個人防護策

  CQ21. 内視鏡検査スタッフの健康管理としてすべきこと

  CQ22. 内視鏡検査室の人流れ、人員について工夫すべきこと

  CQ23. 感染確定・疑い患者に対する緊急内視鏡検査を施行する場合の対応

  CQ24. 検査の付き添いの家族への検査室への入室で注意すべきこと

 7.内視鏡検査後の対策

  CQ25. 感染確定・疑い患者に対する緊急内視鏡検査施行後における術者の留意点

  CQ26. 感染確定・疑い患者に対する緊急内視鏡検査施行後における患者対応の留意点

  CQ27. 感染確定・疑い患者に対する緊急内視鏡検査施行後の内視鏡機器の取り扱い

  CQ28. 検査終了後のスコープの洗浄・消毒

  CQ29. 検査終了後の処置具(critical器具)の洗浄・消毒

  CQ30. 感染確定・疑い患者に対する緊急内視鏡検査施行後の検査室への処置

  CQ31. 感染確定・疑い患者に使用したスコープ以外の機器の取り扱い

  CQ32. 消毒用のアルコールが入手困難な場合のアルコールフラッシュの代替方法

  CQ33. 後日被検者が感染者と判明した場合の対応

  CQ34. 消化器内視鏡診療終了後の病院・施設のスタッフにおける注意事項

  CQ35. 消化器内視鏡診療終了後の被検者に対する注意事項

 8.緊急事態宣言が発出されていない状況における消化器内視鏡診療

  CQ36. 緊急事態宣言非発出の状況でも緊急性のない内視鏡診療は延期すべきか

  CQ37. 感染拡大下の消化器内視鏡検診療に際しての留意点

  CQ38. 新型ウイルスの既感染者や濃厚接触者への対応の留意点

  CQ39. 今後のPandemicへの対応について

 9.その他

  CQ40. 感染確定・疑い患者に対する経験の浅い内視鏡医による施行の是非

  CQ41. 全ての患者毎に感染防護具の交換が必要か

  CQ42. N95マスクの再利用

  CQ43. 防護具不足に対する工夫

  CQ44. 経口内視鏡と経鼻内視鏡の感染リスク

  CQ45. 消化器内視鏡施行時の飛沫対策

  CQ46. 消化器内視鏡施行前の SARS-CoV-2検査について

  CQ47. 内視鏡診療時の院外からの見学あるいは研修スタッフの同席

  CQ48. ワクチン接種開始後の感染対策について

  CQ49. 観察目的の消化器内視鏡検査とワクチン接種時期について

  CQ50. 治療目的の消化器内視鏡検査とワクチン接種時期について

 

I.  はじめに

 今般の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に関して、消化器内視鏡診療の実施については、国・厚労省の方針や各施設の状況等を考慮した対応が求められています。日本消化器内視鏡学会は現在のCOVID-19の状況に鑑みた内視鏡診療について、『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への消化器内視鏡診療についての提言(https://www.jges.net/medical/covid-19-proposal)を発表し、2020年3月25日の第1版発表以降、本邦における状況に鑑みたアップデートを行ってまいりました。現在では第7版となっております(2020年12月25日更新)。2020年4月7日に発出された1回目の緊急事態宣言により、感染拡大は一時的に落ち着いた状況でしたが、冬期間になり感染拡大は顕著となり、2021年1月7日には一部の都道府県に2回目の緊急事態宣言が発出されております。その後も感染拡大はコントロールできず、3回目、4回目の緊急事態宣言が出されております。一方で、ワクチン接種が始まりましたが、未知の部分も多い状況です。このような状況に鑑みて、 本Q&Aもアップデートを行ってまいりました。

 ここでは、消化器内視鏡に関わる医師および関連するスタッフにむけた、具体的な対応案を示しています。なお、このQ&Aは、一般のクリニックや比較的規模の小さな病院のみならず、幅広いご施設で参考としていただけるものとして作成しておりますが、その内容は本学会が示したひとつの目安であり、それぞれの施設の対応を制限するものではありません。この指針を参考にしていただき、各地域の感染状況や方針、各施設の状況に応じて具体的に適切な対応策を決めていただくことが重要です。特に、日本全国において感染拡大が続いている状況ですので、SARS-CoV2に関連したエアロゾル発生の危険性があるとされる消化器内視鏡診療においては万全の対策を講じるようお願い申し上げます。

II. 新型コロナウイルス感染症に関する消化器内視鏡診療についての Q&A

. 検査前の予約に関して

CQ1. 新規の内視鏡検査の予約に際して留意すべき点はありますか?

Ans. 無症候性の感染者は約20−30%とされており、 内視鏡従事者と被検者を守る観点から、緊急事態宣言が発出された場合は緊急性の無い内視鏡検査は延期を考慮することを推奨します14。なお、新型コロナウイルス感染は地域での差が見られており、その地域ごとの状況に応じての対処が必要なのは言うまでもありません。新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく政府による緊急事態宣言(以下 緊急事態宣言)の解除後は検診を含む通常の内視鏡検査の再開は可能と考えますが、感染防護体制の状況に加えて、地域の感染状況、自治体独自に発出される新型コロナウィルスに関する通達や医師会等の意見も参考に再開ならびに新規予約をご検討ください。

 

CQ2. すでに検査予約済みの内視鏡検査に関してはどのように対応すべきでしょうか?

Ans. CQ1と同様に、緊急事態宣言下では緊急性のない消化器内視鏡検査・治療に関しては延期を考慮することを推奨します2,3。被検者に電話や郵便等で連絡し、事情を説明し来院を控えるよう指示することが肝要と考えます。この「事情」については、物品不足・感染拡大など、各施設や地域の実情に沿ってご説明ください。緊急事態宣言の解除後は、検診を含む通常の内視鏡検査の再開は可能と考えますが、感染防護体制の状況に加えて、地域の感染状況や医師会等の意見も参考に再開をご検討ください。

 

CQ3. 緊急事態宣言下では延期を考慮すべき内視鏡検査・治療にはどのようなものがありますか?

Ans. 以下の検査は緊急事態宣言下では延期を考慮すべきであると考えられます5

  1. 無症候者に対するスクリーニングやサーベイランスを目的とした消化器内視鏡検査。特に、H. pylori 未感染、H. pylori の除菌後で萎縮が軽度で無症候の症例の上部消化管内視鏡検査などの場合
  2. 大腸ポリープの内視鏡切除後で取り残しなしと判断された症例の3年以内の検査
  3. 検査結果が治療方針に大きな影響を与えないような経過観察目的の内視鏡検査。例えば、H.pylori 除菌後で無症候の消化性潰瘍の経過観察、再発リスクの低い食道胃大腸でのESD後の経過観察、膵嚢胞の経過観察EUSなど1 

 

CQ4. 緊急事態宣言下でも延期すべきではない内視鏡検査・治療にはどのようなものがありますか?

Ans. 以下の場合は緊急事態宣言下でも延期すべきではないと考えます1,3,5

  1. 消化管出血がある症例の内視鏡検査や、消化管出血が疑われる場合
  2. 経口摂取に影響するような嚥下困難がある場合
  3. 胆管炎や閉塞性黄疸、その他有症状の胆膵疾患等内視鏡を使用しての処置が必要な場合
  4. 悪性疾患が強く疑われる場合
  5. 化学療法や手術に先立って行うステージングのための検査としての消化器内視鏡検査
  6. 内視鏡検査・治療によって、対応・管理方法が変わる可能性がある場合
  7. 各施設の責任者が必要と判断した場合

 これらの検査・治療の多くはクリニックで施行する頻度は低いと考えられますので、実施可能で感染対策がとれている施設に紹介されることが肝要と考えます。その際にはしっかりと新型コロナウイルス感染症に関する問診をとっていただいて、その内容を紹介先にお伝えいただけると病診連携がスムーズに運びます。

 

. 受付、待合室での対応

CQ5. 検査の前に患者に対応するスタッフ(受付等)でも防護策は必要でしょうか?

