一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 Japan Gastroenterological Endoscopy Society

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世界内視鏡学会 (WEO) の歴史と現在の活動

 WEOの前身は、International Society of Endoscopy (ISE)であり、1966年に設立され(President:田坂定孝先生)、第1回大会は東京で開催された。当初、この学会の運営委員会は3つの地区(zone)、すなわちアジア、インターアメリカ、ヨーロッパから選出された実務委員会の代表者から構成される形をとっていた。国際内視鏡学会のもっとも重要な行事である国際会議は4年に一度開催されることとして、第2回国際会議は1970年にローマとコペンハーゲンで開催された。このように2か所で開催されたのは、世界消化器病学会の開催地が決定する前にISEがローマと決めており、その後で消化器病学会がコペンハーゲン開催に決定したためであり、会議を二つに分け、第1部をローマ、第2部をコペンハーゲンという変則的な形での開催となった。第3回ISEは1974年にメキシコで開催された。この時に正式名称をOMED (the Society of Organization Mondiale d’Endoscopie Digestive)とすることになり、1978年まで田坂定孝先生が初代Presidentを務められた。英文正式名称は、World Organization for Digestive Endoscopyである。変更された理由は、Internationalでは多数の国という意味はなく、極端なことを言えば2国でもあっても異なる国が参加すればInternationalであるので、学会の理念を表すにはより包括的な名称である世界が相応しいというColcher先生(米国)の主張に基づいたと記録されている。

 第4回は1978年マドリッドで開催され、Presidentが田坂定孝先生からColcher先生に代わった。同時にSecretary Generalに丹羽寛文先生が選出された。第5回は1982年にストックホルムで開催されたが、President となったHeinkel先生(ドイツ)が急死され、さらにPresident electの増田先生も後を継いだ直後に急逝されたため、President不在の状態となり、選考をめぐって混乱した時期でもある。結局、欧州の代表から選出された英国のSircus先生がPresidentとなった。第6回は1986年サンパウロで開催され、Presidentは諸般の事情でアルゼンチンのRubio先生になった。

 その後、1990年から1994年まで﨑田隆夫先生、2002年から2005年まで丹羽寛文先生がWEO Presidentを担当した。アジアでは香港のWilliam Chao先生が2013年にPresidentに就任したが、任期途中にご病気のため退任され、インドのNageshwar Reddy先生が残りの任期を担当した。なお、2010年にOMEDの名称を英語表記 “World Endoscopy Organization” (WEO)に変更して今日に至っている。 

 2017年2月から2020年3月まで親日家であるフランスのJean-Francois Rey先生がPresidentを務め、WEOの改革を進めてこられた。

 一方、第1回世界内視鏡学会(ENDO 2017)が、Nageshwar Reddy先生を会長として2017年2月にインド・ハイデラバードで開催された。第2回世界内視鏡学会(ENDO 2020)は、2020年3月7日から10日までブラジル・リオデジャネイロでブラジル消化器関連学会と合同で開催された。なお、この時期は世界的にコロナウイルス感染が拡大している最中であったが、世界中から多くの内視鏡医が集い盛会裏に学会が行われた。

 世界内視鏡学会は、2年に一度開催することに決まり、第3回WEO (2022年)開催地については、2019年春に開催されたWEO役員会議で、Fabian Emura先生(2020年3月からPresident就任)がJGESサポートの下、自分の第2の故郷(祖先のルーツ)である日本開催を提案して、全員一致で日本開催が決定した。

 私(田尻)は、2019年1月のAPSDE役員選挙でWEO Presidentに推薦され、2019年5月のWEO役員会議で正式に承認された。2020年3月からWEO President electとなり、2022 年からWEO President就任する予定である。

 WEOの目的は、内視鏡教育・トレーニングを通じて、安全で良質の内視鏡医療を世界中に提供できるように推進することであり、さらに学術研究の推進と世界的なネットワークを活用した国際共同事業を行うことである。

 WEOでは、毎月e-Newsletterを発行しており、7,700名以上の関係者(メンバーを含む)に送っている。本学会の英文誌であるDENはAPSDEとともにWEOのofficial journalである。またDEN、GIE、Endoscopyから教育的なe-Videoを選択して配信している。

 現在の主な活動として、下記スライドのようにADEC、Emerging Stars、Endoscopy Tour、HIGH-Q、PET、Training Centers、WISE、Colorectal cancer screening committeeなどが行われている。

2020年 WEO活動

 

 ADEC (Advanced Diagnosis Endoscopy Course & Library)は、Jean-Francois Rey先生がJGESとの共催事業として、2008年に始められ、毎年APDW期間中に、日本人Facultyが中心となって内視鏡診断学の基本と応用に関するセミナーを行っている。

 また、Colorectal cancer screening committeeは、長年にわたり、積極的な活動をしているWEOの代表的な委員会である。毎年5月のDDW、秋のUEGW期間中に世界中からコアメンバーが集まり、大腸がんスクリーニングに関するコンセンサスやホットなトピックスなどの議論が続けられている。日本からは、松田尚久先生(国立がん研究センター中央病院)を中心として大勢の先生が参加されている。

 現在、各委員会のなかで、Upper GI Cancer Committee のChairを藤城光弘先生、Documentation Committee Chairを松田浩二先生が担当されて、それぞれ積極的な活動をされている。Upper GI Cancer Committeeは、内視鏡による、上部消化管腫瘍の早期診断・早期治療を世界的に普及させる活動を行っており、近年、コアメンバーとともに、Principles and practice to facilitate complete photodocumentation of the upper gastrointestinal tract: World Endoscopy Organization position statement.(Dig Endosc. 2020;32:168-179.)をその成果物として報告している。

 近年、JGESはAPSDEと連携して、アジアの発展途上国(ベトナム、ミャンマー、カンボジア、インドネシア、フィリピン、モンゴルなど)に対して積極的に教育・トレーニングコースの活動を展開しているが、WEOはESGEと提携して、アジア諸国と同様に人口増加と経済発展の著しいアフリカ諸国にハンズオン、教育・トレーニングコースを始めている。今後、アフリカ諸国への内視鏡教育の推進と内視鏡医療の発展にも注目していきたい。
 これから次世代を担う日本の若い内視鏡医の先生方におかれましては、日本の優れた内視鏡診断・治療を世界に広げていただく上で、WEOの活動にご理解とご協力をお願いする次第です。

 

エチオピアでの内視鏡トレーニングコースの一部(指導は、ノルウェーのLars Aabakken教授(前ESGE President))

 

文責:田尻久雄、世界内視鏡学会 WEO President elect (2020~2022) 、WEO President (2022~)

 

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