Ans. 必要です。受付のスタッフも手指消毒に努め、マスクと手袋を着用し、可能であれば、フェースシールドまたはゴーグル(アイシールド付きマスクも可)着用を考慮してください。その上で、いわゆる社会的距離をしっかりと保ってください。目、口、鼻の防護が肝要です。コンビニエンスストアやスーパーマーケットのレジなどでみられるビニールカーテンの設置もご検討ください。

 

CQ6. 患者待合での注意事項について教えてください。

Ans. 以下を参考にしてください。

  1. COVID-19の主な感染経路は接触感染、飛沫感染です。しかしながら、換気の不十分な空間においては空気中のウイルス濃度が高くなることがあり、空気感染のリスクが生じる可能性が指摘されています。この観点から、解放可能なドアは開けておくなど、待合室の換気に十分配慮する必要があります(CQ7参照)。
  2. 患者同士、さらに医療従事者との濃厚接触、感染を回避するため、待合室での手指消毒、マスク着用を奨励します5。手指消毒のためのアルコール消毒液は待合室に備え付けておく必要があります。
  3. 待合室全体が密にならないように、そして、座席は対面にならないように、2m以上(最低でも1m)離れて座ってもらいます。
  4. 大腸内視鏡の前処置の場合でも、腸管洗浄剤の内服では患者同士が対面しないように座らせることが肝要です。
  5. 待合での混雑、待ち時間を短くするように、検査予約スケジュールの調整をご考慮ください。

 

CQ7. 待合室の環境管理での注意事項について教えてください。

Ans. 以下を参考にしてください。

  1. このウイルスは気道分泌物だけでなく、糞便からも分離されますので、感染者が使⽤したトイレの便座や⽔道のハンドルも消毒の対象となります。従って、大腸内視鏡における前処置で使用されるトイレについては、患者に使用前後の便座消毒などの協力をお願いすることは一案です。また、トイレの蓋を閉めてから流していただくことや、エアータオルを使用せずにペーパータオルを用いることも飛沫感染およびエアロゾル感染への対策となると思われます。
  2. 患者の入れ替わり時には、患者が使用した椅子や机、手すり等のアルコール消毒を行う事を推奨します。
  3. こうした場所の環境清掃を行うスタッフは⼿袋、サージカルマスク、ガウン、フェースシールドまたはゴーグル(アイシールド付きマスクも可)、キャップを着⽤して行う事を推奨します。
  4. 待合室の換気にも十分な配慮をしてください。換気は、通常の窓を開けた換気や機械換気を利用した換気を用いるか、フィルタ式の空気清浄機を用いることが勧められています。なお、通常の家庭用エアコンやパッケージエアコンは空気を循環させるだけで、換気を行っていないことには注意が必要です。また、一般的なポータブル空気清浄機による空気浄化では、効果は不十分な可能性があるとされています。詳細は、日本医師会COVID-19有識者会議から提示されている換気に関する寄稿(https://www.covid19-jma-medical-expert-meeting.jp/topic/45586をご参照ください。

 

. 検査前の問診と消化器内視鏡診療施行の判断

CQ8. 内視鏡検査・治療で来院した患者に伝えるべき事はありますか?

Ans. 以下の内容をお伝えください。

  1. 新型コロナウイルスへの感染状態に関する問診や体温測定の結果次第では延期になる可能性があること。
  2. 内視鏡検査・治療に際しての感染対策は万全を期しているものの、内視鏡室や待合室にいる間にウイルスに曝露する可能性があること。

 

CQ9. 患者が来院した際に、新型コロナウイルス感染症に対して事前に問診すべき項目とその時の注意点を教えてください。

Ans. 問診票での質問項目としては下記の項目を含めることを推奨します(どのような状況であってもしっかりとリスクについての情報を得ることは重要です)。

 1.患者の状態について

  ①発熱、のどの痛み、咳や痰などの風邪の症状はありますか?

  ②疲れやすい、倦怠感などの症状はありますか?

  ③味覚や嗅覚に異常を感じますか?

  ④4−5日続く下痢等の消化器症状はありますか?

  ⑤現在の体温は?

 2.感染リスクについて

  ①2週間以内に感染が拡大している地域を訪問したり、そちらから来られた方と接触したことがありましたか?

   *「感染者が拡大している地域」の定義は地域・施設によって異なりますので、その時の状況によって各施設でご判断ください。

  ②2週間以内に「新型コロナウイルス感染者やその疑いがある人」、または、「そのような人と接触した人」との接触がありましたか?

  ③2週間以内に海外に渡航されましたか?

  ④2週間以内に海外から帰国された方や、そうした方と接触した人との接触がありましたか?

  ⑤2週間以内にいつも同居されている方以外と会食をされましたか?

  ⑥2週間以内に、大規模なイベント、ライブハウス等の人の多いお店や接待を伴う外食店に行かれたことがありましたか?

 3.新型ウイルス感染の既往について

  ① 新型コロナウイルスに感染したことがありますか?
  ② 新型コロナウイルスへ感染の治癒はどのようにして確認されましたか?
   *厚生労働省が公開している治癒判断(退院基準)は以下の通りです
   1.症状がある方
    1)発熱等の症状が出現してから10日間が経過し、かつ、発熱などの症状が軽快してから、72時間が経過。
    2)10日間が経過していない場合でも、症状が軽快して24時間後にPCR等検査(抗原定量検査でも可能)を実施(1回目)し、陰性が確認されたら、1回目の検体採取後24時間後に再度PCR等検査を行い(2回目)、2回連続で陰性が確認された場合。なお、PCR等検査で陽性が確認された場合は、再度PCR等検査を2回行う。
   2.症状のない方(無症状病原体保有者)
    1)検査のための検体をとった日から10日間が経過。
    2)検査のための検体をとった日から6日間が経過し、PCR等検査を実施(1回目)し、陰性が確認されたら、1回目の検体採取後24時間後に再度PCR等検査を行い(2回目)、2回連続で陰性が確認された場合。なお、PCR等検査で陽性が確認された場合は、再度PCR等検査を2回行う。

 

 消化器内視鏡診療当日は検温することが肝要です。問診や体温測定の結果、すべての項目で該当しなければ感染の可能性が低いと判断してください。1項目でも該当する場合は感染が否定できないと考え、各施設の規則に従って対応してください。

 なお、直接問診する場合には、最低でも 1m以上の距離をあけて、マスクやフェースシールド等を着用するなど個人防護に配慮した状態でお願いします7。この際にも、アクリル板などを介して問診することでより安全性が高まります。医療従事者の暴露リスクについては日本環境感染学会から報告されている『医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第3版)』を参照してください。(http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/COVID-19_taioguide3.pdf

 

CQ10. 予約患者に対して、来院前にCQ9の質問を事前に行う事は推奨できますか?

Ans. 推奨できます。来院前に問診にて感染リスクがわかれば、感染リスクのある患者の来院を防ぐことができます。この観点から、可能であれば来院前に電話等によりCQ9で示した問診を行い、感染のリスクが疑われた場合は、検査の延期をご検討ください7。延期できない場合には、実施可能で感染対策がとれている施設に紹介することご検討ください。自院で実施される場合には自院の感染防護策を確認するとともに、患者さんには内視鏡検査をうける当日までの毎日、体温と各種症状の記録をつけていただくことを推奨します。新規の予約時には体温を含む症状の日誌( 参考1_新型コロナウイルス感染症 内視鏡検査前症状日誌 (案))を渡し、それを検査日に持参してもらってください。

 

CQ11. 問診や体温測定で新型コロナウイルスの感染が否定できませんでした。どのように対応すべきでしょうか?

Ans. 以下の対応を推奨します。

  1. 消化器内視鏡診療の内容を勘案し、延期可能な場合には、延期する。
  2. 患者の状態より内視鏡検査・治療が必要であると判断された場合には、自施設での体制が整っているかを判断し、可能と判断できる場合にのみ実施を考慮する。
  3. 自施設での体制が整っていない場合は、対応可能な他施設(感染対策がしっかりととれている施設)に紹介する6
  4. 順番の変更が可能であれば、感染疑い患者の検査は最後になるように調整する。また、その際の待合いについても他患者と接触する可能性ができるだけ少なくなるようにご配慮ください。

 

CQ12. 問診や体温測定で新型コロナウイルス感染者の可能性が低いと判断されました。どのように対応すべきでしょうか?

Ans. 万全を期すためにも、内視鏡室や待合室にいる間にウイルスに曝露する可能性があることを伝えた上で検査・治療を行ってください。また、無症候感染例も報告されておりますことから、個人防護策等を含む感染対策には万全を期してください。なお、患者の状態や検査内容によっては他施設への紹介をご検討ください7この点については、各地域の感染状況に応じた連携体制をあらかじめご確認ください。

 

4.検査同意の取得

CQ13. 問診にて感染リスクが低いと判断された患者の検査当日の同意取得は通常どおりの対応で宜しいでしょうか?

Ans. 無症候感染例や発症前の潜伏期間中の患者からの感染も報告されております。同意を取る際には、マスクを着用し可能な限りの距離を保ってください。なお、地域や施設の状況に応じて、内視鏡検査室や待合室にいる間にウイルスに曝露する可能性についての同意をいただくこともご検討ください。

 

CQ14. 感染が疑わしいと考えられた患者からの検査当日の同意の取り方について教えてください。

Ans. 感染が疑わしいとされた患者で検査を施行すると判断した場合、患者には必ずマスクを着用してもらったうえで、同意書のサインには使い捨てのペンを使用して、マスク、フェースシールドと手袋を着用したスタッフが対応する必要があります1

 

5.前処置での注意点

CQ15. 消化器内視鏡診療前の前処置に関して注意点を教えてください。

Ans. 以下の点にご注意ください。

  1. 咽頭麻酔や鼻孔の麻酔は、熟練者が行うようにしてください8。熟練者が行う事でエアロゾル化のリスクを低下でき、内視鏡スタッフへのウイルス曝露リスクも低下します。
  2. 検査・治療を行う部屋とは別に前処置室を設けている施設においては、一人ずつ前処置室に入っていただいて施行してください。
  3. 鼻腔や咽頭麻酔時の患者の咳き込みによる飛沫感染を予防するために、確実な感染防護策を行っているスタッフが行う事を推奨します。この際、目・鼻・口を必ず防護してください。また、キャップの着用も推奨します(詳細はCQ20を参照)。
  4. 前処置時には患者とは対面にならないようにすることが必要です。スプレーなどを用いた咽頭局所麻酔の際にも咳嗽を誘発しエアロゾルを発生させる可能性はありますので、麻酔にはビスカスを用いる等、可及的にエアロゾルを発生させない配慮が必要となります。

 

CQ16. 感染リスクの低い患者での前処置での防護策はどうしたらよいでしょうか?

Ans. 無症候の感染者もいることが知られており、スタッフは専用スクラブ、サージカルマスク、袖付きのガウン、手袋、フェースシールドまたはゴーグル(アイシールド付きマスクも可)、さらにキャップを着用することを推奨します。基本的には全ての患者さんが感染者であることを前提に対処する事が望ましいですが、各地域・施設によって感染状況や防護具在庫状況は異なります。その状況に応じた対応策をご検討ください。また、この判断には患者のリスク(参考5)もご考慮ください。基本的にハイリスクの場合は確実な防護策が必要となります

 

CQ17. 感染リスクが疑われている患者に対する前処置はどのようにすべきでしょうか?

Ans. 前処置室への患者出入においては、各患者の手指消毒などをしっかりと行うことを推奨します。また、前処置を行う際にはCQ16の防護に加えて、N95のマスクを使用するなど、前処置における感染の危険性を十分考慮ください。内視鏡の必要性を判断し、他施設への紹介もご検討ください。なお、咳嗽誘発、エアロゾル発生を防止する観点から、スプレーなどを用いた咽頭麻酔は行わず、ゼリー・ビスカス等での対処がよいと考えます。

 

. 消化器内視鏡診療施行時の注意点

CQ18. 内視鏡診療を実施するスタッフとしての基本的な考え方を教えてください。

Ans. 誰もがこのウイルスを保有している可能性があるとして対応してください。感染しないための個人防護策、感染させないための対策等々に関して、各施設のルールを遵守してください。特に目、鼻、口の防護が重要です。内視鏡室に入るスタッフの人数は最小限としてください2,7,9。このことは、防護具不足対策にも繋がります。。内視鏡診療に関わる全スタッフが各施設でのCOVID-19対策の取り決めついて十分に理解している必要があります10

 

CQ19. 内視鏡診療はなぜ感染リスクを高めるのでしょうか?

Ans. 新型コロナウイルスは気道分泌物および糞便から分離されます。そして、飛沫やエアロゾルを介しての感染が考えられます。上部消化管内視鏡では患者の咳き込みや嘔吐反射の際に、また、大腸内視鏡検査ではガス排出時などに、ウイルスを含む⾶沫やエアロゾルが拡散し、これらを介した感染が起こりえます11。その他、ウイルスが付着した手や手袋等から直接あるいは間接的に⽬、⿐、⼝の粘膜に付着する事もあり得ます。検査後のスコープや使用したその他の機器も感染源となり得ます。また、検査室に設置してある電子カルテ等のキーボードも感染源になる可能性もあります。

 

CQ20. 内視鏡スタッフの個人防護策について具体的に教えてください。

Ans. 新型コロナウイルス感染拡大下での内視鏡診療においては、⾶沫感染予防策と接触感染予防策を講じる必要があります。以下の点をご考慮ください5,9,12。 なお、個⼈防護具(Personal Protective Equipment、以下PPE)着脱については様々な動画を含む資料が公開されています(① 日本医師会 http://www.med.or.jp/doctor/kansen/novel_corona/009082.html  ②東京都福祉保険局 https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/smph/iryo/kansen/shingatainflu/cyakudatsu.html など)。これらを参考に確実な着脱を心がけてください。
 ここでは、すべての内視鏡検査・処置における最低限のPPEについてお示しします。感染陽性あるいは感染が疑われる症例に対する緊急内視鏡の場合は、CQ23を参照ください。なお、最新の報告14では、適切にPPEを使用することで、消化器内視鏡診療を介した内視鏡スタッフ(施行医・介助者等)への感染リスクはほとんどないことが示されています。

  1. ウイルスの侵入経路である目鼻口を守るためにPPEを確実に着⽤してください2。目、鼻、口はアイシールド付きサージカルマスク、あるいはサージカルマスクとゴーグル/アイシールドとフェースガードの組み合わせで防護します。さらに、キャップ、袖付きのガウン、手袋を装着します。検査の間には手指から肘までの洗浄・消毒をしっかりと随時行ってください。
  2. そして、汚染したと思われる手袋、ガウン等は速やかに廃棄して廃棄容器は密閉できるものとしてください。これらは感染廃棄物として処理してください。ガウンや手袋の着脱時にはウイルスが飛散する可能性も指摘されていますので、十分注意して廃棄してください。PPEは内視鏡診療を行った部屋内で取り外してください。
  1. コロナウイルスはエンベロープを有するため、擦式アルコール⼿指消毒薬は新型コロナウイルスの消毒にも有効です。

 

CQ21. 内視鏡スタッフの健康管理としてすべきことがあれば教えてください。

Ans. 以下の内容を推奨します。

  1. スタッフ全員の連日の体温測定
  2. CQ9で示す問診票にある自覚症状についての自己申告
  3. 感染疑いのあるスタッフが内視鏡診療に携わることは禁止(自宅待機を勧めますが、各施設の規則に従ってください。)

 

CQ22. 内視鏡室における人の流れ、人員について工夫すべき事があれば教えてください。

Ans. 内視鏡室への人の出入を最小限にすることに努め、また、感染例や感染の可能性の高い症例に対するマニュアル(患者の待合での場所、使用する内視鏡室、リカバリー室での場所、患者の動線等々)を作成しておくことが肝要です7。特に、感染リスクの高い患者の動線については、予め施設内で決めておくことが必要です(ゾーニングの推奨)。また、内視鏡診療に関わるスタッフも最小限にすることを推奨します。

 

CQ23. 感染が疑われる患者や感染確定患者に対して緊急内視鏡を施行する場合にはどのように対応すべきでしょうか?

Ans. 以下の対応を推奨します。

  1. 新型コロナウイルス感染症の疑い、あるいは確定患者であっても、内視鏡診療が必要な場合においては、前述の徹底した感染防護策を遵守することで実施できます。しかし、緊急内視鏡を自施設で実施すべきか、対応可能施設に搬送する余裕があるかを十分に見極めてください。
  2. 消化管出血、閉塞性黄疸での減黄等、緊急の内視鏡診療は処置を伴うことも多く、通常よりも時間がかかります。また、患者の咳や排ガス等で飛沫が起こりやすく、内視鏡術者やスタッフの感染リスクはより高くなり、ひいては院内感染につながるリスクが高いと考えられます。したがって、術者を含むスタッフ全員が、適切な防護策を講じた上で内視鏡診療にあたってください。なお、一般的な防護策としてシューズカバーは必要ありませんが、血便や下痢など、便による汚染の可能性がある場合には着用をご検討ください。
  3. 内視鏡室までの患者の移送については各施設の規則に則って行ってください(ゾーニングの徹底)。
  4. もし、施行順序の調整が可能であれば、感染の可能性の低い患者の後に行うように考慮することを推奨します。
  5. 患者を内視鏡室に入れる際には、他の患者や感染防護策を行っていないスタッフ等がいないことを確認してからとしてください。
  6. 内視鏡担当医師ならびに補助スタッフは、袖付きのガウン、N95マスク(その上からサージカルマスクの着用も一案です)、ゴーグル(もしくはフェースシールド)、キャップ、手袋二重着用、可能であればシューズカバーを着用して内視鏡手技を行う事を推奨します7。施設によってはタイベックの使用も推奨されていますので、各施設での基準も確認してください。
  7. できる限り陰圧室での実施を推奨します13。陰圧室での施行が難しい場合は、内視鏡室の換気にも十分な配慮が必要と考えます。しかし、エアロゾルを広めないために他の部屋や通路に対して開放せずに行う必要があります。終了後の室内の換気を適切に行う必要があります7。自施設での内視鏡室の換気については、換気回数(単位時間当たりに、部屋の空気が何回入れ替わったかを示す指数。1時間あたりに部屋の容積(面積×天井高さ)に対してどれだけの空気が流入・流出したかにより算出される)を把握し、終了後の放置時間(次の内視鏡診療との間隔)について施設内で検討しておくことも考慮してください。なお、厚生労働省が推奨する換気は、「ビル管理法の考え方に基づく必要換気量(一人あたり毎時30m3)が確保できていること」とされていますので、内視鏡室という密閉空間における換気については十分にご考慮ください15。換気量の把握は、内視鏡室に立ち入る人員数の制限にも役立ちます。
  8. PPEの不足を招かないためにも、また、ウイルスへの曝露リスクに晒されるスタッフを少なくするためにも必要最小限の人数で内視鏡診療にあたってください。
  9. 器具の汚染や内視鏡施行後の洗浄を考慮し、内視鏡室に置くものは必要最小限してください。電子カルテ等のキーボードについても、のちの接触感染を防止するための工夫(カバーをかける、アルコール等での消毒)もご考慮ください。
  10. 鎮静下で内視鏡診療を行う場合に、鎮静が浅いと嘔吐反射が強く出てエアロゾル化のリスクが高くなる可能性が考えられます。深い鎮静はリスクを伴いますが、鎮静が浅い場合には、患者の苦痛軽減のためにも適度な深さの鎮静となるような調整は有用かもしれません。

 

CQ24. 付き添いの家族への内視鏡室への入室に関してはどうしたらよいでしょうか?

Ans.  基本的に付き添い家族は内視鏡室への入室は禁止すべきです。やむを得ず必要な場合は1名に限定し、付き添いの方が内視鏡室に入室する際にも、患者と同等の問診や体温測定を行なってください。また、付き添い者も感染リスクを負うことになるため9、術者と同等レベルの個人防護策を講じる必要があります。しかしPPEには限りがあるため、モニターがあれば、それを活用したり、内視鏡診療後の画像を紹介するなど施設の状況に応じた工夫が必要です。付き添いに関しては、内視鏡終了後のリカバリー室での感染リスクにも充分な注意が必要です。

 

7.消化器内視鏡診療後の対策

CQ25. 感染が疑われる患者や感染確定患者での緊急内視鏡の施行後の術者が留意すべきことについて教えてください。

Ans. 施行後も引き続き感染予防対策を講じていくことが必要です。術者・スタッフのPPEは、内視鏡室を出る際に破棄します。なお、PPEを破棄する際にはウイルス飛散などの可能性について十分に留意してください。PPEを外す際には、手袋、ゴーグルあるいはフェースシールド、ガウン、マスクの順に外す、もしくは手袋とガウンを同時に外して最後にマスクを外す、などの方法がありますが、いずれも汚染面に触れないように注意して下さい。ガウンは汚染面が内側にくるようにたたんでまとめて廃棄して下さい。また、破棄後は肘までの手指洗浄を徹底して行うことが重要です。なお、PPEの具体的な外し方についてはCQ20を参照してください。また、スコープや再利用する機器は本学会ガイドライン16に従った洗浄をお願いします。

 感染確定患者の内視鏡診療後は、個人防護策を徹底していれば曝露リスクは低リスクと判定されます。しかし、認識されない曝露があるかもしれないため、その日は業務から外れるなど各施設の基準に則り対応してください。以降は、自己モニタリングは必須であり、毎日の体温測定、症状の評価を行い無症状であることを確認してからその日の業務を始めてください17

PPEの着脱法については、東京都福祉保健局や日本職業制御研究会などから具体例が公開されていますので参照してください。各施設においてPPEの着脱のトレーニングを行うことも効果的です。

https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/smph/iryo/kansen/shingatainflu/cyakudatsu.html

https://www.safety.jrgoicp.org/ppe-3-usage-putonoff.html

CQ26. 感染が疑われる患者や感染確定患者での緊急内視鏡施行後の患者への対応で注意すべき点について教えてください。

Ans. 内視鏡終了後には患者にもマスクを着用させます。特に経口内視鏡を施行した場合では、咳嗽の頻度も高く、飛沫感染を予防するためにマスクを必ず着用させてください。また、感染が疑われる患者がリカバリー部屋を用いる場合は、必ず他の患者と隔離される別の部屋をご用意ください5

 

CQ27. 感染が疑われる患者や感染確定患者での緊急内視鏡施行後の内視鏡機器の取り扱いについて注意すべき点について教えてください。

Ans. 終了後の内視鏡の運搬や洗浄に関しても十分な感染予防策をとることが重要です。スコープ類など洗浄にかけるものは、可能な限り密閉容器での運搬を推奨します。それが難しい場合は、台車にオイフのようなディスポーザブルシーツを敷き、その上にスコープを置き、さらにスコープの上にもディスポーザブルシーツをかけて周囲への汚染を最小限にすることに努めてください。また、洗浄を担当するスタッフも、飛散による汚染、感染防止のため、術者同様に長袖ガウン、マスク、ゴーグル(もしくはフェースシールド)、キャップ、二重手袋、シューズカバーを着用して、直接、口、目、鼻のみならず、肌への飛散がないようにしてください。洗浄終了後にスコープを取り出すときには、汚染されていない長袖ガウンに交換していることが望ましいと考えます。洗浄も手慣れたスタッフが施行することが必要です7なお、PPEの着脱については十分に注意を払ってください。

 

CQ28. 感染が疑われる患者や感染確定患者での緊急内視鏡後のスコープの洗浄方法は何か特殊な方法がありますか?

Ans. 特殊な方法はありません。スコープの洗浄は本学会の「消化器内視鏡の洗浄・消毒標準化にむけたガイドライン」に従って洗浄、消毒していただければ問題ありません16https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/60/7/60_1370/_pdf/-char/ja)。洗浄履歴をきちんとつけることが肝要です。

 

CQ29. 感染が疑われる患者や感染確定患者での緊急内視鏡後の処置具等のcritical器具の洗浄方法は何か特殊な方法がありますか?

Ans. 特殊な方法はありません。処置具はディスポーザブル製品を用いることを推奨しますが、再使用可能製品を使用する場合は、再使用可能製品メーカーの取扱い説明書に従った十分な洗浄・滅菌が必要であると考えます13

 具体的な方法の一案として、ある施設での運用方法をご紹介いたします18。使用した器具は、使用後直ぐに蛋白分解酵素を溶解した水にしっかりと浸します。その後、鉗子ではカップなどをブラシで洗浄します。そして超音波洗浄機に30分かけます。流水ですすぎ、潤滑・防錆剤(スティンミルクs200など)に浸します。ガーゼで水分を拭き取り、滅菌パックにいれて、オートクレーブ等の滅菌処置を行います。

 

CQ30. 感染疑い、あるいは確定患者での緊急内視鏡後の内視鏡室はどのような処置が必要でしょうか?

Ans. 内視鏡施行後は、ウイルスが飛沫しエアロゾル感染が起こりやすい状況となっていると考えるべきで、内視鏡室の扉は開放せずに十分な時間をかけて換気を行ってください。内視鏡室の換気回数の把握は、換気時間の参考になりますので調べておくことを推奨します(CQ23参照)。その後、室内を通常清掃し、部屋全体をアルコール等で清拭し消毒を行うことを推奨します5,6。また、先述のように、内視鏡室内の電子カルテキーボードの消毒も徹底してください。

 

CQ31. 消化器内視鏡診療の際に使用した、スコープ以外の機器の取り扱いについて教えてください。

Ans. 鉗子等のディスポのデバイス類は、各内視鏡室に備え付けの感染性廃棄容器に入れてください。そうした容器を開ける際にも注意が必要です。Critical器具で再利用される場合はCQ29を参考にしてください。それ以外のnon-criticalなもので再利用する物品に関しても本学会のガイドライン16に従い、洗浄後アルコール等での消毒をすることを推奨します。患者に触れた聴診器や体温計、⾎圧計等、パルスオキシメータ等の器材は、アルコールや抗ウイルス作⽤のある消毒剤含有のクロスでの清拭消毒を⾏います。検査台のシーツ、枕カバー、トロリー使用の紙シーツ類は毎回交換してください。シーツ類は感染汚染物として取り扱ってください。

 

CQ32. 消毒用のアルコールが入手困難となってしまいました。スコープの洗浄過程でのアルコールフラッシュができなくなりそうです。何かよい方法はありますでしょうか?

Ans. 以下の内容を推奨いたします。

  1. アルコールフラッシュは、消毒目的ではなく乾燥目的です。従って、適切に洗浄消毒工程を実施すれば、アルコールフラッシュを実施しない場合でもスコープの消毒はできていると考えて問題ありません。
  2. アルコールフラッシュを行うことができない場合の対応方法として、内視鏡スコープの製造各会社より代替案がでております。詳細については、各メーカーからの対応法が当学会に届いております。後述の参考2-4をご参照ください。

 

CQ33. 感染のリスクの少ない患者に消化器内視鏡診療を行ったところ、後日感染していることが判明しました。どのように対応したら宜しいでしょうか?

Ans. 個人防護策および検査後の手指洗浄が徹底されていれば、感染のリスクは低いと考えられます14,17。ただし、認識されない曝露の可能性は否定できないため、無症候性の感染をしていることも想定しなくてはなりません。自己モニタリングだけではなく、施設の関係部署に連絡し対応を協議してください。検査受診者にすぐに連絡がつく体制を整えておくことが重要で、受診者には検査後に体調不良を自覚した場合には、すぐに施設に連絡をするように促す事が必要です。状況によっては保健所に連絡し指示を受ける必要があります。

 個人防護策に不備があった場合(フェースシールド、マスク、袖付きのガウン、手袋のいずれかが未着用で、目・鼻・口や手指腕等のいずれかの防護が不完全であった場合)、高リスクと判定されますので、内視鏡施行時の状況を含めて各施設の対応部署、または保健所に報告し、消毒の方法や範囲、濃厚接触者への対応、業務継続の可否など事後措置について指示を仰いでください。基本的には、最後の曝露後から14日間は業務から外れる必要があり、積極的な体温測定や症状のチェック等のモニタリグンを受けなくてはなりません。曝露後濃厚接触した個人(他の医療スタッフ)がいれば同様の対応が必要です17。また、内視鏡室の消毒も不十分であれば、徹底して行う必要があります。

 なお、「忙しさ」は感染のリスクに関わる重要なポイントです。消化器内視鏡診療が多くなることで、多忙・疲労がもたらす注意力低下により、PPE装着や手指洗浄などの感染防御がおろそかになる可能性があります。この点も考慮した診療スケジュールを立てることも重要と考えます。

 

CQ34. 消化器内視鏡診療終了後の病院・施設のスタッフにおける注意事項はありますか?

Ans.政府のコロナ専門家会議から『居場所の切り替わり』についての注意喚起がなされています。すなわち、内視鏡診療中は感染対策に集中しているものの、休憩中など若干の気の緩みが関連したスタッフ間での感染拡大が知られています。職場の休憩、食事、更衣室などの環境を見直し、職員間での感染を広げないような注意が必要です。またカンファレンス等やスタッフ間での会話においてもマスクを着用し、なるべく短時間で済ませるようにしてください。さらに、パソコンやタブレットなどを介しての感染も知られていますので、接触感染対策も十分に行ってください。

 

CQ35. 消化器内視鏡診療終了後の被検者に対する注意事項はありますか?

Ans.内視鏡診療当日に無症状であっても、施行翌日に症状が出現し感染が判明した事例も報告されております。被検者には内視鏡診療後も体調管理に注意をしていただき、検査後2週間以内に異変があれば、速やかに連絡してもらうことを伝えておくべきです。このことは院内感染対策としても極めて重要と考えます。

 

8.緊急事態宣言が発出されていない状況での消化器内視鏡診療

CQ36. 緊急事態宣言が発出されていない状況でも緊急性のない内視鏡診療は延期すべきでしょうか?

Ans. 緊急性のない待機的な内視鏡診療であっても、長期にわたる休止は患者や検診受診者に重大な不利益を生む可能性は否定できません。従って、緊急事態宣言が発出されていない状況下では、ハイリスク条件(参考5)に該当しない方(無症候等により臨床的にCOVID-19を疑わない症例:ローリスク患者)への検診を含む通常内視鏡診療は、適切なトリアージと確実な感染防護策の実施下であれば通常通り施行することが可能です。しかしながら、感染拡大状況が続いている状況においては、待機的な内視鏡診療予定日の2週間以内には3密となる行動を避けてもらう、1日の内視鏡件数を少なく設定しておく、なども一案です。また、施設によっては内視鏡診療前のPCR検査も一考です。繰り返しますが、ローリスク患者であってもSARS-CoV-2陽性の可能性もあることをご理解頂いて、確実な感染防護策を取った上で施行してください。また、PCR検査で陰性であっても、偽陰性の可能性があることにも注意が必要です。
 なお、ハイリスク患者に対して緊急の消化器内視鏡診療が必要な場合は、これまで通り各施設基準に則り施行してください。

 

CQ37. 感染拡大下における消化器内視鏡診療に際して留意すべき点はありますでしょうか?

Ans. 現在でも感染拡大は続いています。無症状のウィルス感染例も多く報告されていますので、感染防護策を徹底し、緊張感をもって内視鏡診療を実施してください。受診者ならびにスタッフに対する事前の問診と健康チェックは確実に実施してください。また、感染状況は地域により差がありますので、実施すべき感染防御は異なります。感染防御具の供給状況も影響を与える要素ですが、学会としては、術者の安全管理にも十分考慮した体制整備が不可欠であると考えます。特にマスクに関しては、サージカルマスクの着用を標準的防護具として推奨しますが、無症状の感染者の存在もあるため、ローリスクの症例に対しても、地域の感染拡大状況を参考に、各施設のご事情等に応じてN95マスクの使用もご検討ください。ハイリスク患者に対しては、確実な感染防護の観点からN95マスクの使用が推奨されます。

 

CQ38. 新型コロナウイルスの既感染者や濃厚接触者に対する消化器内視鏡診療に際して留意すべき点を教えてください。

Ans. SARS-CoV-2感染が確認された有症状者でも、発症日から10日間が経過し、かつ症状軽快後72時間経過した場合、あるいは10日間が経過していない場合でも、症状が軽快して24時間後にPCR等検査(抗原定量検査でも可能)を実施(1回目)し、陰性が確認されたら、1回目の検体採取後24時間後に再度PCR等検査を行い(2回目)、2回連続で陰性が確認された場合(CQ9参照)は、治癒していると考えて通常内視鏡検査も施行可能です。感染者との濃厚接触者は、14日間の自宅待機を経て臨床症状に問題がなければ、感染低リスクと判断して内視鏡検査可能と判断できます。しかしながら、いずれの場合においても、治癒判断後から内視鏡施行までの健康チェックおよび当日の問診や体温測定は必須と考えます。

 

CQ39. 新型コロナウィルス感染症は終息しておらず、また、今後も別の感染症でのPandemicもあり得ます。消化器内視鏡診療に際して今後どう対応すべきでしょうか?

Ans. 日本消化器内視鏡学会が施行したアンケート結果19により、SARS-CoV2の感染広がりにける重大な問題として、感染防護具不足(特に長袖ガウン、マスク、フェイスシールド)があげられました。内視鏡実施施設においては、ある程度のPPEの備蓄が必要と考えます。マスク、フェースシールド、袖付きガウン、手袋、キャップ等のPPEの確保は、今後の内視鏡診療を行う際に必須と考えてください。手指や内視鏡室の消毒薬の確保も同様に必要です。その他、各施設での感染防護策の強化、感染対策規則の周知徹底、スタッフへの教育、可能であれば換気設備の改修、内視鏡室や待合のレイアウトの工夫・改修、等を行い、感染拡大の再来に備えておくことを是非ご考慮ください。長期的には、通常の消化器内視鏡診療体制が、あらゆる感染症に対応できる体制になることが理想と言えます。

 

9.その他

CQ40. 経験の浅い内視鏡医が感染疑いあるいは確定患者に対して消化器内視鏡診療をしてもよいでしょうか?

Ans. 施行医の技術が未熟な場合には、経口的な検査では、挿入がスムーズにいかず、被検者の誤嚥や反射的な咳嗽を誘発しやすく、飛沫感染のリスクを高めます。大腸内視鏡検査においても送気量が多くなりがちであり、排ガスの頻度も増加し、結果として飛沫感染のリスクが高くなります10。全体的な検査時間が長くなることも予想され、全ての面で感染リスクも上昇します。したがって、感染確定患者に対しては介助者も含めて十分経験を積んだ上級者が行うことを推奨します14。一方、感染疑い患者に対しては、検査時間が長くなる状況においては上級者への術者交代をご検討ください。

 

CQ41. 患者毎に袖付きのガウン等を交換していると在庫が直ぐに無くなってしまいます。本当に全例での感染防護具の交換が毎回必要でしょうか?

Ans. 基本的には必要と考えます。それは、PPEが感染源になるためです。しかしながら、各地域・施設によって感染状況や防護具在庫状況は異なり、PPEがどの施設でも潤沢に使用できるとは限りません。以下をご参考に、施設ごとに具体的な方策を講じてください。

  1. 手袋は症例毎に交換してください。手袋の交換時には十分な手指洗いが必要です。交換時の汚染した手袋の扱いには注意して下さい(CQ25参照)。
  2. ガウンは、毎回交換が好ましいですが、不可能の場合、汚染度を考慮した連続使用の判断が求められます。しかし、目に見えない飛沫もあるため、被検者側の飛沫対策が不十分な場合には、ガウン・エプロン、マスク、フェースシールド/ゴーグルは汚染されている可能性があります。連続使用においては、患者のみならず術者の感染リスクも高まります。汚染およびその可能性がある場合、感染疑いや確実例の内視鏡実施後には必ず換えてください。
  3. ガウンは汚染面を内側にしてたたんで破棄するなど着脱方法の確認も含めた感染回避のための方策が求められます(CQ20参照)。
  4. マスクも症例毎に交換できればよいですが、不可能の場合では、1セッション(例えば午前や午後の時間帯)は汚染されない限り使用可能と考えます。但し、汚染およびその可能性がある場合、感染疑いや確実例への内視鏡実施後には必ず交換してください。マスクの交換時には汚染面に触れないように注意してください(CQ25参照)。
  5. フェースシールドも毎回交換が好ましいですが、不可能の場合、アルコール消毒で対応可能と考えます。但し、汚染およびその可能性がある場合、感染疑いや確実例に使用した後には必ず交換してください。
  6. キャップ、シューズカバーも毎回交換が好ましいですが、不可能の場合、1セッションは汚染されない限り使用可能と考えます。但し、汚染およびその可能性がある場合、感染疑いや確実例に対しての内視鏡実施後では必ず交換してください12
  7. なお、汚染が無かったとしても連続使用は4時間までとしてください(防護具をつけたまま他の部屋などへの移動はしないでください)7。術者を含むスタッフの目鼻口を防護できる対策を徹底することが肝要です。従って、マスク、フェースシールド、手袋を含むPPEのいずれかがなくなってしまった場合では、内視鏡診療を行わないことをご検討ください。こうしたところの緩みが感染拡大につながる恐れは否定できません。PPEが不完全の状態での感染者(後日判明した場合も含む)への内視鏡診療により、術者を含む関連したスタッフ全員が曝露高リスクと判定され、14日間は業務から離れなくてはなりません。その上で、厳重なモニタリングの対象となることも十分にご理解ください17
  8. 室内換気状況、またPPEの節約のためにも内視鏡実施に関わる人数を最小限にすべきであり、さらに、CQ3に記したような内視鏡診療の必要性の判断が極めて重要です。
  9. PPEの確保は、消化器内視鏡診療を行う条件であることを認識してください。

 

CQ42. N95マスクは供給に限りがあるため、再利用も可能と言われています。どのようにすればよいでしょうか?

Ans. 内視鏡診療はエアロゾルが発生しやすくN95マスクを用いることが望ましいため、使用頻度も高いと考えます。使い捨てが好ましいですが、N95マスクの供給が安定しない状況においては、破棄せずに再利用に努めることが厚生労働省から提示されました。以下の方法が提示されております。

  1. 滅菌して対応する方法:交換は1日1回とし、使用後は手術器具用にもちいられる過酸化水素水プラズマ滅菌器を使ってN95を滅菌します。3回滅菌するとマスクの性能が低下するためN95の利用は「2回まで」としております。滅菌の詳しい方法は、厚労省の事務連絡通知(「N95 マスクの例外的取扱いについて」)を参照してください。なお、セルロースが含まれていると再滅菌ができないため、マスクの素材をしっかりと確認たうえで対処してください。
  2. なんとか5枚確保してローテーションで使う方法:新型コロナウイルスはプラスチック、ステンレス、紙の上では72時間しか生存できないことが報告されていることから、N95マスクを1人につき5枚配布するとともに、使用したものを通気性のよいきれいなバッグに保管し、毎日取り替えて5日間のサイクルで使用する方法も提案されております。この場合の使用制限が記されておりませんが、他の防護具同様に明らかな汚染・損傷の場合には破棄してください。

 

CQ43. 防護具不足に対する工夫はなにかありますか?

Ans. 下記のようなことが報告されています。

  1. フェースシールドは1症例ごとにアルコールで清拭するなども一つの対策です。なお、材質によってアルコールで拭くと視認性が下がることがあるため、中性洗剤で洗うことで再利用できるとされています。
  2. A4のクリアファイルと3Dプリンタを用いたフェースガードを自作する方法(http://www.project-engine.org/)が報告されています。
  3. マスクの消毒による再利用は推奨されていません。また、自作品では医療用マスクに比してその効果は半減しますが、多少なりとも効果はあるとされています。どうしてもの場合には、リスクに応じて使用をご検討ください。
  4. 厚生労働省がカッパやシュノーケリングマスクを代替品として例外的に認めています21
    • 袖付きガウン :体を覆うことができ、破棄できるもので代替可(カッパなど)。撥水性があることが望ましい。
    • ゴーグル及びフェースシールド:目を覆うことができるもので代替可(シュノーケリングマスクなど) 。
  5. 袖付きガウンを自作して対処されている施設もあります(ビニールエプロンを前面と背面を覆うように2枚用い45リットルのゴミ袋で左右上肢を覆う、120−90リットルのゴミ袋用いて体幹部と左右上肢を覆うなど)。

 

CQ44. COVID-19の感染リスクを考えた場合、観察目的の上部消化管内視鏡検査では、咳や嘔吐反射が少ない経鼻内視鏡の方が適当と考えて宜しいでしょうか?

Ans. いいえ、 経鼻内視鏡検査が経口内視鏡検査よりも感染リスクが低いかは明らかにされておりません。確かに、経鼻内視鏡検査では経口内視鏡検査に比較して咳や嘔吐反射が少なく、エアロゾル発生による感染のリスクは低く抑えられる可能性はあります。しかし、感染初期より副鼻腔や鼻腔にはウイルスは定着しており21、鼻腔からのswabでウイルスの検査が施行されているのもこのためです。また、経鼻内視鏡検査においては、前処置の際の反射による嚔(くしゃみ)や咳嗽にも十分な注意が必要です。また、使用したスコープは汚染されている可能性が高いとの認識を持ち、スコープの取り扱い(特に運搬)には十分な配慮が必要です。内視鏡検査の延期が難しい場合は、臭覚異常等の感染徴候以外の鼻腔の症状にも注意が必要です。その上で、経鼻、経口いずれにおいても感染のリスクがあることを十分認識してください。何れにしても、適切な防護策を取る必要があることは言うまでもありません。

 

CQ45. 消化器内視鏡施行時の飛沫対策としてどのような方法がありますでしょうか?

Ans. SARS-CoV-2の感染経路は主として飛沫感染と接触感染ですが、各種ガイドラインにおいては、これまでのいくつかの研究結果により、可能性は低いものの空気感染についても注意喚起がなされています22,23。周知の通り、飛沫感染と空気感染のいずれにおいても換気が極めて重要ですが、消化器内視鏡診療にあたっては、内視鏡挿入部からの飛沫拡散への対策が重要となります。
 上部消化管内視鏡施行時の飛沫散乱対策としては、いくつか考案されております。サージカルマスクに内視鏡スコープが通過できるような切り込みをいれて、マウスピースの上から患者さんにつけてもらう方法24,25、マウスピースに飛沫防止のためのシートをつける方法26、密閉性のある麻酔用マスクのようなものに内視鏡が通過できるような穴をあける方法27、などがあります。また、マウスピースの内視鏡挿入部に切れ込みの入ったスポンジを有し、患者さんの顔を覆うドレープを備えた飛沫低減機構付きマウスピース28やボックスタイプの内視鏡専用飛沫遮蔽機材29,30なども発売されていますし、同様の観点から被検者の頭部付近を透明なビニールで覆う方法31,32
も考案されております。そのほか、患者の飛沫を吸引し特殊なフィルタで捕集する機器も販売されています33。大腸内視鏡に関しても、挿入部付近を覆う方法が考案され実用化に向けて検証されております。
 しかしながら、各々の方法がどの程度の飛沫防止効果があるのか、そしてどの方法が優れているか等についての十分な検証はできておりません。このことはしっかりと理解しておく必要があります。いずれにしても、室内換気については十分にご配慮ください。

 

CQ46. 消化器内視鏡診療前に SARS-CoV-2検査は必要でしょうか?

Ans. 消化器内視鏡診療前のPCR検査や抗原定量検査は、偽陰性の可能性を考慮する必要はありますが、院内感染防止に一定の効果が期待できます。従って、入院にて内視鏡診療を行う患者に対しては、院内感染リスクの問題もあり、入院時・内視鏡診療直前などにPCR検査や抗原定量検査を施行することもご一考ください。施設の事情により実施困難な場合は、無症候者の存在に留意して、できる範囲での対応をご検討ください。また、外来での内視鏡診療前のPCR検査等の実施については、各地の感染状況、検査の供給体制等鑑みて、各御施設でご判断下さい。なお、これらの検査は偽陰性の問題もありますので、陰性と判断されてもPPEをしっかりして検査を行うことが肝要です。


 米国消化器病学会では、以下の指針を出していますので、参考にされてください34

  1. 無症候性のSARS-CoV-2感染の有病率が0.5%から2%の範囲にある内視鏡センターでは、術前の検査(PCR、 48-72時間前)を推奨する。
  2. 無症候性のSARS-CoV-2感染の有病率が低い(<0.5%)内視鏡センターでは、術前の検査実施は推奨しない。
  3. 全ての内視鏡センターにおいて、術前の抗体検査実施は推奨しない。

 

CQ47. 消化器内視鏡診療時に院外からの見学あるいは研修スタッフを同席させても良いですか?また院外からの内視鏡診療応援は依頼しても良いですか?

Ans. 院外からの医師やコメディカルスタッフの見学や研修を受け入れる施設においては、院内の関係部署と相談し受け入れの可否を決定する必要があります。また見学・研修を目的に来られる方に関しては、来院前2週間は、感染リスクのある行動(感染が拡大している地域への訪問や、大規模なイベント・ライブハウス等の人の多いお店や接待を伴う外食店の利用)を控えることを徹底していただく必要があります。また見学・研修前に問診・体温測定を行うなどの健康管理も重要です。さらに見学・研修中には、患者に近距離で接しないようにする注意も必要です。
 また、他施設からの消化器内視鏡診療の応援を依頼する場合には、医療従事者が感染源とならないように、個人の感染対策を徹底するとともに、依頼元と依頼先の施設の間で十分に協議を行い、お互いの施設での了承を得るようにしてください。この際にも、来院時の体温測定等の管理が必要となります。

 

CQ48. 新型コロナウィルスワクチンの接種が始まりました。ワクチン接種後での感染対策で何か変化はありますでしょうか?

Ans.ワクチン接種は感染の終息に向けて効果が期待されます。しかし、全国民のワクチン接種完了の目処は立っておりません。また、現時点ではワクチンの効果は症状の発現や重症化を抑制しますが、感染そのものを阻止できるかは不明です。従って、上述した感染対策は継続し、引き続き緊張感を持って内視鏡検査を行う必要があります。

 

CQ49. 観察目的の消化器内視鏡検査と新型コロナワクチンの接種が予定される場合、両者の実施時期について注意すべき点はありますでしょうか?

Ans.ワクチン接種後の観察目的に施行する消化器内視鏡検査(生検を含む)は、接種時期に関わらす施行可能です35。ワクチン接種後であっても、通常の検査と同様に患者の状態(副反応の有無を含む)を考慮して検査を施行してください。なお、検査中に発見されたポリープ等の病変の扱いは、各施設の通常の方針に従って対応してください。また、観察目的の内視鏡検査後のワクチン接種に関しては、検査後に特に問題がなければ接種は可能と判断できます。
 しかしながら、いずれも明確なエビデンスに基づいたものではないことであり、施設の感染対策部門ともよく検討し、院内で共通認識をもって臨むことを推奨します36。 

 

CQ50. 治療目的の消化器内視鏡検査と新型コロナワクチンの接種が予定される場合、両者の実施時期について注意すべき点はありますでしょうか?

Ans.新型コロナワクチン接種と手術侵襲に関して、両者の実施間隔についてはエビデンスに基づく医学的に明確な基準はありません37。ワクチン接種と処置との間に一定の期間を空けることが推奨される理由の1つは、処置に伴って発熱等の症状が出た場合に、ワクチンの影響かどうかを区別するためです。従って、必須の緊急内視鏡検査はワクチン接種時期に関わらず施行可能です38。 

 治療目的の消化器内視鏡を待期的に行う場合、ワクチン接種後であれば、患者の副反応の有無を確認の上、患者の状態を考慮し担当医の判断で検査を施行してください。日本医学会連合からは、外科的手術に関してですが、副反応の頻度が少なくなる接種後3日目以降であれば可能という考えが示されています36。 

 内視鏡治療後のワクチン接種についても、特に定められた期間はありません。治療処置後の臨床経過に問題なければ、ワクチン接種は可能と考えます。なお、外科的手術後の場合は、一般的な待期期間である2週間が妥当ではないかいう考えも示されていますので、施行した内視鏡治療による侵襲を勘案し、各施設でご検討ください。 
 いずれも、明確なエビデンスに基づいたものではなく、施設の感染対策部門ともよく検討し、院内で共通認識をもって臨むことを推奨します36

 

参考資料

参考1_新型コロナウイルス感染症 内視鏡検査前症状日誌 (案)

 参考2_アルコールフラッシュを行うことができない場合の対応方法 オリンパス社製スコープ用

 参考3_アルコールフラッシュを行うことができない場合の対応方法 富士フイルム社製スコープ用(2020年6月11日改訂)

参考4_アルコールフラッシュを行うことができない場合の対応方法 HOYA社製(PENTAX)スコープ用

参考5 消化器内視鏡診療における新型コロナ感染症のリスク分析

 

文献

  1. Endoscopy NYSfG. Guidelines for Endoscopy Units during the COVID-19 Pandemic . 2020;https://www.nysge.org/Files/NYSGE Guidelines for Endoscopy Units During the COVID-19 Pandemic.pdf.
  2. AASLD A, AGA and ASGE JOINT GASTROENTEROLOGY SOCIETY MESSAGE: COVID-19  Use of Personal Protective Equipment in GI Endoscopy. 2020:https://www.asge.org/home/advanced-education-training/covid-19-asge-updates-for-members/joint-gastroenterology-society-message-covid-19-use-of-personal-protective-equipment-in-gi-endoscopy/.
  3. Ang TL, Li JW, Vu CK, et al. Chapter of Gastroenterologists professional guidance on risk mitigation for gastrointestinal endoscopy during COVID-19 pandemic in Singapore. Singapore Med J. 2020.
  4. Ang TL. Gastrointestinal endoscopy during COVID-19 pandemic. J Gastroenterol Hepatol. 2020.
  5. Repici A, Maselli R, Colombo M, et al. Coronavirus (COVID-19) outbreak: what the department of endoscopy should know. Gastrointestinal endoscopy. 2020.
  6. 日本医師会COVID-19有識者会議.新型コロナウイルス感染症制御における「換気」に関して.https://www.covid19-jma-medical-expert-meeting.jp/topic/4558
  7. European Society of Gastrointestinal E. ESGE and ESGENA Position Statement on gastrointestinal endoscopy and the COVID-19 pandemic. 2020:https://www.esge.com/assets/downloads/pdfs/general/ESGE_ESGENA_Position_Statement_gastrointestinal_endoscopy_COVID_19_pandemic.pdf.
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  38. For surgeons and surgical teams treating patients during COVID-19 – endorsement of the Academy statement. 22 January 2021
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▼過去の掲載実績

新型コロナウイルス感染症に関する消化器内視鏡診療についてのQ&A(2020年4月16日 第1版)

新型コロナウイルス感染症に関する消化器内視鏡診療についてのQ&A(2020年4月22日 第2版)

新型コロナウイルス感染症に関する消化器内視鏡診療についてのQ&A(2020年5月1日 第3版)

新型コロナウイルス感染症に関する消化器内視鏡診療についてのQ&A(2020年6月5日 第4版)

新型コロナウイルス感染症に関する消化器内視鏡診療についてのQ&A(2020年10月7日 第5版)

新型コロナウイルス感染症に関する消化器内視鏡診療についてのQ&A(2021年2月24日 第6版)